近年、5GやEV、自動運転などで使用される電子基板の需要が急増し、これらの用途は人命に関わることもあることから、基板の品質要求が一層高まってきている。また、基板の高密度化、微細化が進むことで検査難度が上がり、従来の基板外観検査装置でははんだの形状を的確に撮像することが難しく、検査範囲や項目に限界が出てきている。
一方、製造現場では、熟練者不足など人手不足が深刻化する中、新型コロナウィルス感染症対策として、製造現場における密集・密接回避や移動制限が求められている。そのため、検査精度の進化に加え、人による目視の削減や、外観検査装置の設定や立ち上げ時の熟練者の経験や技能を「スキルレス化」することが急務になっている。
オムロン株式会社は、電子基板の高精度な外観検査をスキルレスに自動化する、撮像技術とAI搭載の基板外観検査装置「VT-S10シリーズ」を2021年8月5日からグローバルで発売する。
同製品は、オムロン独自のMDMC(Multi Direction Multi Color)照明を活用し、基板や部品のより高精度な検査を実現する撮像技術を開発した。照射角度、色、光量を自在に制御することで、従来の撮像方式に比べ、はんだの形状がより正確に捉えられることに加え、隣接する背高部品の影の影響排除や基板上のパターンや部品面上の印字を正確に捉えることが可能となった。これにより、設定工数を約70%削減できたという。
また、これまで積み上げてきたはんだ形状検査に関する知見に加え、MDMC照明により獲得した画像を活用し、はんだ検査に特化したAIを開発した。このAI検査とMDMCによる定量検査を組み合わせることで、ティーチングスキルの低減と見過ぎ削減を両立することに成功した。ある企業との実証実験では、目視工数を85%削減することが確認できた。
さらに、他社製造設備とデータ連携することで、品質傾向を把握し未然に不良発生を防止することが可能なほか、各工程の検査結果を数値・画像含めデータ化することで品質の見える化が可能だ。ある企業とのM2Mシステムを用いた実証実験では、品質バラツキを不良発生前に検知・対処することで、不良発生率を50%以上削減することに成功した。
加えて、最終工程の検査結果から印刷後、マウンタ後工程の検査基準を自動最適化することで、直行率が向上するとのことだ。
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