医療分野での3つのIoT事例

最近、熊本県の介護老人保健施設で常勤医師が不在の3ヶ月間で11人の入居者が死亡したニュースが報道された。

施設の所長は、世論の批判をうけて、様々な手段で医師を探したが見つからなかったと反論したが、医師不足の問題はこれまでも様々なメディアが報じてきている。

こうした問題を解決するために2008年度以降、医学部定員を大幅に増加させるといった対策も講じられてきている。

その結果、現在、医師の数は約32万人まで増加し、過去最大の医師が日本にはいる。

では、冒頭に取り上げたような事件が発生してしまうのはなぜだろうか。

それは医師が東京をはじめとする大都市圏に偏在してしまうことが原因だと考えられている。したがって人口が少ない地域では、依然として医師不足の状態が続いているのだ。

また、日本は世界でも類にみないスピードで超高齢化社会へ突入し、高齢者の数は増加の一途をたどっている状況もある。2025年には、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、医療費・介護費が急激に増加していく2025年問題も取り沙汰されている。

このような背景から医療・介護関係者は遠隔診療、ウェアラブル端末を用いた健康管理、医療現場の効率化を行うIoT・AIサービスやソリューションに期待を持っている。また、2011年頃から2016年にかけて、ヘルスケア関連の分野へ参入・起業した民間企業も多い。

では、具体的にどのようなサービスやソリューションが存在しているのだろうか。

筆者が気になる事例を3つ紹介したい。

AIによって問診業務を1/3にまで削減する「AI問診Ubie」

UBie

AI問診Ubie公式

Ubieは2017年に医師とエンジニアの共同で設立されたスタートアップ企業だ。同社が提供するのは医療機関向けの業務効率化ソリューション「AI問診Ubie」だ。

このソリューションは、共同代表の1人である医師が、診察という医者本来の業務ではなく、電子カルテの記載といった事務作業に時間が割かれてしまっているという実体験にもとづいて、開発された。

これまでは病院が外来患者を受け付ける際、どのような症状なのかといったことを確認する紙の問診票を外来患者へ渡していたが、同ソリューションはタブレットで問診を行う。

また、患者ひとりひとりの症状にあわせてAIが質問を自動生成するため、広範かつ深堀りした問診が可能となる。ちなみに患者が答える質問は10数問程度だという。

さらに、患者の事前問診結果が自然言語処理解析され、医師の専門語に翻訳される。医師は診察時に、翻訳された内容を見ることができる。

同ソリューションを利用することによって初診の問診時間が1/3にまで短縮されたとの実績が報告されている。

結果、混雑時間の外来の待ちが解消されたり、看護師が問診業務から受付事務に割く時間を増やせるといった効果が出ているようだ。

手術室材料管理による保険算定の取り漏れを防ぐ「RecoFinder」

RecoFinder

RecoFinder公式

帝国データバンクの「医療機関の倒産動向調査」によれば、2019年上半期の医療機関倒産件数は2000年以降の20年間で4番目に多い23件だったという。なお、最多は2009年上半期の33件だ。

当然だが、医療機関も経営が成り立たなくなってしまうと、倒産せざるを得ない。

そこで、重要なのが保険算定の取り漏れだ。

保険診療について考えたい。医療機関は患者に診療サービスを提供することで対価を得るが、原則、患者は費用の3割を負担するだけでよい。

支払われていない残りの費用については、医療機関が審査支払機関を通じて、共済や健康保険組合に請求をする。この請求の際に医療機関は診療報酬明細(専門的にはレセプトという)を作成するが、手術に用いられた材料点数を正確に把握していなければ、請求を漏らしてしまうという事態に発展する。

これを防ぐのが帝人の「RecoFinder」だ。

同ソリューションは、ユーザーがICタグ付きカードを材料に貼付しておき、使い終わったら、「RecoFinder」と呼ばれるボックスへ投函するというもの。

そして、「RecoFinder」は投函口にICタグ付きカードが通過したことを検知したら、その使用材料と使用時間を自動で記録する。

記録されたデータはPCに自動的に蓄積されていくため、ユーザーは保険算定の取り漏れといった利用から、コスト管理、在庫数の適正化といった利用まで、できるようになっている。

患者見守りシステム 「Y’s Keeper(ワイズキーパー)」

ワイズキーパー

Y’s keeper公式

広い院内や所内では、入院患者・入所者の様子をリアルタイムに把握することは難しい。

しかし、どこかで患者が転倒しうずくまっていた場合、それを放置してしまうことは医療機関側にとってリスクが大きい。

そこで、ワイズ・リーディングは「Y’s Keeper(ワイズキーパー)」という患者見守りシステムを開発した。

同ソリューションは医療機関が患者ひとりひとりの位置を一括して管理し、危険がある場合にはアラートを表示させることで、事故を未然に防げるというものだ。

まず患者ひとりひとりに位置を識別できる送信機を携帯してもらう。

一方、送信機から発信されている位置情報を受け取れる受信機をフロアの各所に定点で設置する。

受信機は受信した位置情報をサーバーへ送信する。そうすると、サーバーに集約された情報はPCのモニターに表示させることができるため、医師や看護師は患者の位置情報を把握できるというわけだ。

現在地が把握できるほか、移動履歴を確認できたり、立入禁止エリアを設定しておけば、そこに近づいたことも把握できるようになる。

冒頭に記載したとおり、医療業界を取り巻く問題は根深く、何かが変われば解決するといった簡単な話ではないと思われる。

医療・介護に従事する人でなければならない業務以外の業務をどのように省エネ化していくか、が課題だ。そのためにIoTやAIを使ったソリューションが必要で、今後、人の作業を代替する、あるいは人の作業を効率化させてくれるようなソリューションの登場・普及を期待したい。

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