IBMは、同社の年次イベント「Think」において、企業が自社データを活用してAIエージェントを構築・展開できるようにする、新たなハイブリッド・テクノロジー群を発表した。
その一つが、AIエージェントの構築および連携を支援する「watsonx Orchestrate」のエージェント・ビルダー機能だ。
この機能は、AIエージェントの構築にノーコードからプロコードまで対応するほか、様々なフレームワークで構築されたエージェントを容易に統合・カスタマイズ・デプロイできるツールを提供する。
これにより、最短5分で独自のエージェント構築が可能になるという。
なお、このエージェント・ビルダー機能は2025年6月に提供が開始される予定だ。
また、人事、営業、調達といった特定領域向けに加え、Web調査や計算などの汎用的なタスクを実行する事前構築済みエージェントも提供する。
すでに、HRエージェントは提供開始済みで、営業および調達向けエージェントは2025年6月に提供開始予定だ。
そして、こうしたエージェントは、Adobe、AWS、Microsoft、Oracle、Salesforce(Agentforce)、ServiceNow、Workdayなど、80以上の主要エンタープライズ・アプリケーションとを統合することができる。
さらに、「watsonx Orchestrate」には、2025年6月に提供予定の「Agent Catalog」が導入され、IBMおよびBox、MasterCard、Oracle、Salesforce、ServiceNow、Symplistic.ai、11xといったパートナーエコシステムが提供する150以上のエージェントや事前構築済みツールへのアクセスが簡素化される。
二つ目が、ハイブリッドクラウド環境全体にわたる統合管理を効率化する「webMethods Hybrid Integration」だ。
これにより、企業が自社で持っているオンプレミスなシステムや、複数のクラウドサービスを組み合わせた環境全体の統合が可能だ。
Forrester ConsultingによるTotal Economic Impact調査では、「webMethods Hybrid Integration」の統合機能を導入した複合組織において、3年間でROI176%達成、ダウンタイム40%削減、複雑なプロジェクトにおける33%の時間短縮、単純なプロジェクトにおける67%の時間短縮といった結果が出ている。
三つ目が、非構造化データをAIが活用できる形にアクティブ化する「watsonx.data」だ。様々な非構造データを扱えるオープンなデータレイクハウスと、データの出所を明らかにするデータリネージュ追跡やガバナンスといったデータファブリック機能を統合することで、部門間、フォーマット間、クラウド間でデータを統合・管理・アクティブ化できる。
これにより、企業はAIアプリケーションやAIエージェントを非構造化データに接続することが可能となり、IBMの社内テストでは、従来のRAGと比較してAIの精度が40%向上することが示されている。
さらに、フォーマットやパイプラインを横断してデータをオーケストレーションする単一インターフェースツール「watsonx.data integration」と、AIを活用して非構造化データから深い洞察を抽出する「watsonx.data intelligence」も発表。これらはスタンドアロン製品として提供されるが、一部の機能は「watsonx.data」を通じて利用可能となる。
四つ目が、大規模AI活用のためのインフラ環境「IBM LinuxONE 5」だ。
これは、データ、アプリケーション、AI向けのLinuxプラットフォームであり、IBM社内テストの結果、1日あたり最大4,500億件のAI推論処理を実行できるとしている。
IBMのTelum IIオンチップAIプロセッサやIBM Spyreアクセラレータを搭載することで、トランザクションワークロードや生成AI、高負荷AIアプリケーションを実現する。
セキュリティに関しては、顧客データ保護のための機密コンテナと、IBMの耐量子暗号テクノロジーとの統合により、量子コンピューティング時代を見据えたサイバーセキュリティ攻撃への対策を強化している。
IBM会長兼CEOのアービンド・クリシュナ氏は、今回発表されたハイブリッド・テクノロジー群の提供に関して「AIの実験時代は終わり、目に見えるビジネス成果を促進する、目的に特化したAIの統合が競争上の優位性を生む。IBMは、複雑さを解消し、本番環境でのAI導入を加速するハイブリッド・テクノロジーを企業に提供する」とコメントしている。
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