「地域らしい」まちづくりとデータ連携への取り組み ーNEC 服部 美里氏

・本記事は、IoTNEWSが主催するDX情報収集サービスDX勉強会において、日本電気株式会社 スーパーシティ事業推進本部 事業共創G シニアマネージャー 服部 美里氏に、ご講演いただいた内容である。

日本電気株式会社(以下、NEC)は、日本の地方が抱える、人口の減少や財政難などの課題に対して、デジタルを活用することにより解決できると考えているとし、コロナの影響で生じた生活の変化、例えば、学校での学びの継続や病院へ通院できないなどの事象については、デジタルの遅れが露呈した事例だと指摘した。

本記事では、NECが考える「世界に誇れる『地域らしい』まちの進化」をビジョンに掲げたスーパーシティの概要とスマートシティ実現のために取り組んだ事例を紹介する。

NECが考えるスーパーシティとは

NECは、スーパーシティをスマートシティの特別版と捉えている。スーパーシティは、内閣府が、2020年5月に可決した「国家戦略特別区域法」の改正法案、通称「スーパーシティ法案」に基づき、10年先のより良い生活を先行的に実現する「まるごと未来都市」を作っていくものだ。

スマートシティのプロジェクトは、各所で取り組まれているが、実証の段階から脱していないのが現状である。

一方で、同社 スーパーシティ事業推進本部 事業共創G シニアマネージャー 服部 美里氏(以下、服部氏)は「スーパーシティを実現することにより、スマートシティの社会実装は一気に進むと期待している」とした。

国の政策によるスーパーシティの条件

服部氏は「国の政策によるスーパーシティの条件は、生活全般にまたがる複数分野の先端的サービスの提供とそのためのデータ連携基盤、および大胆な規制改革である」と述べた。

現在、特区法だけではなく政府全体でもスーパーシティのプロジェクトへの重点投資を示しており、2021年6月18日に閣議決定された国家戦略では、スマートシティを2025年までに100都市で実装していくと記載されている。

スマートシティ社会実装のための重点施策

スマートシティを社会実装するための重点施策
NECは、スマートシティを社会実装するための重点施策として「都市経営サービス」、「共創プロセス」、「分野間データ利活用」の3点を挙げた。
NECは、2021年4月にスーパーシティ事業推進本部を設立した。スーパーシティ事業推進本部が重要視していることは、地域に密着した実行体制を敷くことだ。具体的には、全国114拠点にあるNECグループの「営業」や「開発・保守」などの部門と連携しながら地域に寄り添うサービスを提供するということだ。

服部氏は、スマートシティが社会実装するための重要施策として、以下の3つを挙げた。

  • 効果検証に基づく「都市経営サービス」
  • 住民を中とした「共創プロセス」
  • 暮らしに寄り添う「分野間データ利活用」

経済基盤の活性化「都市経営サービス」

NECは、地域を都市経営という観点で見ており、歳出削減や歳入拡大などのマネタイズ部分について、地域の自治体に対し改善を促していくとしている。

「経営効率化することで歳出削減・歳入拡大し再投資を行う。このサイクルを回すことによって財源を確保し、地域の活性化を図る事ができないかと考えている」と服部氏は述べた。

住む人集まる人のQOL向上「共創プロセス」

NECは、住む人や集まる人のQOL向上を図る上で住民を中心とした「共創プロセス」が重要であるとし、その中でも市民との対話を重要視している。

NECは、北海道にある更別村(さらべつむら)と共に活動をしている。その経緯として服部氏は「地域住民との対話を大切にしている自治体とNEC独自のテクノロジーが融合することにより、イノベーションを起こすことができるのではないかと考えたのがきっかけ」と述べた。

更別村では、自治体の方が地域の高齢者に対して「困りごと」をヒアリングし約100件ほどリストアップしており、その内容をもとにNECと自治体や関連企業とで潜在ニーズ発掘、地域課題に関する仮説検証を行った。

