生産設備を維持する3つの方法、事後保全、定期保全、予知保全

世界の実質GDPの半分はアメリカ、中国、日本、ドイツが占めている。

さらに経済産業省の「2019年版ものづくり白書」によると、上記4カ国で最も高い労働生産性を有しているのがアメリカで、次いでドイツ、日本、中国となる。

GDP上位4カ国の生産性比較
4カ国の労働生産性の実額と対前年比の推移 source:経済産業省「2019年版ものづくり白書」

日本の労働生産性を押し下げている原因の1つとして考えられているのが、設備の老朽化だ。これまで日本は、アメリカ、ドイツに比べて、積極的に設備投資をしてこなかった。そうして生産効率の高い新規設備の導入が見送られた結果として、設備の老朽化を招いてしまったといわれる。

設備投資比較
4カ国の設備投資額の推移 source:経済産業省「2019年版ものづくり白書」

設備は老朽化すると、一般的に故障が起きやすくなる。故障が起きると、設備の稼働停止時間(ダウンタイム)が発生し、その間は商品を造れなくなる。商品を造れなくなる、ということは、設備がフル稼働していれば造れていたはずの物が造れなくなってしまうため、機会損失が生まれる。場合によっては顧客から期待されている納期に商品を揃えることができず、ブランドや会社の評判が損なわれることも考えられる。

このような設備の故障による損失を最小限にとどめるためには、故障を排除したり、設備を正常な状態に保つ活動、いわゆる「保全」をどのように行うかが課題となってくる。保全方法はタイミングによって「事後保全」「予防保全」と2つに大別できるが、「予防保全」はさらに時間を基準とする「定期保全」と状態を基準とする「予知保全」に分類できる。

事後保全

「事後保全」は、設備が機能を低下させたり、停止してしまったりした後で、補修や部品の取替を実施する保全方法だ。突発的な故障が発生しても軽作業によってすぐに補修が可能な場合の保全方法として選択されやすい。

しかし、突発的な故障を直すために、大がかりな補修が必要とされたり、取り替える部品が手元になく、すぐに調達できないといった場合には稼働停止時間が長時間となるため、機会損失が大きくなってしまう弱点がある。

定期保全

予防保全のうち、時間を基準に保全していく方法が「定期保全」だ。定期保全では設備の状態のいかんに関わらず、設備の故障記録や特徴などから保全の周期を決めて、その周期で部品を交換したり点検を実施する。

工場にある機械のほとんどはエアーやガス等を使って稼働しているが、その力をコントロールするために存在するのが、コンプレッサと呼ばれる機械だ。コンプレッサが止まると、工場が止まるというほどに、生産活動に与える影響は大きい。こうした機械には、この定期保全が選択されやすい。

その一方で、予定されている保全時期までに、たまたま部品が調子悪くなってしまうといった時に対応が遅れてしまったり、まだまだ使える部品も交換してしまったりと無駄が生じやすいという弱点もある。

予知保全

予防保全のうち、状態を基準に保全していく方法が「予知保全」だ。

予知保全では、常に設備の状態を計測・監視することで設備の劣化状態を把握したり、故障を予知できるため、最適なタイミングで部品を交換したり補修を行える。事後保全のような突発的な故障を回避できるだけでなく、定期保全のような無駄も減らすことができる。

また、予知保全においては、IoTの活用が期待されている。例えば、モーターの近くに振動センサーを設置することで、日々のモーターの振動を計測・監視する。計測・監視によって得られるデータが蓄積されてくると、モーターが正常に稼働している場合の振動がわかってくる。この振動と異なる振動を検知した際に、指定のアドレスへアラートするようにしておけば、適切なタイミングでの保全が可能となる。

これまでも熟練の技術者によって予知保全は行われてきたが、その多くは長年の経験によって培われた感覚によるもので、再現性がなかった。しかし、IoTであれば、熟練の技術者と同等かそれ以上の微妙な変化も捉えて、故障を予知できる可能性があるとして期待されている。

部品の状態を見える化する「OMNI edge」

OMNI edge 製造業向けIoTサービス
source:OMNI edge公式サイト

「OMNI edge」は製造部品にセンサーを付けて部品の状態を可視化し、予兆検知を行う製造業向けサービスだ。リニアガイド(機械をレールの方向に滑らかに運動させるための機械要素部品)に加速度センサーを取り付けると、リニアガイドの損傷や潤滑状態を数値化できる。さらに、数値化されたデータを分析することで、異常状態の予兆を検知できる。

同サービスを利用することによるメリットは以下のようなものがある。

  • 計画的なメンテナンスが実施できる
  • 担当者の経験やスキルを問わず保全活動を効率化できる
  • 予備在庫の管理コストを削減できる
  • 部品の交換時期を適正化することで全体の生産効率を向上できる

今後はリニアガイドに限らず、ボールねじや他部品にも展開する予定となっている。

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