AIエージェントはどこまで使えるか?検証して見えた「二度手間」の課題と正しい距離感

前回の記事では、OpenAIの「ワークスペースエージェント」の全体像と主要機能、導入時の注意点を紹介しました。

前回の記事はこちら:AIエージェント時代到来、OpenAIのワークスペースエージェントを徹底解説、仕組みと4つの主要機能・導入時の注意点まで

今回は、その続編として、筆者自身が実際に「ワークスペースエージェント」で構築したエージェントを活用し、実際にどこまで業務を担えるのかを検証した記録をお伝えします。

検証環境とセットアップ

今回の検証では、ChatGPT Businessプランにおける「ワークスペースエージェント」を活用しています。

GmailとGoogle Calendarの連携

まず、ワークスペース管理画面の「アプリ」メニューから、個人のGmailとGoogle Calendarをエージェントに連携しました。連携はOAuth認証のみで完了し、所要時間は5分程度でした。

AIエージェント構築の勘所、ワークスペースエージェントを実務に組み込む5つの改善ステップ
アプリからGmailとGoogleカレンダーを連携させた。

なお、Businessプランの管理画面には「権限とロール」「ワークスペース アナリティクス」「グループ」「ID とアクセス」といった、企業導入を見据えた管理機能が一通り揃っています。

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権限とロールの設定画面

検証用シナリオ

個人のGmailとCalendarだけでは、業務エージェントを試すための業務文脈が不足します。そこで、検証用に架空の業務シナリオを設定しました。

筆者を「サンプル株式会社 DX推進室のDX推進担当」と仮定し、複数の社内外関係者から届く想定の業務メールと、来週分の業務スケジュールを準備しました。登場人物と相関図は以下の通りです。

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検証用シナリオの人物相関図

準備したメール15通とカレンダー予定9件

各人物から届く想定のメールを15通、Gmailに送り増田。

内訳は、上司レビュー依頼、顧客議題相談、経費精算リマインドといった「対応が必要」系が5通、議事録共有や社員総会案内といった「情報共有のみ」系が5通、プロモーションや通知などの「対応不要・通知系」が5通です。

送信は、別のメールアドレスから、各人物名で表示名を切り替えながら自分宛に送信しました。本文の末尾には、人物ごとに所属と役職を明記した署名を入れています。

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検証用の15件のメール

カレンダーには、月〜金の業務スケジュールとして、IT部門定例、ベンダーA社デモ、経営層向けDX戦略中間報告、1on1、業界カンファレンス、プロジェクトαキックオフ、顧客B社との定例、週次レビューなど、合計9件の予定を登録しました。

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検証用の予定

この検証環境の上で、次章からは実際にエージェントを動かしていきます。

最初は汎用テンプレートのエージェントを試し、そこで見えた限界をきっかけに、設計を5回にわたって改善していくプロセスを順に追っていきます。

汎用エージェントで初回検証する

セットアップが完了したところで、まずはChatGPT Businessに用意されている汎用テンプレートのエージェント「役員補佐」をベースに動かしてみました。

これはGmail、Google Calendar、Slack、Microsoft Teamsなどを連携し、予定表・受信トレイ・チームチャットの情報から日次の業務ブリーフを自動生成するためのテンプレートです。今回はGmailとGoogle Calendarのみを連携した状態でスタートしました。

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役員補佐エージェントの設定画面

テスト①:受信メールの仕分け

最初に、受信メールの整理を依頼しました。投げたプロンプトは次の通りです。

受信トレイの過去1週間のメールについて、以下を整理してください。1. 差出人ごとにメールを分類し、誰から何件届いているか、2. それぞれのメールの要点(1メール1〜2文)、3. 対応が必要なもの、情報共有のみのもの、通知系のものに分類。差出人の判定は、本文末の署名や本文中の自己紹介も参考にしてください。

その結果、差出人ごとの分類が正確に行われた上で、各メールの要点を書いてくれました。

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エージェントが出力した差出人ごとの分類と各メールの要点

対応分類に関しても、「対応が必要」と判断された7件は、検証時に意図的に「対応が必要」と設計した5通に加え、社内MTGの確認と準備、通知系の中にあったログイン情報に対する確認と、内容を精査して適切に振り分けられていました。

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「対応が必要」と判断された7件

テスト②:返信案の生成

続いて、対応必要と判定された5件への返信案を依頼しました。

では、対応が必要なものについて、返信が必要なものに対する返信文の下書きを作成してください。私の立場はDX推進担当です。各依頼に対して、いつまでに対応するか、何を確認してから返答するかも含めて、返信案を作ってください。

