日本電信電話株式会社(以下、NTT)は、IOWN構想(Innovative Optical & Wireless Network)の実現に向けて、具体的な技術ロードマップを発表した。IOWN構想は、NTTが推進するオールフォトニクス・ネットワーク、コグニティブ・ファウンデーション、デジタルツインコンピューティングから構成される次世代コミュニケーション基盤構想だ。
同ロードマップでは、下記の4つの技術開発が示された。
- 大容量低遅延データ通信方式
- データセントリック型ICTインフラの実現
- 多地点、超高速、低遅延クラウドコンピューティングの実現
- ICTインフラにおけるエネルギー効率の飛躍的向上
オールフォトニクス・ネットワークの大容量性を最大限に活かすため、パケット伝搬遅延による最大可能データ転送レートの低下を軽減しながら、従来のTCP/IP方式と比べて大容量データの転送時間を短縮する高速Layer4/Layer3(※1)通信方式を開発する。また、これによる通信量の増大に対応するための光や無線アクセスの大容量化方式の開発にも取り組む。
コグニティブ・ファンデーションの構成要素ひとつとして、センサノードやAI分析ノードなどのノードの間の大容量データの交換・共有を低遅延に、効率的に実現するコグニティブファウンデーションデータハブ(以下、CFデータハブ)(※2)を開発する。また、このデータハブを中心として多種多様なネットワーク、コンピューティング手段を連携させるデータセントリックアーキテクチャ(※3)を推進していく。
複数のデータセンタがシームレスにまたがったクラウドコンピューティングインフラを実現するため、オールフォトニクス・ネットワーク上の通信の高速性、低遅延性を活かした高速分散コンピューティング方式を開発する。
コンピューティングのモジュール間、パッケージ間、チップ間のデータ伝送を段階的にこれまでの電気ベースから光ベースへと置き換えながらデータ伝送の経路を簡略化することによりエネルギー効率の向上を実現するフォトニックディスアグリゲーテッドコンピューティング技術(※4)を開発する。
これらの技術をIOWN構想に取り込んで大容量データを低遅延に伝達しながらAI制御を行うことにより、ヒトの知覚能力、反射能力を超越したシステム制御を実現するという。また、多数のAIシステムの協調により、社会規模の全体最適化や大規模シミュレーションを通じた未来予測を実行していく。
また、CFデータハブを通じて多数のノードの間の連携が加速され、複数のAIサービスを組み合わせながら新しいAIサービスを作るようなマッシュアップ型AIサービス開発も実現され、IOWNを基盤としたSmart World時代のソーシャル・キャピタルが形成されるとした。
※1 Layer4/Layer3:ISO(国際標準化機構)OSI参照モデルのトランスポート層(Layer 4)とネットワーク層(Layer 3)。
※2 CFデータハブ:広域に分散配備された複数のサーバーからなるデータ交換・共有インフラ。ユーザーノードは、最近傍のサーバーにアクセスすることにより、高い最大可能転送レートでデータを転送することが可能となる。さらに、CFデータハブはブローカー機能や共有データ領域を提供し、多対多のノード間のデータ共有を効率的に実現する。
※3 データセントリックアーキテクチャ:ユーザーノードからCFデータハブへのアクセスは、IP/非IPを含めて、多様な通信方式を可能とする。これにより、従来のIPを共通レイヤとするパラダイムから脱却し、多様な通信方式に対応可能なデータ交換・共有手段を中心として、様々なシステムを連携させる「データセントリック」という新しいパラダイムを実現する。特に、IOWN上のノードからのアクセスについてはLayer4/Layer3通信方式を用いるとともに、機能別ネットワークを用いることで可用性を確保する。
※4 フォトニックディスアグリゲーテッドコンピューティング:従来のサーバーボックス指向のコンピューティングインフラからフォトニクスベースのデータ伝送路に基づくサーバボックスレスなコンピューティングインフラへパラダイムシフトさせる新しいコンピューティングアーキテクチャ。
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