人口減少や少子高齢化により、健康寿命の延伸やインフラ・公共施設の維持管理の効率化、行政サービスの向上などの課題を抱えている地域は多い。こうした課題の解決策として、先進技術を活用したスマートシティの取り組みに関心が高まっている。そのスマートシティの取り組みにおいては、IoTデバイスによるデータ収集とそのための通信環境の最適化、収集したデータの分析や可視化の仕組みが重要である。
このほどTIS株式会社は、株式会社テクサーと共同で、「富山市センサーネットワーク」を利用した「公共施設環境の見える化による快適な施設利用やエネルギー効率化」の実証実験を、2019年12月10日~2020年1月31日にかけて、富山市科学博物館と富山市立図書館本館で実施したことを発表した。
これまでもTISでは、スマートシティの実現に向けて、あらゆる環境からデータを収集・分析し、施設管理や防災、防犯、観光、健康、少子高齢化、農業など様々な分野のデータを組み合わせて活用することで、住民のサービスの向上に寄与する事業開発に取り組んでいた。
この実験は、富山市がIoT技術の発展と産業創出や豊かな暮らしの実現を目的として「富山市スマートシティ推進基盤を利活用した実証実験」の公募を行い、TISの提案が採択され実施したものである。
今回の実証実験では、施設管理の最適化と、利用者の快適性の向上を検証することを目的に、以下の2点について検証を行った。
1点目は、IoT環境の構築においてLPWA通信規格のZETA(超狭帯域による多チャンネル通信、中継器を用いたメッシュネットワークによる広域での分散アクセスといった特長を持つ規格)とLoRaWAN(低消費電力を特長とする広域ネットワークの規格)を活用し、用途に応じて施設の最適化を行うことだ。
2点目は、収集したデータを「富山市センサーネットワーク」(都市機能やサービスを効率化・高度化するスマートシティの実現に向けて、富山市が構築したデータ基盤)のIoTプラットフォームである「FIWARE(ファイウェア)」に集約し、分析して可視化することだ。
実験では、富山市科学博物館・富山市図書館本館に温湿度センサー・人感センサー・照度センサーを50個、人流調査用のビーコンを25個設置し、ZETAとLoRaWANの通信環境で各データを収集し、「富山市センサーネットワーク」のFIWAREに集約した。

TISなどは今回の実証実験により、複数種類のLPWAからのデータを可視化したことで、施設管理に活用できる様々な情報を取得できることを確認した。具体的なデータの活用としては、温湿度データによる空調管理や、来館者が興味のある展示物や図書の種類の特定、館内アナウンスによる来館者の移動情報の分析などが挙げられている。
TISでは今後、季節ごと、イベントごとなどのデータ計測や、センサー以外の情報との組み合わせによる分析などを行い、富山市や他自治体に提案を行っていく予定である。
無料メルマガ会員に登録しませんか?

IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。