SNS運用をAIで内製化するには?カスタムAIとノーコードツールで効率化する方法を解説

企業におけるSNSの活用は、顧客との接点を作り、企業の利益につなげる可能性を秘めた重要な施策です。

しかし、SNS運用を任された担当者は、コンテンツを作るためには、毎日のように流れてくる膨大なニュースを巡回し、その中から自社のターゲットに刺さるネタを選別する必要があります。

さらに、それを各プラットフォームの特性に合わせて具体的な投稿案にまで落とし込み、ユーザーとのコミュニケーション、コメントへの返信、効果測定など業務が多岐にわたり、担当者のリソースは常に逼迫し、工数過多の状態に陥りがちです。

こうした状況を打破しようと外部の専門業者に運用代行を依頼すればコストがかかるため、「自社で高品質な運用を内製化したい」という企業が多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、SNS運用を任された担当者の方がクリエイティブな時間を捻出するためにも、AIを活用して効率化するためのヒントを紹介します。

SNS運用の4つの基本ステップ

まずは、どこを自動化し、どこに人間が注力すべきかを明確にするためにも、SNS運用の一連の流れを「作業工程」として分解します。

ここでは、SNS運用を4つのステップに分けて考えてみます。

Step 1:情報収集・リサーチ

SNSの成否はリサーチの質で大きく左右されますが、毎日複数のニュースサイトや競合の投稿を巡回するのは、担当者にとって時間がかかる能動的な作業です。

情報収集の本質は、単に最新情報を知ることではなく、「自社のターゲットが今、何に価値を感じているか」という兆しを掴むことにあります。

そこで、情報の「網羅性」と「速報性」を担保しつつ、AIに一次情報の選別を任せることで、担当者は「集まった質の高い情報」をどう解釈するか、という高度な知的作業に集中できるようになります。

Step 2:企画・ネタ出し

収集した一次情報を、自社のアカウントならではの「視点」に変換するプロセスです。

AI時代のSNS運用において、情報の転送だけでは価値が生まれにくく、読者はその情報が「自分たちにどう関係し、どう役立つのか」という独自の解釈を求めています。

このステップの本質は、既存の枠組みに囚われない「切り口の多様性」を確保することにあります。

そこで、AIに特定の役割や専門性を持たせ、ベテランマーケターのような視点で思考のタタキ台を量産させます。

これにより、担当者はゼロから切り口を考えるのではなく、AIとの対話を通じて企画をより鋭く磨き上げるという、クリエイティブな意思決定が可能になります。

Step 3:コンテンツ制作

確定した企画案を、各プラットフォームに最適化されたコンテンツとして制作する工程です。

どんなに優れた企画も、最初の3秒で惹きつけるキャッチコピーや、スマホ画面でストレスなく読めるデザインがなければ、ユーザーを惹きつけることはできません。

このフェーズの課題は、制作に時間をかけすぎて旬を逃してしまうことです。

そこで、AIに構成案や動画の台本、複数のキャッチコピー案を生成させ、それをCanvaなどのデザインツールと組み合わせる手法が有効です。

「0から1を作る」苦労をAIに任せ、人間は「1を100にする」ブラッシュアップとクオリティ管理に徹するという役割分担が効率化の鍵です。

Step 4:投稿・分析

投稿はゴールではなく、次の企画のための「実験結果」です。インプレッション数、保存数、エンゲージメント率といった数値を、単なる事務的な報告書として終わらせてはいけません。

真の分析とは、「なぜこの記事は保存されたのか?」「なぜこのキャッチコピーはクリックされなかったのか?」という仮説の検証です。

伸びた投稿のパターンを言語化し、それを再びStep2の「企画AI」にフィードバックする。このサイクルを回し続けることで、アカウント全体の知見が蓄積され、運用は回を追うごとに精度を増していきます。

自動化された収集と企画の仕組みがあるからこそ、担当者はこの「戦略的な振り返り」に最も多くの時間を使えるようになります。

自動化するべき工程を決定することの重要性

上述した一連のステップは、Difyなどのノーコード・ローコードツールを駆使することで、完全に自動化することも可能です。

しかし、AIが収集した情報が取り上げるトピックとして適切か、企画やネタが読者に刺さるものかどうかを投稿前に確認しなければ、誰にも届かない投稿がアップされ続けるという状況に陥ってしまいます。

また、コンテンツ制作は、短いテキストであれば一連の流れで自動化することができるかもしれませんが、構造的に整えられた長文や動画と文章の組み合わせなど、複雑な処理を一度で実行するのはかえって修正の手間がかかってしまう可能性もあります。