「困りごと」の中に、更別村が雪国ということ、高齢者の方々の身体的な制約から、冬は「おっくう」だという声があった。そこでNECでは、どうすれば「おっくう」な気持ちが晴れて前向きに生活ができるのかについて仮説立てを行い、仮説立てした内容を高齢者に対してヒアリング、検証しコンセプトの立案を行った。

地域特有課題の解決「分野間データ利活用」

NECでは、分野間でのデータ利活用が地域の課題解決につながるのではないかと考えている。

「分野間データ利活用」のユースケース例は、以下の2つである。

  • いつでもどこでもライフサポート
  • 地域経済を活性化するスマートツーリズム

ユースケース1:いつでもどこでもライフサポート

更別村の自治体がリストアップした約100件の「困りごと」の中には、医療と健康に不安を感じるとの意見があった。

NECでは、医療データ、防災データ、観光データなどを横断的に利活用することによって、医療の面で支援できないかと考えている。例えば、旅行先で怪我をした場合、本人の同意があれば、かかりつけの病院から旅行先の医療機関に対して、医療データの情報提供が行える。

ユースケース2:地域経済を活性化するスマートツーリズム

NECは、地域経済の活性化において、観光による歳入拡大が重要だと考えている。特に観光では、団体というより個人でそれぞれ好きな所を巡りたいというニーズがトレンドであると捉えている。

観光客がスマートツーリズムのサービスを活用した場合、旅行前に周遊プランと交通情報を掛け合わせたプランの作成が行え、旅行中では、天候に応じて臨機応変にルートを変更できる。さらには、データを利活用したデジタルマーケティングによる旅行後の振り返りや今後のレコメンドにより旅行客のリピート率を向上し、地域経済に活性化に繋げる。

NEC都市OSとFIWARE

NECが提供する都市OS
NECが提供する「NEC都市OS」は、スマートシティを実現するために必要なFIWAERを活用したデータ利活用基盤サービスやパーソナルデータ利活用サービスを備えたデータ連携基盤などの共通機能が揃ったクラウドサービスである。
服部氏は、データ利活用を実現するための施策として、「NEC都市OS」を挙げた。

「NEC都市OS」は、NECが2021年9月8日に発表したスーパーシティ、スマートシティを実現するために必要なFIWAERを活用したデータ利活用基盤サービスやパーソナルデータ利活用サービスを備えたデータ連携基盤やAI、生体認証、ID連携、フルレイヤーセキュリティなどの共通機能が揃ったクラウドサービスである。

地場の企業でも「NEC都市OS」を活用することにより、データ連携基盤などを0(ゼロ)から構築する必要がなく簡単にスマートシティの取り組みを始めることができる。

FIWEREとは

FIWAREは、欧州委員会が官民連携プログラムで開発・実証したIoTプラットフォームだ。2011年から5カ年で約400億程度の予算をつけ開発されたものである。

FIWAREは、アプリケーションの開発や普及を支えるソフトウェアモジュールの集合体である。ソフトウェアモジュール群の例は以下の通りであり、FIWARE Foundationにより日々更新されている。FIWARE Foundationとは、FIWAREの普及を民間主導で推進する非営利団体である。

  • データ管理
  • ビッグデータ解析
  • イベント検出
  • デバイス管理
  • 認証
  • オープンデータ連携

FIWAREのソフトウェアモジュールは、自由に組み合わせ活用できる。組み合わせるにあたっての共通インターフェース(NGSI)が定められており、APIを活用することで、FIWARE以外のパーツとの組み合わせも行える。服部氏は「ブロックを積み上げるように都市の基盤を作っていくことができる」と述べた。

FIWAREの活用は、世界中に拡大浸透している。具体的には、993企業、24カ国117都市だ。その中で、NECが実際にFIWAREを実装した都市は、海外6都市(スペイン、ポルトガル、イギリス、インドの関連都市)、国内5都市(高松市、加古川市、富山市、静岡県、新居浜市)だ。

NECが提供している先端的サービス

NECが提供している先端的サービス
NECには、災害の変化に即応してリアルタイムに必要な防災情報を提供するサービスと感染症リスクを低減し安全で快適な周遊を提供するサービスがある。
服部氏は、NECが提供する先端的サービスとして「防災」と「観光」について紹介した。

