国内外の現場を見て感じた、スマートシティの課題

現在、様々な自治体で街のスマート化、スマートシティ化が掲げられている。

スマートシティというとスペイン、バルセロナでの取り組みが有名だが、実際に訪問するとそれほどのすごさを感じることはない。

例えば道路に置かれたごみ箱、このゴミ箱自体かなり大きく、正直その時点で驚くのだが、回収方法はもっと驚く。

海外のゴミ箱
海外のゴミ箱は、この手の大きなものが多く、普通に道路に置かれている

巨大なごみ収集車が、ごみ箱に横付けしてそれをクレーンで持ち上げ収集するというやり方なのだ。しかも、この巨大な収集車は定期的にやってくるので、作業中は道をふさぐため交通渋滞が起きるのだ。

この作業にかかる街の負担を減らすために、ごみ箱自体にセンサーをつけて、必要のないときは収集車を動かさないということを行う。

たしかに、これまでを考えると、このやり方で無駄が減るし交通渋滞も減る。

しかし、日本のように小さなブロックでごみを集めて、スピーディーに回収するやり方になじんでいる筆者からするとそもそもスマートに見えないのだ。

同様のことは、バスの運行でも起きる。

バス停にはバスの運行状態と、大雑把な位置がわかるデバイスが設置されていて、待っているバスがあとどれくらいでくるのかが可視化されている。

しかし、バスを待っていると時間通りに来ず、そればかりか表示上は到着しているのに、実際は来ていないというケースもよくあるのだ。

これも、日本の同様のサービスではありえないだろう。

そもそもこういった国におけるスマートシティというのは、日本の感覚からするとあまりにも雑な部分を、比較的ましにするような取り組みがほとんどなのだ。

こういったベーシックなスマートシティは、この言葉が言われる前から「人力で」実現できていた日本、そこにデジタル技術を活用したからと言って、大きな効果が生まれない場合も多い。そこで、様々な国内の地方都市でスマートシティへの取り組みをみてきた筆者からみた課題を解説する。

日本のスマートシティ

では、日本国内でのスマートシティはどういうものが多いだろう。

日本の都市、特に地方都市は、人口減少局面にあって一番大きな問題は「過疎化」だ。

そして、衰退していく産業をどのように食い止めるか、新しい産業をどのように生み出すかがメインのテーマとなる。

さらに、観光資源のある地域については、観光資源の有効活用と混雑緩和、そして例えばその観光資源がスポットであるのであればその周辺への観光客の誘導がテーマとなる。

過疎化への対応

過疎化の結果、都市から離れたところにある集落に住む住人が高齢化し病院などに通えなくなるといったことが起きるので、それを補う意味で自動運転のコミュニティバスが開発されたり、UBERのようなライドシェアの取り組みを行うケースがある。

しかし、そこでの課題は、人数が少ない、ニーズもそれほどない住人のために過剰な投資をしたところで回収のめどが立たないことだ。

生まれ育った場所に住みたい気持ちはよくわかるが、都市として負担できるコストにも限界がある。本来は家族と一緒に暮らせれば、老人を見守ることもできるのだが、過疎化が進んでいるくらいだから家族は近くにいないケースが多い。

そこで、見守りツールを家庭レベルで導入しようとなるのだが、そもそもインターネット環境がないなどの課題が発生し、これも簡単ではない。リテラシーレベルが低い場合、見守りツールの電源が抜けていても放置されているケースもあるくらいだ。

産業復興、新しい産業の創生

産業は人のいるところに生まれる。魅力的な都市には魅力的な人が集まる。

多くのスマートシティ計画において、デジタル技術を導入することが企画される一方で、実際に行われるのは河川の氾濫予知や、鳥獣被害への対策といった、現状の住人に対する企画に終始している。その結果、特段新しいことをやっている街のようには見えず、人も集まらない。

新しいことをやると言った時、どういうことをやるべきなのだろうか。

一つの道としては企業連合型のハイテクタウンを作ってしまうということだ。ドローンが荷物を配送し、自動運転のクルマが走る。生活の多くの部分がシェアリングエコノミーで成立していて、サステナビリティを意識した街が実現できれば、新しい街で住みたいと考える尖った感性の企業が集まり、産業も発展するだろう。

アリババの街、杭州のように、世界中から視察にくるような街になるかもしれない。

街をサンドボックス化する、中国・杭州のスマートシティ
アリババの街、杭州では街をサンドボックスにして様々なデジタル技術を実際に投入している

しかし、こういった街を作るにはそれなりのスペースと予算が必要で、実際にやるとなると、現状人口も少ない街であれば企業誘致も簡単ではない。

サウジアラビアのNEOMプロジェクト(紅海広がる26,500km²の敷地に作られる予定のスーパーハイテクタウン)のような魅力的な提案があれば、資金と人、企業が世界から集まるのかもしれない。

現場を見ていて感じた、スマートシティの課題
neomが実現される予定の場所はまだ未開の土地と言って良い状況

観光資源の有効活用と混雑緩和

観光資源のある街では、現状インバウンドニーズに応えるべく、スマートフォン決済の仕組みを整えたり、人流解析をして街の発展を意識した導線開発をしている。

こう言った取り組みで集められたビッグデータは、季節単位での人の流入を明確にし、どういうスポットを作っていくべきかという検討に役立つだろう。

せっかく来てくれた観光客、存分に楽しんでいただくには、街だけではなく、お店やホテルなどの快適性も重要になる。

人がくれば、儲かり、改善のための投資もできるが、まず人を呼ばなければいけないという点について、未来を見据えたステップ・バイ・ステップのアプローチが重要になるのだ。

日本のスマートシティはまだ始まったばかり。予算以前にビジョンがないと、人も金も集まってこない。

そこで、グローバルの事例なども参考にしながら、その地域ならではの施策をゼロベースで組み立てイメージを描き、そこに向かう道筋を明確にしながら一歩ずつ進めることが必要なのだ。