「データで儲ける」ってどういうこと? ー八子知礼×小泉耕二【第10回】

データの活用が価値に直結する絵姿を描くこと

小泉: 小売・流通であれば、これまでは1社対1社のやり取りに限られていたと思います。例えば、イトーヨーカ堂のような大きな会社であれば、その配下にある物流会社や物流センター、小売店といったサプライチェーンのすべての温度データをイトーヨーカ堂という屋台骨の中で管理することができたかもしれません。

しかし、小さいスーパーでも同じことをしようとすると、何か別の「データの箱」が必要になってきますね。

八子: そうですね。「箱」といいますか、それぞれの場所に物理的に散逸しているデータをまとめて分析できるような環境が必要です。

そのためには、前回もお話しした「データ・マネジメント・プラットフォーム(DMP)」のしくみが自社内で必要である一方、ストレージコストの圧迫をある程度避ける必要がありますから、オープンプラットフォームが求められます。

しかも今後は「リアルタイム性」が増してきますから、「データ流通協議会」(DTA)がいままさに進めているように、データのフォーマットをあらかじめ決めておいて、「ほしいデータがすぐその場にある」という環境が求められますね。

小泉: 会社といっても、大企業、中小企業、色々です。小さな会社の人は、自社でデータを取ることはできても、広範囲に集めていくのは難しかったりしますよね。

たとえば、小さな運送業の会社の人であれば、冷蔵車の中の温度データがクラウド上にあり、必要に応じてやり取りできるようなしくみが望ましいでしょうが、そこでもデータの時系列がずれていたり、取得頻度がばらばらだったり、色々あるでしょう。やはり各産業単位でプラットフォームを束ねていくことが大事なのでしょうか。

八子: そうですね。やはり場所や業界単位でプラットフォーム化していく必要があるでしょう。(建設機械メーカーの)コマツが立ち上げた「LANDLOG」はその典型です。

たとえば石油・エネルギーのような業界であれば、多くのプレイヤーが関与しますから、業界共通のプラットフォームをつくり、データを共有しながら、自分たちが最適だと思うオペレーションのモデル、もしくは価格のモデルを決めていくことになると思います。

「データで儲ける」ってどういうこと? —八子知礼×小泉耕二

小泉: いわゆる「設備投資」のように、その投資が次の自分たちの売上をつくるとわかればいいのですが、IoTの場合には、費用対効果が見えない中で進めていくことになります。「何となくデータが集まった状態で始めましょう」と言っても、難しい現状があると思います。「様子見」の人たちがたくさん出てくるのはそれが理由だと思います。

ですから、「野菜の鮮度を保つにはこのデータが必要なんだ」とぶち上げてしまって、きちんと管理していることが価値に直結して、売り上げにつながることがわかるようにすれば、みんな真似してやると思うのです。

八子: そうですね。ですから私は、お客さんから相談を受けた場合には、まずその業界や会社が目指したい姿を描ききります。あとは、その姿を実現するためにどのようなデータが必要なのか、どこから取ってくるのか、そのデータをどう活用して、どのようなビジネスモデルをつくっていくかということを、同時並行的に決めていきます。

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