株式会社電通国際情報サービス(以下、ISID)は、施工大手のダイダン株式会社と共同で、IoTを活用したスマートビル制御システムの実証実験を開始する。
同実験でISIDは、施設内のセンサーから取得した温度・照度等の環境情報や、施設利用者の位置情報等をクラウドに集約し、インダストリー4.0の推奨通信規格とされるOPC UA(※1)を用いて、PLC(設備や機械の制御装置※2)と連携することで、ビルの照明・空調を最適化する制御システムのプロトタイプを開発した。センサー類、ゲートウェイ装置、PLCの間の通信は全て無線化に対応している。
実証実験では、ダイダンの技術研究所ショールームに同システムを実装し、来館者にとって最適な室温や明るさ等の制御を行う。実験は本日5月1日から7月末まで実施し、同システムの有用性と課題を検証。
IoTの急速な進展とともに、様々なセンサー機器が普及し、また国際的な標準化も進められつつある。本格的なIoTサービスを構築する上で不可欠となる、制御系システム(設備や機器、装置等を物理的に制御するシステム)と情報系システム(企業の業務システムや一般向けウェブサービスを構成するクラウド等のシステム)との連携についても、2015年にOPC UAを推奨通信規格とするインダストリー4.0コンポーネントが定められるなど、標準化への流れが顕在化してきている。
しかし、制御系システムと情報系システムとは、従来異なる専門分野として発展してきた経緯があり、両分野にまたがる通信技術を熟知した技術者が少ないことから、国内ではまだ適用事例が多くない。また「工場のスマート化」の領域では多くの研究開発が進められる一方で、オフィスビルや商業施設など一般利用者を対象とした分野の取り組みは遅れているのが現状。
こうした潮流を踏まえ、今回の実験では、一般利用者を対象としたビル設備の領域で、制御系と情報系を統合したIoTサービスの基盤を構築することを目指したという。センサーやPLCも、生産設備などに使われる特殊な装置ではなく汎用製品を用い、幅広い領域への適用を想定した機器構成としている。
また技術面では、ISIDの持つIoT分野の知見とクラウドアプリケーションの構築ノウハウ、ダイダンの持つビル施工分野での知見により、OPC UAを活用してクラウドとPLCを連携させたトータルなビル制御システムを実現。
実験では、被験者が実験用のアプリを実装したスマートフォンに「寒い」「暗い」などと話しかけることにより、利用者の位置を特定して、該当エリアの空調・照明をコントロール。
屋内測位にはISIDが開発したIoTインフラ「SynapSensor(シナプセンサー)」を、クラウド上でのデータ集約・管理やモバイルアプリの構築にはISIDが提供するBaaS(※3)サービス「FACERE(ファケレ)」を活用し、クラウドとPLC間の通信には国際規格であるOPC UAを、室温・明るさを感知するセンサーや照明・空調を物理制御するPL には汎用製品を用いている。
今回の実験では、個々の被験者の位置やアクションを起点としたビルの照明・空調制御を対象としているが、将来的にはビル全体の人員配置を感知して自動制御を行ったり、AI(人工知能)を活用して、熱源のコントロールを含めたエネルギーの最適化を図ったりすることも可能と考えているという。またセンサー、クラウド、PLCを連携した仕組みの適用領域は幅広く、例えば工場の可視化、サプライチェーンとの連携やERPとの統合などへの応用が可能。
ISIDでは、同実験の成果を踏まえて、IoT領域のサービス開発を加速させ、さらなる事業強化を図っていくとしている。
※1 OPC UA:OPCはOLE for Process Controlの、UAはUnified Architectureの略。産業オートメーション分野やその他業界における、安全で信頼性あるデータ交換を目的とした相互運用を行うための標準規格。プラットフォームから独立し、多くの製造ベンダーのデバイス間でシームレスな情報の流れを確保する、プラットフォーム非依存のサービス指向アーキテクチャ。OPC Foundationが仕様の策定と維持を実施している。
※2 PLC:Programmable Logic Controllerの略。リレー回路の代替装置として開発された制御装置。近年ではアナログ制御の機能も充実し、工場などの自動機械の制御やビルの熱源、エレベーター制御等に使われている。
※3 BaaS:Backend as a Serviceの略。スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末向けアプリケーションを開発・運用する際、サーバー側で必要となる様々な機能をインターネット上で提供するクラウドサービス。
【関連リンク】
・電通国際情報サービス(ISID)
・ダイダン(DAI-DAN)
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