人工衛星を活用するには、無線通信装置が必要となるが、装置に求められる要件は厳しく、特に装置の小型化と消費電力の削減が求められている。
衛星用の無線通信装置の送信部は、信号を強くする増幅器の消費電力が装置の消費電力の大部分を占めている。
増幅器の電力効率が悪いと、装置の消費電力が増えるだけでなく、無駄になった電力を衛星外に放熱するための放熱機器が大型化するため、装置サイズが大きくなってしまうという課題があった。
こうした中、日本電気株式会社(以下、NEC)は、人工衛星の無線通信装置の増幅器の消費電力を約30%削減できる、AIを活用した波形歪補償技術を開発した。
この技術は、AIを用いた歪補償回路の演算を効率化する独自の手法により、従来の衛星搭載の歪補償回路と比べて回路規模をコンパクトに実現した。
さらに、AIの活用により歪補償能力を向上させ、増幅器における歪特性と電力効率のトレードオフを改善した。
その結果、従来と比べて、消費電力を約30%削減することができ、放熱部品の容積削減による衛星の小型化、低コスト化に貢献する。

またNECは、この技術の回路実装と、複数の回路の統合・最適化を自動化する自動設計ツールを開発した。
これにより、通常数カ月かかるニューラルネットワークの回路設計等を約1時間で完了することができ、開発期間の大幅短縮を実現した。
同ツールを活用することで、衛星用の無線通信装置のリアルタイム検証を短期で行うことができるほか、回路設計の自動化により、他の無線通信装置への展開が容易になった。

今後NECは、今回開発したAIを活用した波形歪補償技術を適用し、人工衛星に搭載する無線機器を小型化・省電力化することにより、非地上系ネットワークの発展に貢献するとともに、地上系ネットワークへの展開も行っていくとしている。
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