ブドウやモモ等の果樹農業を基幹産業とする山梨市とICTなどを活用した地域活性化に取り組む東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本)は、2017年から多様なパートナーと協働のうえ、儲かる農業や持続可能な社会の実現をめざす官民連携のプロジェクトを推進してきた。
同プロジェクトの一環で、基幹産業である農業分野でのIoT活用による課題解決を起点に、2017年2月から自営無線ネットワーク(※)を活用し、圃場における環境センシングや盗難対策、市内における防災対策を進めてきたが、2020年12月より、水位センシングデータの住民へのオープン化および同ネットワークの福祉分野への活用に発展させ、地域版スマートシティとして本格展開することを発表した。
これまでの取り組み
- 農業:圃場の環境データセンシング
- 農業:シャインマスカットの盗難対策
- 防災:水位監視、地崩れ監視
シャインマスカット生産農家の圃場において、温湿度や照度等の環境データを取得できるセンサーを設置し、クラウドを通じて自宅や外出先等から確認できる仕組みを構築した。圃場の環境データをリアルタイムに把握することで、圃場の巡回回数を必要最低限にすることができ、巡回頻度を20%削減した。
また、JAが保有する栽培マニュアルとセンサーで可視化された圃場の状態を常に照合しながら栽培ができることで、失敗の少ない安定栽培も実現した。
高単価のため被害が多いシャインマスカットの盗難対策として、圃場の出入り口に人感センサーを設置し、人の動きを検知した際に指定のメールアドレスにアラート通知ができる仕組みを構築した。盗難発生時の迅速な対処や心理的な犯罪抑止効果が期待でき、生産者の経済的損失や経営意欲低下等の抑止に寄与した。
自治体の防災対策として、市が管理する河川や土砂災害の特別警戒地域の一部にセンサーを設置し、災害時の状況確認や定期巡回稼働低減等、市域情報を効率的に把握できる仕組みを構築した。河川や傾斜地の状況をリアルタイムに把握でき、災害発生時には指定のメールアドレスにアラートが通知されるため、現場特定の迅速化や早期復旧にもつながる。
新たな取り組み(福祉分野)
- 宅内外を一貫して安否確認する仕組みを構築
- 各センサーにより宅内状況の可視化を実現
- 災害避難所に出入りした際に検知する仕組みを整備
センサー等を身に着けた高齢者が自宅・公民館を出入りした際に家族等にメールを通知する。日常生活への浸透性が高い靴内蔵センサーを活用することで、高齢者が意識することなく見守ることができる。
高齢者の自宅に温度や照度等の環境情報を取得できるセンサーや、ドアの開閉状況を検知できるセンサーを設置することで、宅内状況の可視化や異常検知時の家族への通知が可能だ。各センサーは照明や圧力、振動等のエネルギーを電力に変換できる電源レスのセンサーを採用しているため、電池切れで正しく検知ができないといったリスクを回避する。
災害時の安否確認として、避難所に出入りした際に検知する仕組みを構築する。この仕組みにより、災害時に高齢者が無事に避難できたことを確認できるとともに、どの避難所に居るかの位置情報を把握することができる。
※ 自営無線ネットワーク:通信事業者が提供する無線通信サービスとは異なり、国、自治体、一般企業等が事業運営や業務効率化のために開設・運用している無線ネットワーク
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