先端的サービス1:「防災」

NECには、「NEC the WISE」というAI技術ブランドがあり、そこでは、河川の水位分析やASNARO-2と呼ばれる衛星を活用した地象状況の解析、スーパーコンピュータを活用し津波による浸水被害をシミュレーションしている。「将来的には、量子コンピュータを活用し全体最適ができないかと検討している」と服部氏は述べた。

先端的サービス2:「観光」

NECの生体認証を観光の分野に活用することにより、顔認証をタッチレス操作で決済などが行え、マスクを着用したまま周遊できるサービスを展開している。そのことにより、コロナによる感染症リスクを低減する。

スマートシティの事例

NECは、すでに13箇所の自治体とFIWAREの実装を含めたスマートシティプロジェクトを共創している。さらに先日、内閣府によるスーパーシティ構想のエリア公募では、31団体の自治体が提案した、その中で17団体の自治体からNECに対して声がかかり共創を開始した。

NECが富山市と共に行った、スマートシティプロジェクトの事例を紹介する。

スマートシティの事例:富山市

NECが取り組んだ富山市においての事例
NECが取り組んだ富山市においての事例として、産官学民連携を強化し様々な世代、立場の人々が地域内で共生していけるまちづくりの紹介が行われた。
NECは、富山市の居住地域99%をカバーするLPWAネットワークを構築し、その上でFIWAREのプラットフォームを実装した。

富山市では現在、地場の企業によってデータ連携によるサービスの実証を行っている段階である。そのうちの一つが、小学生にGPSセンサーを持たさせることで、通学のルートを見守るサービスだ。同サービスの実証を行っている中で、小学生の通学は行きと帰りでルートが変わるとわかった。

特に帰宅ルートでは、自宅までの最短ルートを通るのではなく、駐車場などに寄り道しながら帰宅するというデータが取れた。そのデータを活用し、学童の設置など政策決定のエビデンスとして活用している。

その他、富山大学にデータサイエンス寄附講座を開設し、全学部の学生に対してデータサイエンスを履修することができる環境を用意した。そのことにより、データ活用ができる人材の地産地消を目標に取り組んでいる。

NECは、内閣府により戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の実証を富山市と高松市に対して行なった。同実証は、民間事業者を含む都市内の異なるシステム連携による分野横断サービスの実証研究である。

同実証では、富山市で実証した観光MaaSサービス「おでかけコンシェルジュ」を高松市に対し、データモデルとプラットフォームを統一させることで、そのまま横展開することができた。

「おでかけコンシェルジュ」とは民間事業者含む都市内の異なるシステム連携による分野横断サービスである。同サービスは、旅行者に対して、目的地以外への寄り道を促し 、回遊機会を増やすことで地域消費の増加を狙うサービスだ。また、同サービスを利用する事で集められるデータは、サービス向上やまちづくりへの反映に利用される。

NECが取り組む海外の活動

NECは、2012年から欧州やインドの一部に対して、スーパーシティの事業を進めてきた。今後の注力地域として、インド、ASEAN、豪州に対して拡大していくとした。

最後に服部氏は、「スマートシティの社会実装は、NECとパートナー企業が協力し一丸となることで実現できるものだと考えている。2025年までには、全国200都市に対しての展開を目標としている」と述べた。

IoTNEWSが提供するDX情報収集サービス

IoTNEWSでは、このような勉強会を含んだDX情報収集サービスを提供している。DXを行う上で必須となる、「トレンド情報の収集」と、「実戦ノウハウの習得」を支援するためのサービスである。

本稿は勉強会のダイジェスト記事だが、実際の勉強会では、IoTやAIの現場を担当している有識者からさらに深い話を聞くことができ、直接質問する事ができる。勉強会以外にも、株式会社アールジーンのコンサルタントが作成するトレンドレポートの提供や、メールベースで気軽な相談が可能なDXホットラインを提供している。

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