IoTで「販売」までサポートするエコシステム”Space” Kii 株式会社 CEO 荒井氏インタビュー(2/2)

企業:

IoT向けBaaSを提供されている、Kii 株式会社 代表取締役会長 荒井真成氏インタビューの後半。

前半はこちらから:スマホアプリも簡単構築できる、BaaSサービス -Kii 株式会社 CEO 荒井氏インタビュー(1/2)

 

IoTの「出口」も提供する、エコシステム、”Space”

重要なのは、IoTが提供するバリューをきちんと用途に合わせて明確にしていくことです。インダストリーIoTであれば、正確さをあげる、コストを下げる、スケジュールを短くするというROIの観点なのです。

このため、工場の製造過程、ビルディングの運営コストなどをきちんと見極めて、IoT化をしていく必要があります。さらに、難しいけれどビジネスチャンスがあるのがコンシューマーのIoTです。従来デバイスは物売りで、デバイスのコストと販売価格の差で儲けていたわけで、競争が激しくなるとコモディティ化していき利益は下がっていきます。 

一方、IoTになってから、デバイスがインターネットに繋がっているがゆえに、月額で課金できるサービスを展開できる可能性が出てきました。しかし、サービス提供側がIoTサービスに月額利用料を払ってくれといっても、自分の生活の一部になって毎日使われ、なくなると困るようなサービスでないと、消費者はお金を払いません。それをどう見つけるかというのが、すごく難しいもののひとつだと思います。ただ、このビジネスモデルはうまくいくと、非常に多くの継続する利益を生みます。

僕らは色々なIoTソリューションを作っているかたがたと様々なことをやってみて、だいぶ何が肝なのかわかるようになってきたので、最近ではお客様とIoTサービス構築を一緒に考えるようにしています。

 

-サブスクリプション型(月額課金、サービスを一定期間定額で購入することなど月額課金)やリカーリング(携帯電話のように安く売って通信費で長期に儲けたり、コピーのようにインクで儲けたりするようなビジネス)に持っていく秘訣があるのでしょうか。

そうですね、モノに応じてどのパターンでやっていったらよいかというのは、見えてきました。しかし、そういう考えからマンスリーのリカーリングサービスを作ろうといった時に、大問題があります。メーカーが生活者に「すごいサービスがあります!」と伝えて、生活者が買う気になったとしても、実際のところクレジットカードの番号を登録してもらうのはかなり高いハードルがあります。

生活者とビリング(課金)での接点がないハードウェアメーカーが、ビリングのための接点を作るのは、そう簡単ではありません。実はこれは実際に事実が証明していて、現在のすべてのデバイスでビリングラインを大規模に作った会社は1社しか世の中にありません。 

ハードウェアメーカーは、生活者とのビリングラインはできない、と考えるべき。でもSpaceには販売システムがある

Kii 株式会社 代表取締役会長 荒井真成氏
Kii 株式会社 代表取締役会長 荒井真成氏

-1社しかないというのは、Appleでしょうか?

はい、そうAppleです。例えば、いつもシェアで争っているSamsungはユーザーとビリングラインを作れていません。Samsung cloudなど何回もトライしたのですが、全然うまくいっていません。よって大前提としては、デバイスを作っている企業は、生活者とのビリングラインはできないと思ってはじめるべきだというのが、僕らの今の考えです。

しかし、やらないというわけではなくて、たくさんユーザーを持っていてお客様とビリングリレーションがある企業と組むべきというのが結論です。どういう企業かというと携帯事業者、意外と見落としがちなのが電力会社やガスなどユーティリティ関連企業、マンションの管理費、やケーブルテレビ会社、5億人のクレジットカード情報を持っているAlibabaに代表されるようなEコマースの会社です。。

こういう企業と組むと、すでに多くのユーザーを持っているために、ビジネスチャンスの規模が違うのと、彼らのビリングラインを通じて、ユーザーがワンボタンでサービス加入できるという大きなメリットがあります。月100円払うためにクレジットカードの番号をくださいというのは難しいのです。 

そういう仕組みを、弊社のハードウェアとクラウドを利用していただいた方に提供するサービスが、Space(スペース)というエコシステムで、米Brightstar社と組んで作りました。米Brightstar社はソフトバンクの子会社で、全世界で一番大きなモバイルディストリビューター(販売代理店)です。100か国にオフィスがあって200以上のキャリアと契約があり、リテールストア4万ほどとビジネスをしています。

Kii 株式会社 CEO 荒井氏インタビュー
IoTエコシステム Space

米Brightstar社は冒頭にお伝えしたように、たくさんの顧客を持ちビリングラインを持っている携帯事業者、量販店、Eコマース、ケーブルテレビの会社(販売チャネル)とすでに長い間ビジネスをしています。またハードウェアを流通する仕組みも持っています。 

そこで、IoTのソリューションも彼らを通じて売ってしまうというのがSpaceの基本のアイディアです。多くの携帯事業者、量販店などが自分でIoTのソリューションを作ることを試みましたが、なかなかうまくいっていません。IoTソリューションの成功率が低いからです。 