さらに、AIはハルシネーションやエラーのリスクを常に抱えているため、すべての工程を確認なしで自動化するのはリスクが大きいのが実情です。

そのため、SNS運用のワークフローの中において、どこで人が判断するべきかを決める必要があると考えます。

今回は、情報収集と企画やネタのアイディア出しを自動化し、最終的なトピックの選定やコンテンツの制作は人が行うこととします。これにより、効率化と品質の担保の両立を目指します。

なお、ステップ3のコンテンツ制作と、Step4の投稿・分析は、どのSNSプラットフォームを活用するかによって変わるほか、ステップ3,4それぞれにさらなる膨大な工程が存在するため、今回の記事では割愛しています。

情報の収集と選別を自動化する

ではまず、Step1の情報収集・リサーチを効率化するために、Webサイトの更新情報を自動的に配信してくれるRSSとの連携が標準で搭載されているノーコード自動化プラットフォーム「Make(旧Integromat)」を活用し、SNS運用の効率化を目指します。

今回構築するのは、特定のニュースサイトから最新情報を取得し、AIが「自社のアカウントにとって投稿価値があるか」を判断した上で、通知までを一気通貫で行う仕組みです。

まずは、きっかけとなる「トリガー」として、RSSフィードやWebスクレイピングを用い、特定サイトの更新を自動検知するように設定します。

実行タイミングは「毎日10時」といった時間指定や、特定の曜日を指定することで、ルーチンワークとして実行されるようになります。

情報の「収集・選別」を自動化する
トリガーの時間設定画面

次に、AIノードにて、サイトからのニュースデータを分析し、ニュースのピックアップをしてもらいます。

そして、そのニュースに含まれるトピックと業界への影響、読者にとっての重要度、SNS投稿の切り口を出力させます。

情報の「収集・選別」を自動化する
AIノードの設定画面

ピックアップしたニュースと指定した出力結果は、Gmailにて通知してもらう仕様としました。

これにより担当者は、届いたメールを確認することでその日の投稿ネタを考えることができます。

情報の「収集・選別」を自動化する
Gmailに送られてきた結果

このワークフローを導入することで、担当者は「ネタを探しに行く」という能動的な作業を効率化することが可能となります。

企画・ネタ出しの自動生成

情報を収集したら、Step2の企画・ネタ出しを行います。

ここでは、Geminiにおける特定のタスクに特化させるためのカスタムAIアシスタント機能「Gem」を活用し、特定の役割と制約を学習させた「ネタ出しAIアシスタント」を構築することで、SNS運用の企画業務を効率化します。

今回は、IoTNEWSがSNS運用を行うと仮定し、「AIの役割と制約」「実行して欲しいタスク」「出力形式」を定義しました。

AIによる「企画・ネタ出し」の自動生成
Gemの設定画面

以下が、SNS「企画・ネタ出し」Gemで設定したカスタム指示です。

【システム設定:AIの役割と制約】

あなたは「IoTNEWS」のSNS運用チームに所属する、親しみやすいトーンのベテラン企画担当マーケターです。

[専門知識と視点]

IoT、AI、DX、SaaSといったB2B技術トレンドに関する深い知識を持ち、市場の動向をデータドリブンな視点で分析します。

企画は常に「IT技術者およびビジネス層」の課題解決に繋がる実用的な内容であることを最優先とします。

[トーンと行動規範]

トーン: 常に親しみやすく、かつプロフェッショナルなトーンを保ちます。

言葉遣い: 専門用語を使用する際は、必ず一般のビジネス層にも分かりやすいように簡潔に解説を加えます。

制約: 感情的な表現は避け、提案は必ず具体的な分析データ(もし入力された場合)または市場の洞察に基づいていることを示します。

【メインプロンプト:SNSネタ出しタスク】

このタスクは、以下の【分析対象】に基づき、弊社のSNSアカウントで利用するための、効果的で実践的な投稿企画案を提案することです。

1. 分析対象(データまたはテーマ)

↓↓↓
[パターンA:競合の成功投稿] 競合の成功投稿の「投稿テキスト」と「いいね数」

[パターンB:テーマ指定] 企画案を作成したい特定のIoT/AIトレンドのテーマやニュース
↑↑↑ ここまでが分析対象です。 ↑↑↑

2. タスク(具体的依頼内容)

成功要因分析/テーマ洞察 (3点):

【パターンAの場合】インプットデータから、投稿が成功した核となる要因を3点に絞って分析してください。この3点のうち、最低2点はクリエイティブ要素(キャッチコピー、画像・動画の構成、デザイン、視覚的訴求力)に関する分析とすること。

