経済において物流は重要なインフラであるにも関わらず、そのほとんどがBtoBの取引であるため物流クライシスが叫ばれていても、物流業界に携わらない人にとっては危機感を持ちづらいという実態がある。
しかし生産労働人口の減少やECサイトの普及といったライフスタイルの変化によって、届けたい物量とそれを運ぶ担い手のバランスは既に崩れているという現実がある。
たとえば公益社団法人鉄道貨物協会の「平成30年度本部委員会報告書」によれば、2017年度時点で既に約10万人のドライバーが不足していると言われている。
さらに2028年度になると、約28万人のドライバーが不足すると同報告書で試算されており、このままでは機械製品、建設資材、衣類、医薬品、生鮮食料品、日用品といった様々な物資が運ばれなくなってしまう。
こうした物流危機を乗り越えるため、昨今、様々な企業が効率的な輸送を実現するためのソリューションを開発・提供し、問題解決に取り組んでいる。
当記事では、その中から5つのソリューションをピックアップし、紹介する。
バース管理ソリューション 株式会社Hacobu
平成27年に厚生労働省と国土交通省が共同で実施した「トラック輸送状況の実態調査」によれば、ドライバーが配送先へ到着してから平均1時間45分は荷降ろしされるのを待っているという。
この荷降ろしされるまでの待機時間を削減するソリューションが株式会社Hacobuのバース管理ソリューションだ。
このソリューションはパソコン・タブレット・スマホとインターネット環境があれば利用することができ、予約と受付の機能を備えている。
予約機能は、運送会社があらかじめ配送先の倉庫へ誰がいつ到着するかを予約し、配送先の倉庫が、その予約情報を受け取ってバースを割り付けるというもの。
受付機能は、ドライバーが倉庫入り口に置かれているタブレットから入場受付をし、倉庫の担当者が入場通知を受け取り、SMSにてドライバーに対してバース番号を連絡し、入場の誘導を行うというものだ。
PickGo CBcloud株式会社
物流業界は元請け、二次受け、三次受けといったように多重構造になっており、実際にトラックを運転するのは個人事業主だ。このような多重構造により、荷主は配送をリクエストしてから、運送会社から車を仕立てられたという連絡を受け取るまで、しばらくのあいだ待たされることになる。
また、二次受け、三次受けといった仲介した運送会社が取次ぎ料を取るため、ドライバーの報酬も目減りしてしまう。
こうした課題を解決するためにCBcloudはPickGoという荷主企業とフリーランスのドライバーをマッチングするプラットフォームを提供している。
2019年10月現在、PickGoに登録されているトラックは12,000台となっており、荷主企業が案件を登録してから、フリーランスドライバーがエントリーするまでの時間は平均56秒とスムーズにマッチングされているようだ。
LADOCsuite/WMS 東芝デジタルソリューションズ株式会社
荷物が、いつ出荷され、今どこにあるのか、というのを物流企業がリアルタイムに把握することは難しい。それは倉庫内の出荷作業ステータスと配送後のステータスが別々のシステムで管理されているためだ。
こうした課題を解決するため、東芝デジタルソリューションズは「LADOCsuite/WMS」を提供している。
LADOCsuiteを利用することで導入企業は顧客からの荷物のステータスについての問い合わせに迅速に回答することができ、また、配送状況のステータスを手作業で入力するといった手間が省ける。導入企業はクラウド環境においてLADOCsuite利用することができる。
自動走行ロボット(UGV) 楽天株式会社 合同会社西友
ECサイトの利用率の伸びとともに、宅配便の取り扱い個数も上昇を続け、2017年度の取り扱い個数は42.5億個と言われている。
しかし、そのうち2割が再配達というデータもあり、最終的に注文社へ荷物が届けられるまでのラストワンマイルの物流が課題となっている。
ラストワンマイルの物流において人手を割かないようにするアプローチとして、楽天と西友で自動走行ロボットを活用した配送サービスが期間限定で行われている。
自動走行ロボットは「西友リヴィンよこすか店」から当店舗に隣接する「うみかぜ公園」まで走行し、「うみかぜ公園」でバーベキューやピクニックを楽しむ人々へ生鮮品を含む食材や飲料を届ける。
利用客はスマートフォンの専用アプリを立ち上げることで注文できる。注文の際、利用客は受け取り希望時間と公園内にあらかじめ設けられた複数の受取場所の中から1つを指定する必要がある。決済は楽天ペイにて行う。
AEROBO(エアロボ) エアロセンス株式会社
映像・測量・インフラ点検などでの用途で導入が進むドローンだが、物流においても導入が進んでいる。
エアロセンスのエアロボは離着陸含めた完全自律飛行が可能なドローンだ。
エアロボは高性能カメラを搭載しており、高速にシャッターを切っても綺麗に撮影できることから、測量・点検の用途が最適といわれているが、カスタマイズをすることで軽量物資の輸送が可能となる。
2020年1月から、エアロセンスはANAHDと国際医療研究センターと連携し、ドローン物流事業をアフリカのザンビアではじめる予定だ。
同事業では、ドローンは地上交通インフラが未発達な地域の医療機関とヘルスケアセンター間を航行し、検査用血液検体、消耗品や試薬などの医療関連物資を運ぶようだ。
さて、5つのスマート物流ソリューションを紹介したが、トラックの待機時間を削減する、荷主とドライバーをマッチングする、ラストワンマイルの物流を無人化する、倉庫と輸送時のステータスを連携させる、物流困難な地域をドローンで解決するというように、様々なソリューションが生まれてきている。
しかし、必要なときに必要な場所へ必要な分だけ届けられるという全体最適を実現するソリューションは無いというのが実態だ。これは物流の担い手が多数存在するから生じる現象だと考えられるが、直面する物流の危機を乗り越えるために、こうしたソリューションを駆使して物流課題が1つずつ解決されていくことを期待したい。
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現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。特にロジスティクスに興味あり。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。