そこでSpaceでは、あらかじめ販売チャネルの皆さんの要望などを聞きIoTのソリューションプロバイダーの方とソリューションを作ります。それをSpaceに参加していただいた販売チャネルの方に、Brightstarのディストリビューション力で売っていきます。こうすることで、販売チャネルの方は、リスクの多いIoTソリューションを自分で開発する必要はなく、Spaceの中にあるものを持って来れば、月額課金のビジネスをすぐに展開できるようになります。IoTソリューションプロバイダーにとっては厄介なエンドユーザー獲得と月額課金の問題が一気に解決することになります。
 
 

Kii 株式会社 代表取締役会長 荒井真成氏
IoTNEWS代表 小泉耕二

APIを公開すれば、他のサービスやモノと繋がることも容易に

さらに面白いのは、SpaceでたくさんのIoT デバイスが市場に出回った後です。Kii CloudはAPIを公開できる仕組みを持っていますので、様々なデバイスを操作したり、データを取るAPIをサードバーティーに公開することができます。例えば、LEDライトをオン・オフ、色を変えたりとか、Webカメラから画像が取りたいとか、歩数計のデータを取るなどです。サードパーティーはスマートフォンの時と同じように、Spaceによって出荷された様々なデバイスをつなげて面白いアプリを構築することができます。

API化してサードパーティに公開し、面白いアプリ、ソリューションができれば、それをまたSpaceを通じて通信事業者などを通じて、サービスとして販売しにいきます。ハードウェアはすでに販売してお客様の手元にあるので、モバイルアプリを渡せば新しいサービスがはじまります。そこでまたマネタイズができますので、Spaceはアイディアマーケットプレイスという場所になるのです。

最初に出るのは、この子どもの見守りソリューション(SnowFox by Haltian)です。

Kii 株式会社 代表取締役会長 荒井真成氏
子どもの見守りソリューション、SnowFox by Haltian

これは、GPS、3Gの通信機能と様々なセンサーが入っていて、このような小さなもので、1週間くらい電池が持ちます。 親は子どもが特定の場所(例えば学校)に着いたかなどを知ることができる上、行ってはいけない場所(ジオフェンシング)を定義きたりもします。さらに子供が転倒したこと、移動のスピードなどもわかります(誘拐などの警告)。これら様々な状況は親のスマホに通知が来ることになります。 さらに通話の機能も付いていて、子供との会話もすることができます。

 
ここまでは、色々なデバイスメーカーがすでに製品として出していますが、SpaceではKii Cloudのデバイス同士をつなげる機能を使い面白い機能を実現しています。緊急時の通知ですが、スマホに通知が行くため、お母さんがキッチンにいて、料理を一生懸命していてスマホを居間に忘れていたとしたら、通知がきても気づかない場合があります。それを防ぐためにキッチンの天井にIoTのLEDをつけ赤色に点灯させるということができます。これをさらに追加のサービスとします。

このGPSトラッカーデバイスはフィンランドのハルティアン(Haltian)という会社が開発し、LEDは中国のヤンコン(Yankon)いう会社が開発しました。もともと両社はお互いが繋がるとは全く思っていませんでしたが、Kii Cloudを使えば簡単にできてしまうわけです。今後はWebcamなど他のデバイスも組み合わせて、面白いサービスを追加していきます。

一回ユーザーを掴んだら、新しいデバイス、アイディアをどんどん付け加え新サービスにしていくということを考えています。最初のうちは、トラッキングデバイスを使った見守りから始まるのですが、例えば、デバイス内にあるジャイロセンサー、GPSを使い、子どもの健康のため、イングレスのような宝探しゲームを作ろうとしています。 すでに月額フィーを払っている既存ユーザーに新しいサービスを追加展開することで、無理せず売上げがあがっていきます。

さらにSpaceでは、2つの重要なことを提供します。一つ目はエンドユーザーサポートです。様々なデバイスを組み合わせたIoTのユーザーサポートは非常に難しく、各々デバイスメーカーが単独ですると非常にコストがかかります。これを全世界のデバイスメーカー、アプリプロバイダでシェアしようという考えです。二つ目はセールスサポートです。IoTソリューションの販売は大変難しく、黙ってても何も売れないものです。そこでSpaceでは、セールスのシナリオまで考え、そのトレーニングを販売チャネルの方に行います。この2つはIoTソリューション成功のためとても大切と考えています。

弊社は、Kii Cloudがメインビジネスなのですが、企業がKii Cloudを使ってIoT ソリューションを作ったらそれを全世界にお連れする(ディストリビューション)、ということまでのEco Systemが大切と考えSpaceという仕組みを作りました。

実は、このSpaceの出口となる販売店網に、アリババも入っているので、中国市場を見る多くの企業に魅力を感じてもらっています。

 

SPACEは売り方もアイディアの宝庫

Kii 株式会社 CEO 荒井氏インタビュー(2/2)

