プラントシミュレーションで工場のKPIを具体的に改善する ーシーメンス 小林氏

株式会社マクニカが主催するセミナー「コロナ禍に挑む! 製造業が勝ち抜く為のデジタルツイン活用術 〜事例と具体的なアプローチ方法〜」が2020年8月27日に開催された。

本稿では、同セミナーでのシーメンス株式会社の小林憲貴氏の講演に関して紹介する。

小林氏は、シーメンスの製品の1つであるプラントシミュレーションを紹介し、プラントシミュレーションを用いることで、製造の面から競争力を強化できるとした。

プラントシミュレーションとは

ヒトとモノの動きをシミュレーションし、工場のKPIを見える化、分析、改善を行う。
ヒトとモノの動きをシミュレーションし、工場のKPIを見える化、分析、改善を行う。
プラントシミュレーションとは、パソコンの中に工場を作成し、その工場を動かしてみるというものだ。

製品設計をする場合は、実物大の試作品を作成し実際に使用してみて、動きや性能を確認することができるが、工場を建設したり改善したりする場合、試しにやってみるということはなかなか出来ないだろう。そこで、プラントシミュレーションを使うことでパソコン上で試してみようということだ。

プラントシミュレーションを利用することで、製造の面から競争力を強化できるほか、製造計画が正確になることが価値としてあげられる。

プラントシミュレーションの活用シーン

工場を新設する場合から、日々の改善までプラントシミュレーションを使用するシーンは幅広い。
工場を新設する場合から、日々の改善までプラントシミュレーションを使用するシーンは幅広い。
小林氏は、プラントシミュレーションの主な活用シーンとして3パターンがあるとした。

工場を新しく建てる時

1つ目は工場を新設する時だ。工場を新設する場合、サプライチェーンを含めて検討する必要がある。プラントシミュレーションでは、外部も含めたサプライチェーンを検討することができる。

サプライチェーンを検討したあとは、工場の構内物流を検討する。

いきなり細かい製造工程がわかっていなくても、概要の工程をデジタル工場内に配置してシミュレーションを行い、ラインの構成や生産方式が決まったタイミングでシミュレーションに反映していくことで改善を行っていくという活用の方法だ。

定期的なシミュレーションを行う時

2つ目は、すでに稼働している工場で定期的なシミュレーションを行う時だ。生産ラインの変更や、既存の生産ラインで別の製品を生産したい時にプラントシミュレーションを活用し検証を行う。新しい製品を作る時に、既存の製品の製造がどのくらい落ち込んで、新しい製品がどのくらい作れるかということをデジタルの工場を使って検証するという使い方だ。

工場がすでにあるので、設備のパフォーマンスは実際の工場から吸い上げてくることで、デジタル工場の設備の性能と実際の設備の性能を一緒にすることが出来る。

現場のデータを活用し、計画の精度を上げてシミュレーションを行うという活用方法だ。

日々の改善を行う時

3つ目は、日々の改善を行う時だ。明日どうするかということを改善する。

明日作らなくてはいけない生産計画に対し、生産量が一番上がる生産順序はどうか、段取り替えが一番少なく生産量も確保できるロットサイズはどのくらいかということをシミュレーションで検証を行う。

シミュレーションによって導き出された解を基に、翌日の生産を行うという活用の方法である。

その他、最近の利用方法のトレンドとして、生産計画の最適化や、物と情報の流れを明確にしムダを排除するバリューストリームマップ等があるとした。

未来の可視化

プラントシミュレーションとMotionBoardを組み合わせることで、未来を可視化できる。
プラントシミュレーションとMotionBoardを組み合わせることで、未来を可視化できる。
小林氏は、ウイングアーク1st株式会社のBIツール「MotionBoard」と連携することで未来の可視化ができるとした。

プラントシミュレーション側から見るメリットとして、KPIの標準化があるという。プラントシミュレーションを行った結果、最終的に見たいものはBIツール上に表示されるグラフである。

KPIを計測する上で厄介なのは、経営層や上司からあるデータが見たいと言われた時に、人によってデータを集める場所が違ったり、データが同じでも集計の仕方が違ったりすることがある。全く違うデータを同じ様に見せることが出来てしまうのだ。

データの収集方法、集計方法を統一しないと、KPIとしての意味がなくなってしまう。プラントシミュレーションとMotionBoardを連携することで、どこからデータを収集するかということと、収集したデータをどの様に集計するかということを明確にできるので、KPIを標準化させる事ができるとした。

現場での活用事例

ドイツ自動車工業会では、自動車生産における標準的な工程をライブラリ化している。
ドイツ自動車工業会では、自動車生産における標準的な工程をライブラリ化している。
実際に様々な業種でプラントシミュレーションが活用されているという。小林氏はその中でいくつかの事例を紹介した。

ドイツ自動車工業会

ドイツ自動車工業会で、プラントシミュレーションが標準ツールとして採用されている。ドイツ自動車工業会には、ドイツの自動車関連のメーカーが600社以上参加している。自動車メーカーが新たに工場を建設する時や新規に生産ラインを設置する時に、シミュレーションで事前に検証を行うことになっている。

特に良い使い方として、ドイツ自動車工業会がライブラリを作成しているということがある。プラントシミュレーションそのものにも標準のライブラリがあるが、自動車を生産することに特化した工程をライブラリとしてドイツ自動車工業会が予め用意することで、シミュレーションの使用を促進している事例だ。

BMW

BMWは、ドイツの脱原発政策に応じ、消費電力をシミュレーションすることで、コストとCO2の削減を実施した。

この様に生産性以外に着目してシミュレーションすることができるようになってきているという。

小林氏は最後に、「工場には、いきなり良い工場を建設しなければならないという課題がある中で、デジタルの工場を活用することでこうした課題を解決して欲しい」と語った。

参考:このイベントの他の記事は次のリンクから見ることができます。
株式会社マクニカのウェビナー「コロナ禍に挑む! 製造業が勝ち抜く為のデジタルツイン活用術 〜事例と具体的なアプローチ方法〜」

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