MaaSを8人が語る。Mobility大航海時代の到来 〜八子クラウド座談会レポート(前編)

自動運転時代を見据えたMaaS市場でのビジネスチャンス ―名古屋大学 客員准教授(インテル株式会社 事業開発・政策推進ダイレクター、チーフ・サービス・アークテクト) 野辺継男氏

名古屋大学 客員准教授 (インテル株式会社 事業開発・政策推進ダイレクター、チーフ・サービス・アークテクト) 野辺継男氏
名古屋大学 客員准教授
(インテル株式会社 事業開発・政策推進ダイレクター、チーフ・サービス・アークテクト)
野辺継男氏

最初に、自動運転の動画を示しながら、野辺氏は株式会社ティアフォーという日本のスタートアップ企業のソリューションの説明をした。

自動運転とはなにか

株式会社ティアフォーの自動運転技術についての解説
株式会社ティアフォーの自動運転技術についての解説

画面の青い部分は、「車が見える部分」であり、実はその他は見えていないのだという。しかし、車はスムーズに走っている。その仕組みは、簡単にいうとセンサーで三次元の地図をリアルタイムに作っているからだそうだ。

LIDARと呼ばれる光を用いたセンシング技術で、周囲にむけてレーザーを照射する。そして、その反射した光の速さや場所といった要素から、対象までの距離やその対象物が一体どのよう性質かを分析するといったものだ。それを無数に繰り返していくとレーザーによる点群が形成され、そして既存のナビの地図と重ね合わせることで、車が走る先の地図を作っている。今後は、このソリューションを通して、より多くのユーザーからデータを収集し、三次元の地図をアップデートしていく予定とのこと。

そのため、今後のデータというものはよりリアルタイム化が進み、どこで曲がるか、車線変更をすべきか、また信号は赤か、青かといったことまで取得した画像から計算しなくても、三次元空間にマッピングした地図が教えてくれるそうだ。

自動運転の実現性

自動運転の実現性は車が走行する場所によって実現レベルが変わってくる
自動運転の実現性は車が走行する場所によって実現レベルが変わってくる

自動運転は場所によって技術がそれぞれ異なっている。当初は、高速道路が交差点や、信号を見る必要がないであろうといった理由から自動運転実現が生活道路に比べて容易ではないかと考えられていた。しかし、2016年ごろになると、ディープラーニング技術が進み、画像認識が正確になり、人間の動作や人間の作業、そして人間が運転しているように運転できる可能性が見えてきた。

生活道路で自動タクシーを運用するのは、道路の障害物や目印となるような道路の白線もないことなどから難しいのではといわれていた。が、最寄りから家までといった範囲を限定し、3次元の地図を作って自動車に学習させる。エリアを限定すれば、その範囲内だけで自動運転できればいい。そのため、高速道路を走るより実現可能性を帯びてきたというわけだ。

ここで問題なのが、オーナーカー(半自動運転)の仕組みの難しさだ。

たとえば、自動運転が可能な範囲外へ出る場合、完全に全地域が自動運転できるようになるまでは、人がどうしても運転しなくてはいけない。人が運転するモードと自動運転のモードの切り替えは非常に難しく、正しく人が運転するモードに戻すことはもちろん、事故が起きたときはどちらのモードであったか、正しくモード変更できていたかという証明が必要となる。このような条件から、商用化まではまだしばらく時間がかかりそうとの見解を野辺氏は示していた。

これからの自動運転とサービス

そういったこともふまえ、現在一般のユーザーに売るような車の自動運転は停滞しているようだ。完全に人間が運転に介在しないというパターンの自動運転がターゲットになっているため、利便性も含めてかなり変わったサービスが提供されることになるだろう。

そこで供給されるのは、Uberやタクシーといったモビリティ事業者がモビリティサービスのために提供するような自動運転だ。

現状、個人が所有している車は4%しか稼働していない。これがタクシーのように常に稼働する状態となれば、稼働率が10倍になる。そのため今までの車は12年間ほどの耐久性があったが、稼働率が上がると1、2年で壊れてしまうであろうといわれている。

つまり、車もスマホと同じようなライフサイクルたどることになる。中古車でコンピュータや、通信機器類が内蔵されたものは新しいものにするとなれば機械自体を買い替える必要があった。しかし、これからは後でソフトウェアでアップデートするということが可能になるため、モビリティ事業者に向けたサービス提供は活発化するだろうと野辺氏は述べた。

モビリティサービスが、人・物・エネルギーを運ぶ

MaaSの典型例といえばUberだが、Uberのやっていることは何かといえばSNSのような「乗りたい人と乗せたい人」のマッチメイキングだ。

乗りたい人のアプリから、ここに行きたいと指定すれば、その人のサービス評価(口コミ)と、次に行く方向が最適なドライバーをアサインしてくれる。アサインされると、グーグルマップも同時に起動していて、ここでこの車に乗ればいいというのがわかるというものだ。
そして、指定の車に乗車し目的地に着くころには課金が終わっている。

