日本が描く「空飛ぶクルマ」実用化に向けた具体的な構想とは?

ドイツのスタートアップ「Lilium」、アメリカの「Kitty Hawk」、中国の「EHang」、オランダの「Pal-V」など、世界各国で「空飛ぶクルマ」が開発されており、大都市の渋滞、物流、災害・救助といった課題の解決に活用すべく、実用化への取り組みが行われている。

日本でも、CARTIVATOR、エアロネクスト、テトラアビエーションといったスタートアップ企業が空飛ぶクルマの開発を行っている。

中でもCARTIVATORは、2018年12月に無人形態空飛ぶクルマの屋外飛行試験の初フライトに成功させ、トヨタやパナソニック、NECなどを始めとした80社以上の企業から支援を得て、空飛ぶクルマの開発を行なっている。(トップ画 CARTIVATORホームページより)

また、経済産業省は2018年12月に「空の移動革命に向けた官民協議会」を行い、ロードマップを発表した。そのロードマップでは、2020年代半ばから事業化させていくことを目標としている。

そして実用化に向けた取り組みを、地方公共団体と民間事業者が協力して行うため、福島県、東京都、愛知県、三重県、大阪府が「地方公共団体による空の移動革命に向けた構想発表会」を2019年8月に開催した。

そこで今回は、各都府県が公開している構想内容を紹介したい。

「福島ロボットテストフィールド」で行われる多様な研究

福島県は、「福島ロボットテストフィールド」という、無人航空機、災害対応ロボット、自動運転ロボット、水中探査ロボットなどを、実際の使用環境を想定しながら研究開発、実証試験、性能評価、操縦訓練を行うことができる研究開発拠点を、南相馬市・復興工業団地内の敷地内に設けている。

日本でも実用化に向けて動き出す「空飛ぶクルマ」の現状
「空の移動革命に向けた構想発表会」福島県の開催資料より

その施設内の援衝ネット付飛行場にて、空飛ぶクルマの試験飛行が可能だという。

また、浪江市にも福島ロボットテストフィールドの拠点を置くため、南相馬市〜浪江市間の長距離試験飛行が可能だ。

空飛ぶクルマ事業のほかにも、ドローン事業を始めとし、災害対応・廃炉ロボ、自動走行、介護・リハビリ、農業などの分野の事業者が、試験、研究・開発を行うために、福島ロボットテストフィールドに集結するという。

今後変化していく人の流入に向けて

三重県では、「離島・過疎地域等での生活支援」「観光資源・ 移動手段」「防災対策・ 産業の効率化」を目指して空飛ぶクルマを導入していこうという構想を描いている。

日本でも実用化に向けて動き出す「空飛ぶクルマ」の現状
「空の移動革命に向けた構想発表会」三重県の開催資料より

また、近隣の空港や大規模ターミナル駅と、三重県の主要都市や観光地を結ぶために空飛ぶ車を活用していくのだという。

そして今後予定されているリニア中央新幹線の(品川ー名古屋間)開業、大阪・関西万博、愛知県でのアジア競技大会の開催を念頭に置いて、三重県にも流入してくる人と、生まれるであろう新たなビジネスチャンスや課題解決に向けて、今からビジネスモデルの検証や社会実装に向けた取り組みを、受け入れに積極的な各市町でおこなっていくとしている。

多様なニーズに応えるために

東京都では、東京の成長戦略を推進するため、「自動運転」「ドローン」「ロボット」といった先端テクノロジーの普及拡大に向けた取組を拡充している。

そして今後は空飛ぶクルマを始めとするエアモビリティにも注力していくという。

日本でも実用化に向けて動き出す「空飛ぶクルマ」の現状
「空の移動革命に向けた構想発表会」東京都の開催資料より

具体的には、「TOKYO STARTUP GATEWAY」というビジネスプランコンテストや、「未来を拓くイノベーション TOKYOプロジェクト」という大企業を始めとする団体とのオープンイノベーションによる製品開発等の支援を行なっており、エアモビリティ関連のスタートアップ企業の後押しをしている。

東京都では、西多摩地区、都心部、島しょ部、臨海部でそれぞれ異なった課題を抱えており、目的に合わせたエアモビリティの導入を考察しているという。

まずは、臨海部の多様な交通手段との結節点を活かした高速移動サービス、西多摩地域の交通不便地域における新たな移動サービス、災害時の物資輸送・人命救助、といった実証実験を行なっていく予定だ。

今後も区市町村とも連携し、具体的な実証内容を随時受け付け、最適な実証フィールドの確保に向けた調整を行なっていく方針だという。

ドローンの実験実績を活かす

愛知県は、「自動車産業」「航空宇宙産業」「ロボット産業」といった今まで培ってきた産業のノウハウとデータを活かし、新たに空飛ぶクルマ産業に発展させていくという構想だ。

日本でも実用化に向けて動き出す「空飛ぶクルマ」の現状
「空の移動革命に向けた構想発表会」愛知県の開催資料より

また、ドローンの実証実験支援実績は60社以上で、そこで活用したフィールドや試験場をそのまま活用することができる。

そして冒頭で紹介したCARTIVATORは、豊田市で有志が集まり活動を開始したという経緯がある。

そこでCARTIVATORと、CARTIVATORのメンバーで設立した「空飛ぶクルマ」の開発・製造・販売を行うSkyDrive、そして愛知県豊田市の3者は、2019年5月に空飛ぶクルマ開発の連携協定を締結している。

具体的には、豊田市はCARTIVATORとSky Driveに対し、開発や実証実験の場の提供、法整備等に係る国県等との調整、地域産業化へ向けた課題抽出、マッチング機会の提供等を行なっていく。

そしてCARTIVATORとSky Driveは、機体開発、試験飛行、実証実験の実施、試験データの提供、産業化へ向けたビジネスモデル作成とその推進等を行なっていくのだという。

関連産業の発展も見据えて

そして大阪府は、空飛ぶクルマの実証実験を実施したい事業者を募り、必要な規制緩和やフィールドの提供をしていく方針を打ち出している。

日本でも実用化に向けて動き出す「空飛ぶクルマ」の現状
「空の移動革命に向けた構想発表会」大阪府の開催資料より

また、今後は空飛ぶクルマの関連企業として、バッテリーやセンサー等の構成部材の供給メーカーなど、数多くの企業が立地していくことを想定している。

そのために、バッテリー関連産業の大阪府への進出を支援したり、大学や研究機関・評価機関等とのタイアップをコーディネート、蓄電池や水素・燃料電池などの分野における技術ニーズとシーズのマッチングを支援していくという。

このように、各都府県で「空飛ぶクルマ」という新たなモビリティを活用した社会課題解決やビジネス展開に向けて、具体的な計画を立てている。

今後行われていくであろう実社会での実証実験や事業展開にも注目していきたい。

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