南極観測拠点である昭和基地では、2004年にインテルサット衛星通信設備が設置されて以降、観測データの常時送信や、有線接続によるインターネット利用、現在では基地主要部の屋内でのWi-Fi利用も可能だ。一方、屋外では、トランシーバがほぼ唯一の通信手段となっていた。
そうした中、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立極地研究所(以下、極地研)と、NECネッツエスアイ株式会社は、2020年より、昭和基地のスマート化に向けた共同研究に取り組んでいる。
そして本日、極地研とNECネッツエスアイは、産学連携共同研究として、ローカル5Gを活用した移動無線通信システムの実証実験を、2021年12月~2023年1月の間実施することを発表した。
この実証実験のため、第63次南極地域観測隊は、2021年12月より準備作業の一環として、昭和基地の基本観測棟屋上へのローカル5G設備設置作業を開始しており、2022年1月末までに設置準備がほぼ完了する。

そして、2月の越冬開始にあわせて、昭和基地がある東オングル島および周辺の海氷上において、ローカル5Gシステムの試験運用を開始した。
今回の実証実験期間中は、屋外でもスマートフォン端末等を用いたローカル5G通信が可能となる。使用する携帯端末は、ローカル5Gネットワークにより、屋外からの映像伝送をはじめとして、隊員間の情報通信端末として利用することができる。(トップ画)
実証実験の目的としては、従来トランシーバを使った連絡手段に制限されていた昭和基地周辺の屋外通信環境を改善し、大容量・高速・広範囲のデータ通信環境を構築することで、動画や各種アプリケーションを活用した観測隊運営の効率化や、観測隊員の安全性向上の実現を目指すものだ。

上図は、基本観測棟に設置した基地局からの電波の到達想定範囲を示している。
越冬中の隊員が主に活動する昭和基地主要部と、北の浦を中心とする海氷上において、ローカル5Gの特徴である広帯域低遅延の回線を活かした映像中継や、基地設備の遠隔監視を実施。また、ローカル5Gで利用する4.8GHz帯電波が、昭和基地での観測に与える影響も評価する。
さらに、昭和基地ネットワークおよび衛星通信回線を介してインターネットに接続することで、国内からの遠隔観測支援など、さまざまなサービスを利用することができるようになる予定だ。

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