【パターンBの場合】指定されたテーマについて、読者の関心を引く核となる切り口を3点に絞って提示してください。

応用企画案提案 (2案):

分析/洞察に基づき、弊社の親しみやすいトーンで応用可能なSNS投稿企画案を2案、具体的に提案してください。

【企画案A】: 動画プラットフォーム(例:リール、TikTok)での利用を前提とした企画。

【企画案B】: テキスト/アンケート機能(例:X, LinkedIn)での利用を前提とした企画。

キャッチコピー提案 (各3パターン):

提案した企画案AおよびBに対し、投稿のサムネイル用または冒頭文に使用するキャッチコピーを、それぞれ3パターンずつ提案してください。

推奨ハッシュタグ:

各企画案のテーマに最も適したトレンド性、専門性、汎用性のバランスが取れたハッシュタグを、合計5つ提案してください。

3. 出力形式(Format)の厳密指定

生成物は必ず、以下の形式ルールに厳密に従って出力してください。

言語: 全て日本語で出力。

形式: Markdown形式(必須)。見出し(##、###)と箇条書き(*)を使い、視認性を高めてください。

セクション: 出力を下記の3つのセクションに厳密に分けてください。

## 1. 分析と洞察

## 2. 応用可能な企画案(2案)

## 3. 推奨ハッシュタグ

上記に基づき、分析と企画提案を開始してください。

今回は、Gemへのメインプロンプトに「分析対象」の入力を二つに分けることで、目的別のネタ出しを行ってもらいました。

一つ目は、「認知拡大」のための競合分析です。

参考となるコンテンツのテキストやいいね数をインプットすることで、成功の核となる要因を3点分析し、特にキャッチコピーやデザインなどの「クリエイティブ要素」を深く掘り下げてくれます。

今回は、OpenAIが発表した新しいモデルを使ってみたという、Xでいいねが多かった投稿のテキストを入力すると、テキストの要約と、なぜ読者の関心を引いたのかという分析、応用可能な企画案をいくつか提示してくれました。

AIによる「企画・ネタ出し」の自動生成
分析に基づいた応用可能なSNS投稿企画案を提案してくれた

提示された企画案の中から、気に入った企画を選択すると、さらに動画構成案やキャッチコピー提案、推奨ハッシュタグなどを提示してくれます。

ここからさらに深ぼって壁打ちを行っていくことで、アイディアの着想を得ることができます。

二つ目が、「潜在価値の掘り起こし」のためのテーマ指定です。

特定のトレンドテーマやニュースを直接指定することで、「分析と洞察」「応用可能な企画案(2案)」「推奨ハッシュタグ」といった3セクションに分けて出力してもらいます。

AIによる「企画・ネタ出し」の自動生成
AIエージェントについて、読者の関心を引く切り口を3点提示してくれている。

SNSのプラットフォームが決まっている際は、動画なのかテキストなのか、その尺や文字数などを細かく指定することで、より完成に近いアウトプットが期待できます。

AIが提案してくれた内容をそのまま活用することは難しいと感じますが、注目を集めているコンテンツや発信したいテーマをもとにした新たな視点が得られるため、ゼロから一人でネタ出しをするよりも効率化することができます。

まとめ

SNS運用の自動化において最も大切なことは、AIなどを活用して効率化することで生まれた時間を、人間にしかできない創作や価値判断に充てることです。

自動化の方法は今回紹介した手法以外にも様々ありますが、目的に応じて効率化できる部分を特定し、自社に合った自動化を進めることが重要です。

企画やネタ出しに関しても、AIが提案してくれる内容はあくまで「タタキ台」ですが、このタタキ台があるおかげでゼロから悩む苦しみから解放され、情報の鮮度が落ちる前に自社らしい言葉を添えて発信できるようになるでしょう。

無料メルマガ会員に登録しませんか?

膨大な記事を効率よくチェック!

IoTNEWSは、毎日新着ニュースを公開しております。

週一回配信される、無料のメールマガジン会員になっていただくと、記事一覧やオリジナルコンテンツの情報が取得可能となります。

  • AIに関する最新ニュース
  • 実践を重要視する方に聞く、インタビュー記事
  • 業務改革に必要なAI活用方などのノウハウ

など、多岐にわたるテーマが配信されております。

また、無料メルマガ会員になると、会員限定のコンテンツも読むことができます。

無料メールから、気になるテーマの記事だけをピックアップして読んでいただけます。 ぜひ、無料のメールマガジンを購読して、貴社の取り組みに役立ててください。

無料メルマガ会員登録