小~中電力帯の産業機器や民生機器では、従来からアナログ制御電源が主流であった。しかし、近年ではこれらの電源にも、より高い信頼性、きめ細やかな制御、そしてログ保存による故障解析機能といった要求が高まっている。
一方で、フルデジタル制御電源は高機能であるものの、デジタルコントローラの消費電力やコストが高いという課題があり、小~中電力帯への採用は限定的であった。
こうした中、ローム株式会社は、電流臨界モードPFC(※1)と疑似共振フライバック(※2)という2種類のコンバータを、単一のマイコンで高精度に制御する新しいリファレンスデザイン「REF67004」を開発した。
※1 電流臨界モードPFC(Power Factor Correction)コンバータ:スイッチング電源において、交流(AC)を直流(DC)に変換した時の電力の力率(供給された電力のうちどれくらいの電力が有効に働いたかを示す指標)が非常に良く、電流連続モードPFCよりノイズの発生量が少ないAC-DCコンバータの回路構成のこと。力率が「1」の場合、供給された電力がすべて有効に働いたことを示す。
※2 疑似共振フライバックコンバータ:DC-DCコンバータ回路構成の一種として絶縁電源の構成に使用され、疑似共振方式によりスイッチング損失やノイズを低減することができる。100W程度までの用途に適し、部品点数やコスト面に優れる。他にフォワード方式などがあり、これらを構成するデバイスの進化が絶縁電源の小型化・高効率化を実現している。
これは、ロームが提唱するアナログ・デジタル融合制御技術「LogiCoA電源ソリューション」を具現化するもので、IoT機器や産業用ロボットなど、高機能かつ小型・高信頼性が求められる電源開発に貢献するものだ。
「LogiCoA電源ソリューション」は、高機能かつ低消費電力の「LogiCoAマイコン」を中核とすることで、多様な電源トポロジーの制御を容易にする環境を提供する。
今回リリースされた「REF67004」は、AC入力を電流臨界モードPFCコンバータで昇圧し、その後、疑似共振フライバックコンバータでDC 24Vを出力する電源を想定したリファレンスデザインだ。
外付け部品の特性の「ばらつき」を補正するキャリブレーション機能を搭載しており、LogiCoAマイコンが高精度で各種電圧設定や過電流保護を行うことで、電源の設計マージンを小さく設定することができる。
これにより、より小型・低電力のパワーデバイスやインダクタの選択が可能となり、電源の実装面積削減とコスト削減に寄与する。
また、「LogiCoAマイコン」内蔵の不揮発性メモリには、入力電圧、出力電圧・電流、温度などの動作履歴、停止直前の動作状態、累積稼働時間といったログデータを保存する機能を備えている。
これらのデータを解析することで、電源の故障原因を容易に特定することも可能だ。
なお、電源の制御パラメータや動作履歴は、ローム公式Webサイトで公開されている電源制御用OS「RMOS(Real time Micro Operating System)」を含むサンプルプログラムを利用し、PC上からUART(信号変換機器)経由で設定・取得することが可能だ。
さらに、リファレンスデザインボード「LogiCoA003-EVK-001」を使用することで、実機評価も行うことができるとのことだ。
今後、ロームが得意とするアナログ回路の性能を最大限に引き出すために、デジタル要素を融合する設計思想に付与されたブランド「LogiCoA」において、電源分野に留まらず、パワーソリューション全体にこの設計思想を適用し、電力活用の高効率化に貢献することを目指すとしている。
また、「LogiCoAマイコン」は2024年6月より量産を開始し、主要なオンライン販売サイトから購入可能となる。
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