ISID、ブロックチェーンを駆使した食品の安全を担保するプラットフォームを開発、食品偽装などの防止

ビットコインは2者間の取引に金融機関が介在しなくても、安全に取引を行うことのできる通貨であり、そのビットコインの信頼性を担保する仕組みとして登場したのがブロックチェーンだ。

では、金融機関が介在せずとも、なぜ取引が安全に成立するのだろうか。

金融機関は「誰が、誰に、いつ、どれくらいの通貨を渡したか」という取引履歴を一元的に管理する。これを集中台帳と言う。ブロックチェーンはその反対で、取引履歴は分散的に管理される。そして、これは分散型台帳と呼ばれる。

分散型台帳による管理というのはどういうことかというと、取引データが1つの場所に限定して記録・保存されず、世界中に分散して記録・保存されているということだ。また、この記録・保存を担うコンピュータをノードというが、世界中に散らばるノード同士が対等に検証しあう仕組みとなっているため、改ざんが起こりにくい。

冒頭に記載の通りブロックチェーンは当初「ビットコインを用いた取引を保証する技術」として登場したが、現在ではビットコイン、金融領域に限定せず「取引データを分散して記録・保存し、かつ相互に検証し合うことで取引を保証させる汎用的な技術」として様々な領域で活用が進んでいる。

2016年10月、株式会社電通国際情報サービス(以下、ISID)、Guardtime、シビラ株式会社はブロックチェーン技術を活用して、地方創生を支援する研究プロジェクトを立ち上げる。このプロジェクトは、日本における有機農法の取り組みをリードしてきた宮崎県の綾町(あやちょう)と3社が連携し、綾町の有機農産品の安全をアピールする仕組みを構築することを目的としてスタートした。

綾町の有機農産品は、独自の農地基準と生産管理基準が設けられ、それにしたがい「金」「銀」「銅」のランクが付与され、販売されてきた。このような厳格な管理を行っているにも関わらず、販売に至るまでのプロセスや価値が消費者には充分に届いていないという課題に直面していた。

「金」マークをつけて販売される綾町産カボチャ
「金」マークをつけて販売される綾町産カボチャ source:株式会社電通国際情報サービス

この課題を解決するため、同プロジェクトによって実験が行われた。実験の内容は以下のとおりだ。まず、各農家は植え付け、収穫、肥料や農薬の使用、土壌や農産物の品質チェックなどを綾町の認証のもと実施しているが、これらのすべての履歴をブロックチェーン上に記録する。

綾町が運営・管理するブロックチェーンの概要
綾町が運営・管理するブロックチェーンの概要 source:株式会社電通国際情報サービス

次に、綾町は、このプロセスを経て出荷される農産品に対して、独自基準による認定マークに加えて、固有のQRコードを付与する。そうすると、消費者は購入前にスマホでQRコード読み取って、その農産品が間違いなく綾町産であること、綾町の厳しい認定基準に基づいて生産されたものであることがわかる。ブロックチェーンの活用によって改ざんは困難であるため、食品偽装問題の防止にもなっている。

生産プロセスの画面イメージ
生産プロセスの画面イメージ source:株式会社電通国際情報サービス

もし、この仕組みのなかで、ブロックチェーンの技術が活用されていない場合、生産者が良かれと思って発信した情報も、信頼性が担保されていないために、消費者が安全な食品であるかどうかを判断しきれず、不安が残ってしまう。

ISIDと綾町は2016年以降もさらに実証を重ね、ブロックチェーンを活用して有機農産物の生産・流通履歴から個々人の消費行動までを記録・可視化するシステムの構築に取り組んできた。そして、2020年1月7日にこれまでの知見をベースに、各種農業支援アプリとの連携や取引上の可視化機能を新たに実装したスマート農業データ流通基盤「SMAGt(スマッグ)」を開発したと発表した。

SMAGtのしくみ
SMAGtのしくみ source:株式会社電通国際情報サービス

「SMAGt(スマッグ)」では、スマート農業技術の進展により取得・蓄積が可能となった農薬・堆肥等の使用状況や収穫時期・量の予測等の生産管理データはもとより、出荷・流通・販売データまでを、ブロックチェーン技術による耐改ざん性の高いプラットフォームで可視化できる。

既に福島県や鳥取県の自治体・企業の協力を得て、社会実装の検証を実施済みだが、引き続き事業化に向けた検証を進めていく。そうして、ISIDは日本の農業の生産性向上および競争力強化に取り組んでいく予定だ。

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