日本Microsoftは8月30日(金)都内にてMicrosoft Innovation Lab 2019を開催した。
日本マイクロソフトが今年より初開催する「Microsoft Innovation Lab 2019」は、「Japan Partner Conference 2019」と同日同会場 (ザ・プリンスパークタワー東京) にて同日開催された。
新規事業創生に関わる人を対象とし、新たな出会いを作り出す場や知見の共有を行うイベントとなっている。
スタートアップ企業を対象にしたピッチ コンテスト「Microsoft Innovation Lab Award 2019」の決勝ピッチが会場内で開催され、優勝したソリューションにはマイクロソフトのスタートアップ プログラム「Microsoft for Startups」の支援を受ける権利が与えられる。
Microsoft Innovation Lab Award 2019
本コンテストの参加要件は「テクノロジーを駆使して今後の世界を変えていくスタートアップ企業であること」「設立後5年以内の非上場スタートアップ企業であること」「自社のプロダクト/サービスを有していること」の3点。マイクロソフト主催のイベントではあるがAzureなどのMicrosoft の製品を利用しているなどは関係なく優秀なスタートアップにマイクロソフトが支援を行うというものであった。
本会場内で行われた「Microsoft Innovation Lab Award 2019」には書類審査による予選を勝ち抜いたスタートアップ企業5社が決勝ピッチを行った。その5社の発表内容を紹介していく。
ZEROBILLBANK JAPAN株式会社
デジタルデータが増加し複雑化していく中で今のような中央集権型システムではデータを管理していくのは難しくなっていくとして、企業のアセットを分散型システムにて繋げていく必要があるという。
その中で課題となる企業間のデータアクセス権などの問題をブロックチェーン技術にて解決し、企業間におけるデータ流通を再定義するという。
株式会社Linc’well
株式会社Linc’wellは、病院の待ち時間の長期化やキャッシュレス化が進んでいないなどテクノロジーの導入が進んでいない医療分野に焦点をあてたclinic forの提供を行っている。
テクノロジーの導入が進んでいない理由として診療所などの医療機関の95%が個人経営であり、経営者の高齢化も進んでいることがあるという。
オンラインとオフラインの両面から患者WEBでの来院予約やキャッシュレスの支払いや今後は24時間365日の診断や生活習慣の管理などができるようにしたいという。
一般的に診療所の受診者は大半が高齢者であるが実際に運用されているCLINIC FOR田町では40歳以下の利用が70パーセントを占めている。
医療従事者が自由な働き方をできるようにし、受診者の利便性向上など三方よしのプロダクトを作っていくとしている。
株式会社Laboratik
株式会社Laboratikは社内のチームの関係性を可視化する「WE.」の開発を行っている。
組織の誰と誰のつながりが強いのか、コミュニケーションはどれくらいの熱量で行われているのかが一目でわかるように線の太さや円の大きさなどで表現される。
このように可視化を行うことで組織の中で誰がキーパーソンになっているのか、プロジェクトの進行が芳しくないのがチームのコミュニケーション不足にあるのかなどを知ることができる。
コミュニケーションの熱量やチャットの感情表現などをAIで処理をするために3000万件ものデータを集積し機械学習を行っており、自然言語処理技術の向上のために学術機関とのパートナーシップや特許取得にも取り組んでいる。
株式会社T-ICU
株式会社T-ICUは遠隔集中治療システムの提供を行っている。
重大な事故に遭い、集中治療室(ICU)に入った際に集中治療専門医の治療を受けられる確率はたったの30%という日本の現状があり、国内の集中治療専門医不足を遠隔ICUで解決しようというのがT-ICUが目指しているものだ。
法律などの規制によって遠隔からの直接の医療行為は行えないが集中治療室にいる現場の医師が遠隔に居る集中治療専門医に電子カルテなどを共有することで診断や治療方針への助言をもらうことができる。
アメリカでは約20%のICUで遠隔ICUが利用されているが日本ではあまり浸透していないため今後医療機関との提携を進めていくという。
株式会社Scalar
株式会社Scalarではブロックチェーンに似た分散型データベースシステム「Scalar DLT」の開発を行っている。
分散データベースソフトウェアであるScalar DBと分散型台帳ソフトウェアであるScalar DLから構成されており従来のデータベースでは高い改ざん耐性が担保できず、分散型システムはスケールが難しいという問題を二つのシステムの組み合わせで解決しているという。
従来のデータ管理だと自分の身体情報などであっても手元を離れてしまうとどのような取り扱いがされているかなどがわからなくなってしまうなどトレーサビリティの問題もありデータの所有権を人の手などで管理する必要がありデジタライゼーションの足かせとなっていたこの問題を解決するという。
最優秀賞:株式会社T-ICU、優秀賞:株式会社Scalar
本コンテストの評価の基準は「市場性」「実現性」「社会性」「技術力」「グローバル」の5点であった。
審査員5名によって審査が行われたのだが、当日の夕方に最優秀賞、優秀賞などが発表された。
優秀賞には株式会社Scalarが選ばれた。
審査員の一人である日本マイクロソフト株式会社執行役員最高技術責任者の榊原氏は、「手堅いビジネスと面白い技術のどちらに賞を出すか迷ったが、面白い技術を開発しているScalarにかけてみようと思った」と講評が行われ、賞品であるMicrosoft製品が贈られた。
最優秀賞は株式がT-ICUが選ばれた。
榊原氏より「喫緊の社会の問題にコミットしており、社会性が高いことから最優秀賞とさせていただきました」と講評が行われ、賞品として賞金100万円とマイクロソフトの技術・マーケティング支援が贈られた。
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コンサルタント兼IoT/AIライター 人工知能エンジン事業の業務支援に従事するかたわら
一見わかりにくいAIの仕組みをわかりやすく説明するため研究中