西日本電信電話株式会社(以下、NTT西日本)、日本電信電話株式会社(以下、NTT)、株式会社QTnetは、地理的に離れたデータセンター(以下、DC)に分散配置された計算処理環境においても、IOWN オールフォトニクス・ネットワーク(All-Photonics Network、以下、APN)による通信の特徴である大容量・低遅延をいかして、処理配置最適化が可能であることを共同で実証した。
IOWNは、NTTが提唱する未来の情報通信基盤の構想だ。主に、ネットワークだけでなく端末処理まで光化する「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」、サイバー空間上でモノやヒト同士の高度かつリアルタイムなインタラクションを可能とする「デジタル・ツイン・コンピューティング」、それらを含む様々なICTリソースを効率的に配備する「コグニティブ・ファウンデーション」の3つで構成されている。
APNは、ネットワークから端末、チップの中にまで新たな光技術を導入することにより、これまで実現が困難であった超低消費電力化や超高速処理の達成を目指す。
1本の光ファイバ上で機能ごとに波長を割り当てて運用することで、インターネットに代表される情報通信の機能や、センシングの機能など、社会基盤を支える複数の機能を互いに干渉することなく提供することができる。
これまでNTT西日本およびNTTでは、このIOWN APNを用いてDC間接続を行い、複数の地理的に分散したDCにおける再生可能エネルギーの利活用について、技術蓄積とユースケース実証を行ってきた。
一方QTnetでは、九州一円に張り巡らせた光ファイバ網を使用したICTサービスをはじめ、災害リスクの低い福岡の立地をいかしたDCサービスを提供している。なおDCでは、再生可能エネルギーによる運用サービスも提供している。
今回3社共同で、IOWN APNを活用した分散DCの構築および、再生可能エネルギーの発電量に応じた処理配置最適化の実験を行った。
実証実験では、まず処理配置最適化の実行を検証するため、福岡、大阪のDC間、約600kmの距離をIOWN APNで接続して、アプリケーションを配置した仮想化基盤および生成AI基盤からなる分散DC環境を構築した。
従来、長距離のライブマイグレーション(アプリケーションを停止させずに配置を変更)を行う上では、アプリケーションに影響を与えるダウンタイムが課題であったが、今回、IOWN APNを利用することで、ダウンタイムの増加を抑えた分散DC環境を構築することができた。
次に、処理配置最適化による再生可能エネルギー利用率向上効果を検証するため、実際に九州地域で再生可能エネルギーの出力制御が発生した日のデータを用い、再生可能エネルギーの発電量やDCの電力利用量に応じて処理するDCを、30分サイクルで選択させる実験を行った。

実験の結果、今回の処理配置最適化計画は、均一に処理を分散させる方式と比較して、当該DCにおける最大31%の再生可能エネルギー利用率の向上が確認された。

これまで、処理配置最適化計画の算出は、外部の電力需給状況や各DC内部のリソース状況など多種多様な要件を考慮するため、膨大な計算量が必要であった。
しかし、今回の実証実験ではNTT独自のアルゴリズムを使用することで、1日分の処理配置最適化計画を2分以内に算出することに成功したのだという。
これにより、より大規模な環境を対象とした処理再配置へ適用可能であることが見込まれている。
なお、この方式は、3つ以上のDC接続にも適用可能とのことだ。
今後は、実証の成果をもとに、需要が増大するDCにおける積極的な再生可能エネルギー利用を促進し、DCの環境負荷を低減することを目指すとしている。
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