AIoT のパワーを解き放て―― AIとIoTを統合したAIoTを今すぐ導入すべき理由とは?

ニチレキ・NTT東日本・NTTコムウェア、AIによる局部損傷診断技術の完成および「smart路面点検サービス」の提供開始

高度経済成長期に集中的に整備された道路舗装は今後一斉に老朽化することが懸念されているが、その維持修繕に関わる予算は大幅に減少している。しかし、地方公共団体が管理する道路は路線数、路線延長ともに膨大であり、損傷箇所の全てをオーバーレイ(※1)などの舗装修繕工事で対応することが困難となっている。ポットホール(※2)が開いたら補修するといった事後対策に頼らざるを得ないのが実情だ。

加えて、道路舗装の管理の入り口である点検に対する費用も大きな負担となっている。現在は多種多様な点検手法があるが、以前より点検に使用されてきた路面性状測定車(※3)は安定した精度を有しており、多くの道路管理者から信頼を得てきた。しかし、点検費用が高いという問題があり、路面性状測定車による安価な点検が求められている。

ニチレキ株式会社、東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本)およびエヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社(以下、NTTコムウェア)は、昨年度から開発に取り組んできた「真に緊急性を要する要修繕箇所を自動的に見出す技術」を基とする、AIによる局部損傷(※4)診断技術を開発した。

更に、NTTコムウェアが提供する「道路不具合検出システム(KT-180052-A)(※5)」とIoTを活用した位置情報サービスを組み合わせ、路面性状測定車を活用しながら安価に点検ができる「smart路面点検サービス」をニチレキより提供開始する。同サービスにより、従来の点検費用に対して60%のコスト削減(従来の40%の点検費用:ニチレキ株式会社比)を実現した。

同サービスの詳しい内容は以下の通り。

  1. 現地踏査業務の効率化(電子地図の活用)
  2. 従来の路面性状調査では、路面性状測定車による路面状況の計測前に、道路管理者から貸与された路線図などの資料を基に現場に赴き、調査対象路線を確認していた。実際に車両で走行して路線延長や起点・終点などの位置を確認し、路面にペイントでマーキング(※6)することで、計測や解析時の位置確認の目印としていた。

    今回、これまで現場で実施していた確認作業を、現地に赴かなくとも事業所内の電子地図上で実施できるシステムを新たに開発し、人件費の削減を実現した。

  3. 路面状況計測業務の効率化(GNSSの活用)
  4. 上記で開発した電子地図をクラウドサーバ上にアップロードすることで、路面性状測定車(smartロメンキャッチャーLYJr.)からインターネット経由で調査対象路線が確認することができる。また、新たにGNSSレシーバーを搭載し、株式会社NTTドコモが提供する「docomo IoT高精度GNSS位置情報サービス」と組み合わせることで、誤差数センチメートルの精度の位置情報が取得できるようになる。

    この位置情報をクラウドサーバ上の電子地図とリアルタイムにリンクさせることで、事業所からの遠隔計測サポートによる「ワンマン計測」を可能にした。これまで調査対象路線の計測は、ドライバーに加えてナビゲーターも同乗していたが1名による業務が可能となり、人件費の削減を実現する。

  5. 新たな評価方法の開発とメニュー化
  6. オーバーレイなどの修繕には「ひび割れ率」の評価、部分的な補修には「局部損傷」の評価といった、道路管理者の維持修繕方針に基づいて評価方法を選択できる仕組みを考案した。新たな評価方法である局部損傷の評価は、50cm×50cmメッシュ内のひび割れの交点(結節点)の個数を数え、ランク分けする。ランクの高い(結節点の多い)箇所は路盤の健全性が失われ、ポットホールなど重篤な損傷に進行することが懸念される状態であると判断できる。

    これらの評価方法を活用し、以下の3ステップで維持修繕計画の策定を支援する。

    • STEP1:AIによる診断区分Ⅰ~Ⅲの3ランク評価
    • AIにより舗装点検要領に対応した診断区分Ⅰ~Ⅲの3ランクで評価することで、管理する道路舗装全体の路面状況を把握する。

    • STEP2:試験法便覧に基づいた「ひび割れ率」評価
    • 修繕が必要となる区間(例えば、診断区分Ⅲ(修繕段階))に対して、再計測なしで従来の試験法便覧に基づいた解析によるひび割れ率を算出することにより、修繕の優先順位付けが可能となる。

    • STEP3:AIによる「局部損傷」解析による評価
    • 予算などの都合で修繕を先延ばしする区間に対して局部損傷の評価を行うことにより、局部的に損傷の進行が早く緊急の措置が必要と予想される箇所を計画的に小規模補修することが可能となる。

    従前の維持修繕計画では、修繕が必要とされる区間に対する費用と実際の予算規模の乖離が大きく、実現性に乏しいものとなっていたが、3つのSTEP評価により、修繕と計画的な小規模補修を組み合わせることで、実現性の高い維持修繕計画の策定を支援する。

    ニチレキ・NTT東日本・NTTコムウェア、AIによる局部損傷診断技術の完成および「smart路面点検サービス」の提供開始
    常温表面処理工法
  7. 路面画像評価業務の効率化(AIの活用)
  8. ひび割れ率の評価については、路面性状測定車で取得した路面画像のひび割れを人力で確認していたため、熟練の解析者でさえ1時間当たり1km程度の評価にとどまっていた。検出したひび割れの面積からひび割れ率を算出するAIを活用することで、1時間あたり約7kmの評価が可能となった。

    また今回、局部損傷に特化した新たなAIを開発した。このAIはNTTコムウェアの画像認識AI 「Deeptector」を利用し、ひび割れの交点(結節点)を検出し損傷をランク分けする技術であり、局部損傷評価に適正化されたものとなっている。局部損傷の評価作業は人手による解析では煩雑であるため、このAIの活用により実用化が可能となった。

    ニチレキ・NTT東日本・NTTコムウェア、AIによる局部損傷診断技術の完成および「smart路面点検サービス」の提供開始
    ひび割れ率解析AIと局部損傷解析AIによる解析イメージ
  9. 閉域網・データセンターを活用したセキュリティの向上
  10. 路面性状測定車で撮影した路面画像は、NTT東日本の閉域ネットワークサービスであるフレッツVPNプライオを経由し、同じくNTT東日本が提供するデータセンター上で稼働するNTTコムウェアのAI解析システムに転送し解析する。これにより、地方公共団体様の路面画像をセキュアな環境で取り扱うことができる。

    また、これまで人力による目視で解析してきた業務をデータセンター上のシステムを活用することで、人手不足という社会課題の解決やウィズコロナ時代の人的接触を可能な限り回避する新たな業務運営にも取り組む。

    ニチレキ・NTT東日本・NTTコムウェア、AIによる局部損傷診断技術の完成および「smart路面点検サービス」の提供開始
    ネットワーク構成

※1 オーバーレイ:既設の舗装上にアスファルト混合物の層を重ねる工法。
※2 ポットホール:舗装の表層がはがれてできる穴、へこみ。
※3 路面性状測定車:一般財団法人土木研究センターで毎年実施される路面性状自動測定装置性能確認試験に合格した路面性状自動測定装置を搭載した測定用車両。
※4 局部損傷:局部的に損傷の進行が早く緊急の措置が必要とされる箇所。
※5 道路不具合検出システム:国土交通省「新技術情報提供システム」に登録済みのAI等を活用したひび割れ検知の仕組み。
※6 マーキング:調査対象区間の起点や終点などに目印として舗装路面にペイントしたもの。

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