-これはしびれますね。笑えなくなってきました。テクノロジーを提供している企業は多いものの、販売までサポートしている企業はないです。

先ほどの子供向けのサービスはKids Spaceというのですが、もうひとつ70歳以上のシニアの層のことを考えた、Elderlycare (シニア見守り) Spaceいうサービスを考えています。なぜこの2つのセグメントかというと、携帯事業者などで加入者ひとりあたりの売上高の指標とするARPU(アープ)というものがありますが、0歳から10歳くらいまではARPUが0で、その後70歳以上になると携帯の使用頻度が低くなりARPUが下がっていきます。ということは、そのゾーンのビジネスチャンスを見落としている可能性があります。

3歳くらいからモノを売れれば、10歳までの7年間でお金がうまれますし、7年経ったらスマホにアップグレードという形にできます。70歳以上になったら、シニアの見守り、健康管理という必要性が生まれます。 Spaceではここに目をつけています。 スマートホームというのは今苦戦していますが、シニアのケアをいう観点から見直すと色々な事が技術で可能になると思います。今後面白いサービスを展開していく予定です。

 
-IoTでシニア向けのビジネスは少しずつ増えてきたように感じます。

調査をしたところ、毎月万単位の支払いになると、気になるらしいのですが、親が倒れたりするのがわかるのであれば、月20ドルは安いという話もあります。アメリカだと、シニアの方向けに倒れた時に押す首から下げるボタンを使ったサービスがあるのですが、倒れて押される率は15%しかないそうです。85%の人が押さない理由は、ボタンを押すと救急車が直接くるので、恥ずかしいのと転んだときに大丈夫だと思ってしまうそうなのですが、意外と重症でそのうち足が動かなくなって寝たきりになってしまうというパターンがあるそうです。

SnowFox by Haltianですと、5㎝高さが変わるとわかるようになっているので転倒を検知する事ができます。そして転んだ時にはいきなり救急車を呼ぶのではなく、子どもやケアをしている人たちに知らせるということを想定しています。

 
-BaaSのサービスを展開しているから、できることなのでしょうね。

そうですね、BaaSができて、多くの人がひとつのクラウドを共有できて、ビッグデータも共有できて、APIの相互接続もできて、販売し月額課金の仕組みまで提供しているサービスは他にはあまりないかもしれませんが、IoTを成功させるためには、このように一気通貫の仕組みでないといけないと思っています。

 
-マーケットの特性がわかっていれば、出口となるマーケットプレースや店舗網も販売しやすいですね。もはやBaaSの技術の話ではなくなってきました(笑)Spaceのような事業をやろうと思うのはできても、なかなか実行するのは難しいですよね。

僕の性格上、人ができないと思ったことをやってみたいというのがけっこうあります。20年も日本から離れているので、自分の感覚がどこの国のものなのか、よくわかりません(笑)失敗を恐れないところがあります。

しかしSpaceについては、もうIoTソリューションプロバイダも販売側のパートナーも見つかっていますし、しっかりしたものを提供していけば、うまく始められると思っています。

ちょうど1年前、去年の12月にBrightstar社と話し始めて、3月にバルセロナで開催されたMobile World Congressで世界中のキャリアと話をして、5月に正式発表したときに15社にSpaceの仲間に入っていただきました。また、来年1月のCESでは、Brightstar社とAllSeen Allianceの中でも出展します。

※AllSeen Alliance(オールシーンアライアンス)とは、Qualcomm 社が開発したAllJoyn (オールジョイン)というオープンソースの規格をベースとし、IoTを推進し標準化を目指す団体。

Kii 株式会社 CEO 荒井氏インタビュー

 
-なぜ、AllSeen Allianceなのでしょうか?

先日、Allseen SummitでAllSeen AllianceとSpaceの協力関係も発表しましたが、弊社はAllSeenのゲートウェイを作ります。来年の終わりくらいまでにおそらく40個ほどのIoTデバイスがAllSeen Alliance準拠で出ますので、AllSeen Alliance のゲートウェイを作っておくと、どんどん繋がるデバイスが広がると考えています。

これまでは、AllSeen Alliance対応の冷蔵庫を作ったとしても、さあどうやってマネタイズする? という状態だったのですが、例えば先ほど話したシニアのケアのソリューションと結びつけるなどして、マネタイズのお手伝いをできると思います。さまざまなデバイスをSpaceのEco Systemに結びつけることによって、マネタイズの道を切り開いていきたいと思います。

 
-センサーメーカーなどは、どんどん単価も安くなっていくので、下請けではなくメーカーになっていかなければいけないと生き残れないと思っています。しかし作ったとしても、どう販売していくかが課題として残っていましたので、Spaceはとても期待できそうです。

例えば、電気自動車のテスラを見ると、クルマの中にはほとんど部品がありません。日本にはピストン、カムシャフト、ガスケットなど多くのクルマの部品を作っている非常に加工技術の高い会社がたくさんありますが、電気自動車が増えていくとそれらは必要がなくなっていきます。 皆さんの持っている素晴らしい技術を活かす分野のひとつがIoTだと思っています。 IoTというのは大きな転換期なので、みなさんがプロダクトオーナーになりマネタイズを行える大きなチャンスです。

-本日はありがとうございました。

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