KDDI研究所、人工知能を活用した故障予測でネットワークを自動運用する実証に成功

株式会社KDDI研究所は、ウインドリバー株式会社、日本ヒューレット・パッカード株式会社、ブロケード・コミュニケーションズ・システムズ株式会社と協力して、人工知能を活用した自動運用システムを開発し、人工知能による故障予測に基づきネットワークを自動運用する実証に成功したと発表した。
この実証では、ソフトウエアバグなどの異常の兆候を9割以上の精度で事前に検知し、従来の約5倍の速度で仮想化された機能を別拠点などの安全な場所へ移行することに成功したのだ。

I 人工知能を活用したネットワーク自動運用システムの実証に成功
人工知能を活用したNFV/SDN自動運用システム

KDDI研究所は、ネットワーク仮想化への取り組みを通じて、IoT/M2Mなど多様化するサービスへの柔軟な対応と、より複雑化する運用の簡素化を図り、高品質な第5世代移動通信システム(5G)ネットワークの実現を目指す。

また、NFV/SDN運用システム技術はTMForum*1やETSI*2などの標準化団体を通じて、共通仮想化基盤における人工知能活用はOPNFV*3やOpenStack*4などのオープン実装団体を通じて、ネットワーク仮想化によるインフラ基盤の高度化への貢献を目指す。

背景

従来の通信設備は、ルータや交換機などハードウエアと機能が一体化した専用装置の形が取られてきた。近年では、汎用サーバが高性能化して通信設備のハードウエアとして使われ始め、さらには汎用サーバで広く用いられている仮想化技術を適用した柔軟性にも期待されている。特に、SDNやNFVといったネットワーク仮想化技術は、重要な設備の輻輳時、他設備の資源(処理能力)を迅速に融通して深刻な事態を回避するといった効果が期待されている。

また、5Gに向けては、IoT/M2M、医療サービスなど多様化する要件を満足するために、ネットワーク仮想化による柔軟性の実現が不可欠となる。

通信設備を対象とした仮想化技術は途上段階にあり、特に障害対応作業が複雑化する懸念がある。そこでKDDI研究所は昨年5月、共通的な仮想化基盤に対してSDN/NFVオーケストレータ*⁵と監視システムとを連携させ、発生した障害を自動的に復旧する運用自動化を実証したとのことだ。

KDDI研究所はこの成果を元に、TMForumや ETSIといった国際標準化の検討を推進し、必要なインタフェースなどの標準化も進めている。
一方、汎用サーバやオープンソース・ソフトなどの活用に伴い、通常の監視や診断では予測が困難なハードウエアの劣化やソフトウエアのバグなどが、運用自動化の盲点となりサービスに甚大な影響を引き起こす可能性が指摘されている。

しかし、このような極めて稀に発生する事象に対しいかに捉え、いかに適切に対応するか、標準や実装も未整備な状況かつ、技術も十分確立されてないのが現実である。

今回の実証実験

(1) 概要

共通的なネットワーク仮想化基盤に、ハードウエアやソフトウエアの深刻な障害の兆候を検知する人工知能を埋め込み、効率的に学習、状況判断すると共に、予兆結果に基づいてSDN/NFVオーケストレータが最適な復旧プランを導出し、仮想化された機能を瞬時に移行させる自動運用システムを実証。

(2) 成果

設備警報などで検知可能な異常だけでなく、稀ながらも一旦発生すると深刻な事態を引き起こす恐れのある事象にも対応可能となった。
今回の実証実験の概要、技術的ポイントは、以下の3つ。

①共通仮想化基盤に分散的に埋め込まれた人工知能が、汎用サーバや仮想化された機能など、ハードウエアとソフトウエアの両面で異常な兆候が無いか、学習、検知。この結果、そのまま放置すると深刻な事態に繋がる恐れのある兆候を捉える。精度の高い学習と分析には膨大な統計量の処理が必要になるため、人工知能を分散させている。

②上記①で捉えた兆候などの情報を、統合管理制御システムに集約。その情報に基づき、SDN/NFVオーケストレータは、最適な復旧プランを導出。例えば、ソフトウエア異常(例:バグに起因するメモリ漏洩)を放置すると突然機能が停止する恐れがあり、停止する前に代替機能でサービスを継続。また、ハードウエア異常(例:冷却ファン劣化によるサーバの放熱異常)の影響を考慮して、該当する仮想化された機能を別拠点などへ移行させる。

③上記②の復旧プランに基づき、実際の復旧作業を自動的に進める中で、特にハードウエアなどの設備に起因した異常に対しては、影響を受けるサービスの範囲が大きくなる。その様な場合、該当する仮想化された機能の数も非常に大きくなり、それらを如何にサービスに影響を与えずに移行させるかが課題となる。そこで、高速移行技術で影響を最小限に留めながらリスクを回避する。

【用語解説】
*1 TMForum
ネットワーク運用管理、ネットワークを介するビジネスなどに関わる標準の枠組みやインタフェースなどを検討している国際標準化団体。

*2 ETSI
The European Telecommunications Standards Instituteの略。欧州を母体としたICT全般に関わる国際標準化団体。

*3 OPNFV
Open Platform for NFVの略。NFV技術に関連するオープンソース団体とも連携しながら、キャリアグレードの実装を進めるオープンソース団体。

*4 OpenStack
サーバやクラウド環境における管理制御ツールとして、幅広く普及しているオープンソース団体、ソフトウエア。

*5 SDN/NFVオーケストレータ
ネットワーク機能やサーバ資源などを一元的に制御して仮想化をつかさどる管理システム。これにより、要件に応じた機能や資源の配置や接続が実現される。

【関連リンク】
KDDI研究所
ウインドリバー株式会社
日本ヒューレット・パッカード株式会社
ブロケード・コミュニケーションズ・システムズ株式会社

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