フジタクシーグループとUberによる移動体験~TDBC Forum2019レポート(後編)

2019年4月25日、一般社団法人 運輸デジタルビジネス協議会(以下、TDBC)主催による、TDBC Forum2019が東京コンファレンスセンター・品川にて開催された。今回は、TDBC Forum2019開催レポートの後編となる。前編はこちら

フジタクシーグループとUberによる移動体験

最初に、登壇予定ではあったが急遽来られなくなったUber Japan モビリティ事業 ゼネラルマネージャー トム・ホワイト氏からのビデオメッセージが流された。

トム・ホワイト氏によると、Uberはその事業をグローバルに展開していくにあたって日本の市場への投資・参入を最優先課題に設定しており、日本のタクシー業界との提携はその一環であるとのこと。ホワイト氏自身も日本での生活を通じてタクシー会社やドライバーの方々と話す機会を得て、現場に対する理解を深めることが出来たと述べたほか、フジタクシーとの提携に終わらず日本で継続的な展開していくことに意欲的な姿勢を見せた。

Uber Japan 営業部 シニアマネージャー 佐々木 裕馬氏からはUberの簡単な紹介と、タクシー業界との提携にあたっての理念について解説があった。

Uber Japan 営業部 シニアマネージャー 佐々木 裕馬氏
Uber Japan 営業部 シニアマネージャー 佐々木 裕馬氏

Uberは基本的にミッション・ドリブンな会社であり、そのミッションとは「移動を通じて様々な機会を創出する」ということである。このミッションに合致するビジネスを幅広く展開している。

ホワイト氏が述べたように、Uberにとって日本市場は非常に優先度が高い。さしあたって日本では、タクシー事業と提携することによって日本中でどこでも簡単にタクシーを呼べるシステムを構築したいと考えている。

このタクシー業界との提携にあたって、Uber Japanが特に重要視しているのは日本商習慣の尊重、パートナーとの信頼関係構築、現場第一主義の3つである。

UberJapanのめざす理念は、日本の習慣に寄り添うところからスタートしている。
UberJapanのめざす理念は、日本の習慣に寄り添うところからスタートしている。

Uberは社風として「とりあえずやってみる」スタイルが多い。新しいアイデアやビジネスは実践しつつ問題点を修正していくが、日本は「完璧にしてから顧客に出す」風潮があり、ここのバランスをうまく取っていくことが、日本商習慣の尊重と信頼関係の構築にあたって大切な部分だと考えているそうだ。また、現場第一主義に関してもデータを見てデスクで働くだけではなく、新しく採用した人にも最初は必ず現場(車庫、営業所)に足を運ばせるようにしているとのことだ。

Uber Japanは現在の日本タクシー業界が抱える問題点には大きく3つあると認識している。1つめが市場規模(需要)の減少、2つめが乗務員の高齢化と採用難、3つめが技術力の不足である。

特に1つめの需要の減少については、Uberのアプリがすでに(サービスが開始できていない地区でも)日本中にダウンロード・使用されていることを鑑みて、これらの需要をタクシー業界へと提供できると考えている。また、日本ではインバウンドが増加傾向にあるが、Uberが普及している国から来ているインバウンドは61%にも昇り、すでにUberのアプリをダウンロードし使い方もわかっているこれらの人々にとってUberアプリの利用はハードルが低く、これらの海外客の需要もタクシー業界に提供できるとしている。

フジタクシーグループとUber、提携の道のり

最後に、壇上にてUber Japan 営業部 シニアマネージャー 佐々木 裕馬氏と株式会社 フジタクシーグループ 代表取締役 梅村 尚史氏によって、一般社団法人 運輸デジタルビジネス協議会 代表理事 小島 薫氏をモデレーターとして交え、対談が行われた。

UberJapanとフジタクシーグループの対談
UberJapanとフジタクシーグループの対談

梅村氏によると、タクシー業界関係者にとってはUberの最初の印象は良いものではなかったという。しかし、UberJapanがより日本の商習慣に寄り添う形でタクシー会社と連携していく方針を展開、業界の反発を予想しつつもタクシー会社として昨年9月にUberJapanとの提携に踏み切ったという。

数あるアプリや選択肢の中からUberを選んだ理由に関しては、梅村氏は以下のように述べた。フジタクシーは「フジどこ」という自社アプリを開発していたが、会社の規模的にやはり設備投資の負担が大きく、また技術不足にも悩まされていた。そこでUberに目をつけたのは、非効率の原因となっている配車センターを経由せずに顧客とドライバーが直接繋がるシステムはないか、と探したところUberにたどり着いたとのことだ。

UberJapanとフジタクシーとの提携以降、フジタクシーは売上が10~15%上昇したそうだ。中でも売上増加の大きな要因として、Uberを利用する海外の顧客増加が挙げられる。今では顧客の半分近くはUberを利用しているが、今までドライバー側の原因で顧客の配車依頼に応えていなかったのがUberの導入によって改善されたのも大きい。

ドライバーは、「何分待たされるか分からない」「実際に行っても予約者が見つからない」などの理由で配車依頼に対して積極的ではなく、いわゆる「流し※」の方が効率が良いとして好んでいる傾向があったという。そのため、Uberのアプリによる依頼はドライバーにとっても「すぐに乗りたい顧客とつながる」安心感があるもので、特に配車依頼に対するマイナス要因を払拭できたことは大きな効果であった。結果、フジタクシーは今年の3月には自社アプリを廃止する決定を下した。

これからのタクシー業界について

提携後のUberJapan側の変化としては、やはり1社目がスタートしたおかげで他のタクシー会社も興味を持ち始めてきていることだ。UberJapanに直接電話をかけてくれるようなタクシー会社は今までなかったが、間接的にも興味を持ってくれている会社が増え、日本での事業拡大が軌道に乗り始めたという。

今後の展望として、佐々木氏は「Uberはより優れた技術力を提供し、日本でもしっかりとタクシー業界と信頼関係を結んでいきたい」ということを強調した。梅村氏も、「Uberとの提携によってタクシー業界に新風を呼び込み、現在国交省によって定められているタクシー運賃がより顧客に使いやすい体系に変わり、タクシーそのもののあり方やイメージが変化していければ良い」と述べた。

また会場では、ソリューション展示ブースなども展開されており参加者で大変賑わっていた。

※街を走りながら、乗客を探すタクシー業界における営業方法の1つ。