鉄道やバス、バイクやスクータのいる位置を把握できればいろんな移動体を組み合わせて、最適、最速、最安といった、いろいろなオプションとして提供ができる。さらには自動運転車がEVになれば、今後の再生可能エネルギーも蓄電池として供与することができる。

人と物とエネルギーを運ぶということをマネジメントするのが、これからのMaaSサービスになるというのが重要なポイントだ。それらの流れを把握できれば、都市計画にもつながり、MaaS事業は非常に重要な位置を占めるといえる。

モビリティサービスのニーズの背景

MaaSは海外ではすでに9兆円程度投資されており、無視はできない市場規模にまで成長している。主な投資理由としては、都市への人口集中があげられる。

スマホを使えばタクシーの乗り捨てができる、自動運転であれば人手不足の解消ができる。もしくは、ライフラインの確保や、社会コストの低減。また、空気汚染をこれ以上多くしないであったり、また車による渋滞解消など。様々な理由が先進国はもちろん、新興国においてもこれらのMaaS的ソリューションがどこの国でも必要になってきている。

たとえば、人がどこかに行きたいとすると、バスや地下鉄、タクシーなどのリアルなデータを複製してデータセンターへもつことで、それらを組み合わせてスマホがインターフェースとなり多様に、かつ最適なオプションを提示して利用者は選ぶことができ、課金もされる。このような形でサービスが提供されれば、非常に簡単にそして移動自体もとても楽になるため、市場は拡大されるであろうと考えられる。

Eスクータの例をあげれば、日本でようやく認可されてきたものの、既にアメリカでは急激に市場が拡大しており投資がされている。MaaSが都市計画に関係しているという説明になるが、アメリカの五車線ある道路すべてに走ってしまうと渋滞する。しかし真ん中の道路をバス、自動運転、一部を普通の車、人や自転車にすれば、1時間当たりの人の流れや道路の許容量が2、3倍上がるといわれている。

スマホの重要性

車は現在世界で12億台存在しており、スマホからアクセスできるユーザー数が2017年で33億人。2025年には車は2億台までしか増えないが、スマホユーザー数は50億人になるとされている。今は所有がメインであるため1人1台で12億台だが、今後増えた2億台は20億人にシェアされる可能性がある。20億人のシェアはスマホのインターネットアクセスの拡大に伴って、スマホを経由した車の共用利用の可能性が今後生まれてくる。

加速度の情報に磁気情報を加えればほとんどの交通手段を判別することができる
加速度の情報に磁気情報を加えればほとんどの交通手段を判別することができる

スマホがインターフェースとして多様に活用されるであろうことは既に話したとおりであるが、さらにここで重要なのはスマホはセンサーの塊だということだ、と野辺氏はつづけた。スマホには、非常に様々なセンサーがあり、これを使って車にいる人が加速度センサーを使うと、何に乗っているか判別することができる。

たとえば、鉄道の場合は加速度の変化はなく一定だ。徒歩は一歩一歩歩くため、遅くなったり早くなったりと加速度に偏りがでている。乗用車やバスは、止まってなにかをしたいときに加速度の変化が起こるため、これで交通手段の見分けはつく。ただし、バスと乗用車は見分けがつきにくいため、電磁波の要素を加えるとバスは電磁波を多く放つが、車は電磁波を抑えてあるため判断がつくようになる。今のコンピュータやスマホは高度化していて、何に乗っているかは明確にわかるという。

ここで重要なのが、任意の3人が同じ移動をしていれば、鉄道かバスに乗っているのではないかという推測がつくということだ。たまたま同じタイミングで同じ道を歩く、走ることはありえない。つまり、同じ道をたどっているということは同じ交通手段を使っているということが考えられる。これをふまえると鉄道、バス会社からバスの現在位置のデータ取得できなくても、時刻表と照らし合わせるとどの交通手段でどのどの時刻のものに乗車していたかがわかるという。

サービスプロパイダの台頭

自動車産業はアナログなものづくりだ、野辺氏は最後にこう語った。エンジンのパフォーマンスを高めるのは、匠の技術であるが、コピーしても第三者が全く同じパフォーマンスを出すことはできない。エンジン自体を作りこんだり、大量生産する能力が企業の競争力を与えたといえる。

それがデジタルになるとソフトウェアはその代表だが、コピーすれば全く同じに動く。誰かがいいものを作ったら、それを使わせてもらうのが一番効率的だろう。それより先のものを次に開発すること、大量生産ももちろんコピーすればいいが基本はユーザに近いところと、センサーの能力を高めるといった基礎技術が付加価値を高めることになる。

今までは自動車産業ではOEMがトップに立っていたが、今後MaaSの世界で誰がトップになるかというと、サービスプロバイダーだろうと予測している。これが常にユーザを分析して、ソフトをアップデートしユーザを引き付け、ユーザを増やし、何を作ればいいかが分析ができている。商品定義などはIntel、NVIDIA、Googleなどがもう実際に取り組んでいる。OEMを車屋さんがやっているとサードレイヤに終始してしまうと野辺氏は締めくくった。

次は、篠原徳隆氏による「最前線の当事者が語るMaaSのトレンドと取り組み方

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