製造業において、脱炭素化に向けた再生可能エネルギーの利用拡大と、災害時における地域社会の強靭化(レジリエンス)の向上は重要な経営課題となっている。
こうした中、トヨタ自動車東日本株式会社は、岩手工場において地域の脱炭素化と防災性向上を目的とした「金ケ崎レジリエンスグリッド」の運用を開始している。
平常時は再エネの地産地消を進め、災害等の停電時には工場や地域の広域防災拠点へ電力を供給する構想であるが、天候で変動する再エネの利用拡大に伴う「需給バランスの調整」と、災害に備えた「非常時電源(蓄電池残量)の確保」という複雑な制約を同時に満たす必要があり、先を見越した高度な予測制御の確立が急務となっていた。
そこでトヨタ自動車東日本は、株式会社日立製作所と共同で同社のエネルギーマネジメントシステム(EMS)「EMilia」にフィジカルAIを実装し、自動車工場向けに機能を拡張した上で、岩手工場にて2026年4月より本格稼働を開始したと発表した。
導入されたシステムは、現実世界を認識・理解し自律的に行動する「フィジカルAI」を活用して、高精度な電力需要予測とリアルタイムな需給コントロールを行うものだ。
トヨタ自動車東日本が持つ緻密な生産計画情報や過去の稼働実績データをAIの予測モデルへ新たに組み込んでいる。
具体的には、気温などの複雑な相関関係に加え、工場特有のわずかな稼働変動をAIが自律的に学習することで、精緻な電力需要予測を実現した。
その上で、「規定時間内のCO2フリー電力の上限値以内に買電を収める」といった自社固有の複雑な運用ルールや設備仕様に基づき、オフサイト再エネ受電計画などを自動で立案する。
さらに、リアルタイムの需要変動に対しても、CGS(熱電併給システム)や蓄電池などの分散型エネルギーリソースを人手を介さずに自律的に制御し、事前の計画と実績のギャップであるインバランスを最小化する。

この制御においては、設備固有の制約条件を考慮し安全な稼働範囲を厳格に守る仕組みとなっており、実際の試運転調整時にはインバランス率1%前後という極めて高精度な運用を達成した。
また、日々の需給調整を行いながらも、災害等の停電時に備えて蓄電池残量を常に確保する機能を備えており、有事の際における近隣地域への送電機能の維持にも貢献する。
トヨタ自動車東日本は同システムの導入により、自社の再エネ利用拡大と地域社会の強靭化を両立する、高度なエネルギー管理基盤を確立したとしている。
一方日立は、今回の取り組みを「AIによる高度なエネルギー最適制御」のモデルケースとして、データセンター、製造業、流通業、オフィスビル、商業施設、地域マイクログリッドなどの多様な業種・施設に対して展開する方針だ。
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