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農研機構・立命館大学・デンソー、自動果実収穫ロボットのプロトタイプを開発

現在、日本の果樹生産者の年齢構成は60歳代が最多となっており、今後さらなる高齢化が危惧されている。このような状況を打破するため、少ない人手で産地を維持できる画期的な省力生産技術、また、若い生産者の関心を引く魅力ある果樹生産技術の開発が強く求められている。

そのためには作業の機械化が必須だが、果樹は樹形が立体的(3次元)で複雑なため、受粉、摘果、収穫、整枝・せん定など多くの作業が手作業に頼らざるを得ないことから、機械化が非常に遅れているのが現状である。

しかし、近年は自動車の自動走行や各種ロボット、AI技術の開発と低価格化など関連技術の進歩が著しく、果実収穫といった複雑な作業においてもこれらの革新的技術を取り込んだ機械開発の可能性が見えてきたという。

そこで、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(以下、農研機構)が代表を務める「革新的技術開発・緊急展開事業(人工知能未来農業創造プロジェクト:AIプロ)」では、機械化を推進するために樹種共通で樹形を可能な限り平面に近づけるV字樹形(※1)などの列状密植樹形(※2)の開発(果樹側からの機械化への歩み寄り)及び、同樹形を前提に様々な作業に利用できる自動走行車両、自動薬剤散布システム、自動草刈りシステム、さらにリンゴ、ニホンナシ、セイヨウナシの収穫ロボットの開発を両輪として研究を進めてきた。

このほど、農研機構、立命館大学、株式会社デンソーは、V字樹形のリンゴ、ニホンナシ、セイヨウナシを対象とした果実収穫ロボットのプロトタイプを開発した。

今回開発した収穫ロボットのプロトタイプは、自動走行車両にけん引されながら、2本のアームにより果実の収穫を行う。ニホンナシでは成熟期に達した果実のみを判定した上で収穫する。収穫した果実は自動走行車両の荷台に設置した自動収納システムに送られる。自動収納システムでは、コンテナに果実が一杯になると、空コンテナと自動で交換しながら自動収穫を継続する。人による収穫(11 秒/個)とほぼ同じ速度で収穫することができる。

このような果実の収穫作業を自動化するには、その開発要素として大まかに2つの要素がある。1つは収穫機構を含むハードの開発であり、もう一つは果実を認識する機能の開発である。

収穫ロボットのハード開発では、まず、果実を傷つけずに収穫する機構が必要になる。果実の着果形態は樹種によって異なり、リンゴ、ナシ、セイヨウナシなどは手で容易に収穫できるが、カンキツ、カキ、ブドウなどは収穫にハサミが必要となる。このため機械収穫が容易であると想定されたリンゴ、ナシ、セイヨウナシを対象とした収穫ロボットを開発した。

果実を把持するためのハンドは3つの爪で構成され、果実を傷つけない程度の把持力で果実を掴みながら、ハンドの回転により収穫する機構を開発した。収穫した果実は、自動走行車両の荷台に設置された果実収納コンテナシステムに送られ、コンテナが一杯になると空コンテナと自動で交換されるシステムとした。

収穫用ハンドにより果実を収穫するためには、果実の認識、その果実が収穫可能かどうか判断、果実の着果位置の把握、を経てハンドを果実の位置まで駆動させる必要がある。果実の認識および熟度判定については、可視画像撮影と距離計測が可能なRGB-Dカメラ(※3)による可視画像を用いた人工知能手法(ディープラーニング)により行った。

その結果、果実認識およびニホンナシの熟度判断について日中、夜間に関わらず90%以上の精度が得られた。また、果実の着果位置の把握についてはRGB-Dカメラにより距離計測を行っている。さらに収穫ロボットの開発目標である収穫スピードを人と同程度(11 秒/個)以上とするため、収穫アームを2本とし、2アームのマニピュレータ・ハンドシステムが互いの軌道を理解し、アーム同士が接触しないように軌道計画を行うアルゴリズムを構築した。

このことにより、人とほぼ同程度のスピードでの果実収穫が可能となった。さらに、収穫ロボットは自動走行車両にけん引されながら果実収穫を実施するため、収穫が終了した場所から次に収穫する果実が着果している場所まで移動する必要がある。この移動については、自動収穫ロボットに取り付けたカメラ画像・距離画像から次に収穫する枝の果実を認識し、車両の移動量を指示することにより車両が自動移動し、樹冠下の最適な位置から自動収穫を行うシステムを開発した。

なお、収穫ロボット開発では立命館大学が果実認識、収穫時期判定などのソフト開発を、株式会社デンソーが収穫ロボットのハード開発を担当している。

※1 V字樹形:樹の形が「V」の文字に見える樹形の総称。
※2 列状密植樹形:植栽が列状で樹間隔が密植となる樹形の総称。V字樹形も含まれる。
※3 RGB-Dカメラ:映像の奥行きが測定できるカメラ。カメラから対象物までの距離が測定できる。