化学プラントなどのプロセス産業では、高温・高圧や有害物質を扱う過酷な環境下で、複雑な設備の安定稼働を維持することが求められる。
しかし、保全業務は熟練技術者の経験や暗黙知に依存する部分が大きく、労働力不足が進む中で技術継承や業務の標準化が喫緊の課題となっている。
こうした中、株式会社日立製作所(以下、日立)と三菱ケミカル株式会社は、三菱ケミカルの東海事業所において、生成AIを搭載した「AIエージェント」による設備トラブルシューティングの共同検証を2025年12月24日より開始したと発表した。
今回導入されたシステムは、AIエージェントが、動力設備や制御装置などの故障発生時に、その原因と対策を自動で提示するものだ。日立の産業向けデジタルサービス「HMAX Industry」の一環として提供される。
日立はこれまで、組立加工産業向けに同様のシステムを提供してきたが、連続的な工程管理が必要なプロセス産業への適用は今回が初の試みとなる。
検証では、現場の設備管理技術者が行う思考プロセスをAIが再現し、熟練者と同等以上の速さと正確さで故障診断を行えるかを確認する。
同システムの技術的な特徴は、日立独自の「ナレッジのデジタル化技術」にある。具体的には、三菱ケミカルが保有するP&ID(配管計装図)や設備図面を生成AIが読み込み、設備間の関係性を構造化した「ナレッジグラフ」として再構築する。
さらに、保全記録などの「OTデータ」に加え、システム理論に基づく事故モデル「STAMP」などを応用した日立独自の故障原因分析プロセス(OTスキル)をAIに学習させる。
これにより、複雑な相互作用による故障原因の特定が可能となり、現場の「暗黙知」を組織全体の「形式知」へと昇華させることが期待される。

日立は今回の検証を経て、同AIエージェントを三菱ケミカルの国内外の拠点へ水平展開することを目指すとしている。
また、今後は故障診断だけでなく、運転操作や安全管理といったプラント運営の各業務に特化したAIエージェントを順次構築し、それらを連携させることで、高度に自律化した「プラントスマート化」の実現を支援していく方針だ。
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