消費者の購買行動において、AIアシスタントにアドバイスを求める動きが日常化しつつある。
しかし、AIとの対話で購買意欲が高まっても、実際の購入には外部サイトへの遷移が必要であり、その過程での離脱(カゴ落ち)がEコマース事業者の課題となっていた。
こうした中、マイクロソフトは2026年1月8日、AIアシスタント「Copilot」上での対話から直接商品の購入・決済までを完結させる新機能「Copilot Checkout」および、自社サイト上にAI販売員を配置する「Brand Agents」を発表した。
「Copilot Checkout」は、ユーザがCopilotと会話する中で商品に興味を持った際、別のウェブサイトに移動することなく、その場で決済手続きまで行える機能である。
例えば、ユーザが「ディナーパーティー用のドレス」についてCopilotに相談すると、AIが複数の商品を比較・提案する。ユーザが決定すれば、そのままチャット画面内で購入が完了する。
これにより、購買意欲が最も高い瞬間を逃さずに成約につなげることが可能となる。
マイクロソフトのデータによると、Copilotを含む購買体験は、そうでない場合に比べて対話から30分以内の購入数が53%増加し、購買意欲がある場合の成約率は194%高いという結果が出ているのだという。
また、事業者の自社ECサイト上に、ブランド固有の知識と「声」を持ったAIショッピングアシスタントを設置できる機能である「Brand Agents」も同時に発表された。
これは、従来の検索フィルターとは異なり、熟練した店舗スタッフのように自然な会話を通じて商品を提案するというものだ。
マイクロソフトの分析ツール「Clarity」と連携しており、顧客の行動データを可視化しながら、アップセルやクロスセルを促進する。
先行導入した小売企業では、AIが支援したセッションのコンバージョン率が通常と比較して3倍以上に達したのだという。
Google「UCP」との比較:アプローチの違いと共通点
なお、マイクロソフトの発表と時を同じくして、Googleも2026年1月11日、同様のエージェンティック・コマース(自律的なAIによる商取引)を実現するためのオープン規格「Universal Commerce Protocol(UCP)」の詳細を発表している。
両社の動きは、AIが単なる検索補助から「購買の実行者」へと進化していることを示しているが、そのアプローチには特徴的な違いが見られる。
マイクロソフトは、「Copilot」という自社のAIプラットフォームにおける具体的な機能や、分析ツールとセットになったソリューションとして展開している。
つまり、ShopifyやPayPalなどのパートナーシップを活用し、既存の加盟店がスムーズに導入できる「実利」を強調するアプローチだ。
一方、GoogleのUCPは、AIエージェントとECサイトが通信するための「標準規格(プロトコル)」の策定に重きを置いている。
Google検索やGeminiだけでなく、あらゆるAIプラットフォームが共通の仕様でECサイトと接続できる「オープンなエコシステム」の構築を目指しており、GitHub上で仕様を公開している。
両社に共通しているのは、Amazonのような巨大プラットフォームが取引を仲介・管理するのではなく、あくまで販売元(マーチャント)が「Merchant of Record(記録上の販売者)」となるモデルを採用している点だ。
マイクロソフトもGoogleも、事業者が顧客データや取引関係を自社で保有し続けることを保証している。
これは、プラットフォーマーによるデータの囲い込みを懸念するEC事業者にとって、導入の大きなインセンティブとなる。
実務的な導入においては、両社ともにECプラットフォーム最大手の「Shopify」との連携を核としている。
マイクロソフトは、Shopify利用者であれば自動的に「Copilot Checkout」が有効化される仕組みを用意しており、GoogleもShopifyを含む主要パートナーとUCPを共同開発している。
2026年は、AIエージェントが「商品を探す」だけでなく「決済まで代行する」という新たな商習慣が、これら二大テックジャイアントの主導によって急速に普及する年となりそうだ。
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