「Team Cross FA」が進めるスマートファクトリーの構築と実例 —「Smart Factoryセミナー2019」レポート1

※参考記事2:「ファクトリービルダー」が工場の生産性を最大化する  ―FAプロダクツ 天野氏インタビュー前編
※参考記事3:【前編】「製造業特化型」×「高速クラウド」のIoT基盤「FA Cloud」が始動、その全容と3社共同開発の狙いとは —FAプロダクツ、MODE、神戸デジタル・ラボ

2. 迅速にスマートファクトリーを実現する新手法「ロボット型デジタルジョブショップ」

続いて、オフィス エフエイ・コム 代表取締役社長の飯野英城氏が登壇し、スマートファクトリー構築で重要となるポイントや新しいデジタル生産手法「ロボット型デジタルジョブショップ」について紹介した。

Team Cross FAの幹事企業であるオフィス エフエイ・コムは、自動化・ロボット設備や製造管理ソフトまで工場内で必要な各ソリューションを提供する企業だ(本社:栃木県小山市)。従業員約220名のうち、160名がFAに特化したエンジニアである。導入実績は2,000工場をこえる。

「Team Cross FA」が進めるスマートファクトリーの構築と実例 —FAプロダクツ主催「Smart Factoryセミナー2019」レポート1
デジタル化工程がないとどうなるか?(提供:Team Cross FA)

飯野氏は、もし工程設計のあとにデジタル化を行わず生産ラインや設備の新設を行ったら――先述の4つのPHASEにおいて、PHASE3が抜けていたら――どうなるかと提起したうえで、次のように述べた。

「デジタル化を行わないと、工程設計で作成した図面(仕様書)にもとづいて設備やロボットを導入することになる。そして、その結果を再び工程設計にフィードバックしようとした場合、使うのはやはり図面だ。これまでは日本の製造業だからこそ、図面を使っても(デジタル化のフェーズがなくても)対応できた。『カイゼン』の名のもとに生産現場が独自に改善されてゆき、当初えがいていた工程設計とは程遠いものになっていた。しかしこれでは、データの有効活用がまったくできない」(飯野氏)

続けて、製造業においてデジタル化を進める本質について、「製造業のデジタル化というと、見える化や予知保全が中心のテーマとなっている。しかし、デジタル化の意義はエンジニアリングチェーンを強くすることにあると思う。そのためには、工程設計をデジタル化し、リアルのデータをデジタルにフィードバックするしくみが必要だ。そうすることで、日本のものづくりのノウハウを最大限活かすことができるはずだ」と飯野氏は述べた。

Team Cross FAが目指すスマートファクトリーとは、「自律的に変化・対応し、市場を攻略するための工場」だと飯野氏は述べた。「コストを下げることは重要だが、それだけでは足りない」(飯野氏)。

具体的には、市場が大きく変化したときに柔軟に対応できるような生産ライン(アジリティの高い生産ライン)を構築することが欠かせないという。「組み換えに1年かかるような生産ラインはこれからの市場には対応できない」(飯野氏)。また、量産とカスタマイズの両方に対応できる統合ライン(マスカスタマイゼーション)や、国内・海外工場のリソース(エネルギーやスペース、人員コスト)の最適化も重要だ。

ただ、飯野氏によると、スマートファクトリーの実現において課題があるのも事実だという。その課題とは、「コスト」(投資回収ができない)、「スペース」(導入スペースがない)、「タクト」(人が対応した方がよい)の3つだ。この3つの課題のいずれかが問題となり、「新しい生産ラインなどつくれない」という企業が多いのだ。「とくに少量・中量/多品種の企業の場合が難しい。『うちは大量生産だから大丈夫だよ』という企業でも気づいたら少量/多品種になっていた、あるいは製品サイクルがものすごく短くなったというケースが最近では増えている」(飯野氏)

こうした状況を打開するために、Team Cross FAが新たに打ち出した新しい生産手法が「ロボット型デジタルジョブショップ」である。

「Team Cross FA」が進めるスマートファクトリーの構築と実例 —FAプロダクツ主催「Smart Factoryセミナー2019」レポート1
Team Cross FAが打ち出す新デジタル生産手法「ロボット型デジタルジョブショップ」(提供:Team Cross FA)

生産ラインの自動化というと、コンベヤーの前にロボットを並べた「コンベヤー搬送型自動化ライン」が従来のケースだった。しかしこれでは、先述の3つの課題がどうしても問題となる。これに対して、飯野氏が「これからの超フレキシブル型最新デジタル生産」と語る「ロボット型デジタルジョブショップ」は、コンベヤーによる自動搬送ではなく、AGV(無人搬送車)が工場内を最適に動き回り、部品などをロボットや作業者のもとへ届けるというしくみだ。

具体的には、たとえば「ねじ締1」という設備で異常が発生したら、AIが自律的に工程を変更して、AGVが「ねじ締2」の設備に部品を運ぶ。あるいは、人の作業情報をAGVが把握して、「手待ちが発生した」といった情報をAIに送り、作業計画を自動で調整する。また、AGVを使うと、検査工程で不具合があった場合でも、「この製品は検査されていない」ということを自ら判断し、工程計画にフィードバックできる。コンベアー型のラインだと検査前/後がわからないまま流れていってしまうことが多いのだ。

またこの際、先述の「ねじ締機」のように、各設備やロボットはそれぞれの決められた作業(ジョブ)を行うだけのシンプルな設計にし、フレキシブルに装置の並べ替えができるようにしておくことが重要だ。その配置に合わせてAGVの方を最適に動かすことで、市場の変化に応じて柔軟に生産ラインを組み替えることが可能になるのだ。

なお、Team Cross FAが運営する新スマート工場「スマートファクトリーコンダクターラボ(スマラボ)」において、「ロボット型デジタルジョブショップ」が2020年初め頃に展示される予定だ。