気象データのビジネス活用への取り組みと、気象ビジネス推進コンソーシアム

気象データを自分たちのビジネスに組み込み、新たな価値創造に取り組む気象ビジネスが話題だ。

実際に気象データから、季節性のある商品の発注数を予測・調整したり、食品ロスや、機会ロスといったものを減らすといった取り組みや、地震規模から建物の損害予測を行ったり、ガス・電気といったエネルギーの需要予測、また飛行機への搭載燃料についてもこの気象データが活用されている。

突然寒くなったにも関わらず、自動販売機はすべて冷たい飲み物のみだった経験はないだろうか。これから、こういった経験は気象データの活用によって回避できるかもしれない。

今日は、気象データを活用した気象ビジネスに取り組むひとつの枠組みを紹介したい。

気象ビジネス推進コンソーシアムとは

2017年3月7日に設立した気象ビジネス推進コンソーシアムとは、気象データを活用した新たなビジネスの創出に向け、気象事業者に加えて情報通信、農業、小売、保険など関係する産業界や先端技術に知見のある学識経験者、関係府省庁・地方公共団体を構成員とした産学官の連携組織(入会費・年会費無料)だ。

気象ビジネス推進コンソーシアムは、総会と執行機関としての運営委員会があり、事務局は気象庁が運営している。

産業界と気象サービスがマッチングできる場、気象データ利用のためのスキルアップができる場、そして気象データを用いた産業の未来を展望できる場を提供し、産業界における気象データの利活用を一層推進するとともに、IoT・AI技術を駆使し、気象データを高度利用した産業活動を創出・活性化にむけて活動している。(気象ビジネス推進コンソーシアム 組織概要より抜粋)

既に参加した企業は、729会員(2019年11月1日現在)まで増え、気象と自分たちのビジネスの関連に関心が高まっていることがうかがえる。

気象ビジネス推進コンソーシアムでの取り組み事例

毎年、気象ビジネス推進コンソーシアムでは多くの取り組みが行われている。実際に取り組まれた事例について、いくつか紹介したい。

物流:倉庫内要員の適切なアサインをする

NECが取り組んだのは、過去の出荷・入荷実績情報と気象情報を組み合わせ、倉庫内作業における要員のリソース計画、要員の適性業務へのアサイン、作業負荷状況に合わせた動的な要因配置への取り組みだ。

要員のアサインは従来、人の感覚や経験に基づいて行われていたが、経験者の高齢化や人材不足などの問題により、要員の確保が難しいという課題があった。

そこで、気象データを組み合わせた荷物量の予測によって要員計画の作成精度を高める取り組みを行っている。

交通:自動車運転時のヒヤリハット地点を摘出する

デンソーテンは、提供しているドライブレコーダーで録画した情報から、「事故が発生しそうになった地点=ヒヤリハット地点」を自動で抽出し、WEB上で共有・ドライバーへ通知を行うサービスを行っている。

ここでは、気象データとヒヤリハット地点データを組み合わせ、事故が発生しやすい場所、気象条件と関連付けたうえで、当日の気象状況データから、注意喚起を行う取り組みを行った。

建設:河川工事時における出水の危険性を把握する

大成建設では、河川工事中における豪雨などの気象条件で、工事個所から出水の危険性を事前に把握する取り組みを行っている。

工事中の出水は、現場の建設資機材へ大きな被害をもたらす可能性があるため、工事関係者に危険性を周知することが、安全面だけでなく、工程やコストといった面からも重要な取り組みとなっているようだ。

小売:人工知能を使った需要予測をおこなう

SENSYとYuMakeは、気象状況が人の購買行動にむけて影響を与えるという背景から、需要予測ツール「SENSY MD」に気象データを取り込んだ。

これによって、過剰在庫や在庫切れをおこすことなく、在庫が適正化ができているようだ。

小売・飲食:老舗料理店で来客予測をおこなう

EBILABが取り組んだのは、経営判断が今までの経験と勘で行われていた、老舗料理店における来客予測だ。

注文のピークタイムの把握が正確に行われていないことから、適切な人員配置ならびに食材が生鮮食品であるため廃棄ロスが発生していた。今回の取り組みでは、来客数・注文数予測システムへ気象データを取り込んだ形となる。(気象データ以外にも様々なデータを使用している)

結果的に、来客数予測の的中率は9割という精度で予測が可能となり、その結果売上、利益率ともに大幅に向上した。さらに、従業員の平均給与、有給消化率もこれで向上させることができたという。

医療:気象病リスクを予測する

JMDCと日本気象協会が取り組むのは、気温や気圧など、気象の変化によって引き起こされる気象病についてだ。なかでも、ぜん息について喘息患者の受診状況と気象データを組み合わせ、気象変動によるリスク度を5段階で分類、10日後までのリスク度を予測するモデルを開発している。

また、そのリスク度が簡単に確認することができるようにスマートフォン向けのアプリ「ぜんそくリスク予報」としてリリースされている。これは、小児ぜん息患者およびその家族へむけたリスク度を知らせる注意喚起が目的だ。

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