すると、7件中4件が返信文が必要なメールだと識別され、各メールに対する返信案と確認事項を提示してくれました。

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出力された返信案

返信案の内容に関しては、具体的な内容には触れられておらず、「内容を確認してまた連絡する」という二度手間になってしまう可能性のある内容でした。

しかし、メールの内容まで完璧に自動化するには、私の立場と役割や、相手との関係性に加え、案件の背景や過去のやり取りなど、膨大な情報が必要となります。

そのため、メールを仕分けて返信が必要なものを抽出するという工程をAIに任せ、返信の内容は人が考えるというワークフローが一番効率的だと感じました。

テスト③:業務ブリーフの作成

最後に、GmailとGoogle Calendarを連携している強みを試すべく、明日の業務ブリーフを依頼しました。

明日の業務ブリーフを作成してください。明日のGoogle Calendarの予定を時間順に、各予定について関連する直近のメールを要約し、事前に準備しておくべきことを示してください。

すると、「14時の顧客B社との定例打ち合わせ」というカレンダー上の予定を起点に、メールで田中花子さんから「木曜14時の定例で、先月の利用状況レビューに加えて、来月リリース予定の新機能の業務適用相談も議題にしたい」という連絡が来ているという情報を、1つのコンテキストとして提示してくれました。

さらに、事前に準備しておくこととして、確認事項やユースケースの準備などを詳細に記載してくれました。

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業務ブリーフの内容

業務ブリーフは、単なる予定の羅列でも、メールの要約でもなく、カレンダーをハブにして関連情報を立体的に組み立てたものでした。

情報集約の裏に潜む「二度手間」という課題

今回ワークスペースエージェントの汎用テンプレートを活用することで、エージェントがカレンダーとメールの情報を紐付け、精度の高い業務ブリーフを出力してくれました。

しかし、ハルシネーション(事実誤認)が起こる可能性がある以上、最終的にはユーザー自身がGmailやGoogleカレンダーを開き、一次情報を確認しにいかなければなりません。

これを前提に、3つの具体的な課題を掘り下げます。

答え合わせのコスト

ビジネスにおいて、AIの「ハルシネーション」や「重要事項の見落とし」は致命傷になり得ます。

エージェントが「田中さんから新機能の相談があります」と要約してくれたとしても、「本当にそれだけか? 他に急ぎの修正依頼や、怒りのニュアンスが含まれていないか?」「日時の指定を、AIが1日ズレて解釈していないか?」といった疑問が浮かびます。

結局、確認漏れのリスクを排除するためにGmailの受信トレイを開き、要約されたメールの全文を自分の目で読み直すという「答え合わせのコスト」が発生してしまいます。

これでは、最初からメールを読んでいるのと作業時間が大差ありません。

UI/UXの壁

次の問題は「動線」です。業務ブリーフを見て「よし、田中さんから届いているメールに返信しよう」あるいは「カレンダーの時間を少し変更しよう」と思ったとき、ChatGPTの画面からそのメールや予定へ直接ジャンプできるわけではありません。

結局、ブラウザの別タブでGmailを開き、検索窓に「田中花子」と打ち込んで該当のメールを探すことになります。

ChatGPTがいくら優秀なコンシェルジュであっても、「情報を集約して指示を出すスペース(ChatGPT)」と「実際に手を動かして作業するスペース(Gmail/カレンダー)」が分断されているため、どうしても二度手間が発生してしまいます。

行間の温度感

メールの要約は文字通り「事実の抽出」です。しかし、実際のビジネスコミュニケーションには、テキストの要約には残らない「行間のニュアンス」や「相手の温度感」が詰まっています。

いつもより文末がそっけない、署名の役職が変わっている、といった微細な変化から「これは定例を待たずに今すぐ電話を入れたほうがいいな」と判断するのは人間の領域です。

エージェントがフラットに要約した箇条書きのテキストだけを鵜呑みにして行動するのは、実務的にはむしろ危険ですらあります。

まとめ

今回の検証を通じて分かったのは、OpenAIのワークスペースエージェントをはじめとするAIエージェントは、現時点では「自分の代わりに仕事を完結させてくれる右腕」ではないということです。

結局、人間が一次情報を確認する手間をゼロにすることはできません。

現時点での最も現実的な使い道は、「情報のインデックス(索引)兼、認知負荷の軽減ツール」として活用することです。

朝一番に「今日の業務ブリーフを作って」とエージェントに依頼することで、「今日は何が起きていて、何に気を引き締めるべきか」の全体像を30秒で把握するための「予習」として活用することができます。

また、大量のメールの中から「どれとどれがカレンダーの予定と繋がっているか」の構造をAIに先に見せてもらうことで、自分でツールを確認しにいく際の見通しが良くなります。

「AIが確認してくれるから自分は見なくていい」という発想ではなく、「自分がこれから見にいく情報のガイドマップを作ってもらう」という距離感で付き合うことが、安全かつ効果的に使いこなす現実解と言えそうです。

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