NTTグループ、データ主権を保護できるデータ流通プラットフォームの実現に向けた取り組みを開始

カーボンニュートラルの達成や資源循環社会の実現などの課題解決が持続可能な社会をめざす上で広く求められている。その際に必要となるのが、企業や組織間で安全にデータを流通するための仕組みである。例えば、カーボンニュートラルの達成において、グローバルバリューチェーンのCO2排出量を算出するには、データが改ざんされることなく、信頼性が保証され、組織間で相互に排出量データを流通できる仕組みが必要となる。

しかし、特定の国や地域のポリシーを反映したデータ流通プラットフォームを構築した場合、各国や地域の商習慣や法規制が異なるため、一部の国や地域での利用に限られ、相互にデータを流通させることが困難となることが想定される。その解決策としてさまざまな企業や団体と連携し、相互にデータを流通できる仕組みの検討を進めている。

企業や組織間における安全なデータ流通を実現するために注目されているのが、欧州のデータ流通構想をまとめた「Gaia-X」である。Gaia-Xは、2019年10月にドイツ政府・フランス政府が発表した、セキュリティとデータ主権を保護しつつ、データ流通を支援するためのデータ流通構想である。

ドイツの自動車メーカーやIT企業は、Gaia-Xで提唱される主要な技術の1つである「IDS」を用いて、自動車メーカーなどが運営するデータ流通プラットフォーム「Catena-X」をドイツ国内に構築している。自動車業界の企業1,000社が相互かつ安全にデータを流通することが可能なプラットフォームであり、今夏にサービス提供を開始する予定だという。

今後、ドイツの自動車関連企業と取引する日本企業も、Catena-Xを利用したデータ流通を求められることが想定される。しかし、日本企業がCatena-Xでデータを流通する場合、欧州のポリシーでデータが管理されることになり、日本のポリシーでデータを保護することが困難になる。そのため、欧州のデータスペース(単一のポリシーで管理されるデータ空間)と相互接続でき、日本のポリシーで安全にデータを管理できる仕組みを実現することが課題となる。

NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)と株式会社NTTデータは、日本電信電話株式会社(以下、NTT)が提供する技術および、Gaia-Xに関するこれまでの取り組みで獲得した知見をもとに、Catena-Xと相互接続が可能な新たなデータ流通プラットフォームの開発に取り組むことを発表した。NTTは、ハードウェア暗号化技術(※1)を活用しデータとそれを分析するプログラムを秘匿したまま計算できるセキュリティ技術などを提供し、同プラットフォームの実現を支援する。

同仕組みの実現に向け、企業間の安全なデータ流通を必要とする業界団体や企業とともに知見獲得を目的とした試験や、基盤の構築、技術の開発を行った。詳しい内容は以下の通り。

  • DAPS間接続試験
  • IDS準拠のデータスペースの必須機能であるデータ交換用ソフトウェア「IDSコネクター」とIDSコネクター認証システム「DAPS」を実装し、同様の機能を実装した「SCSN」(※2)と相互接続した。これにより、各国それぞれのポリシーでDAPSとIDSコネクターを管理しデータ主権を保護することが可能となる。

  • グリーン分散エネルギー情報流通基盤の構築
  • グリーン分散エネルギー情報流通基盤の構築を開始し、DER(分散型エネルギー)データの共有流通機能の実証を行った。送配電事業者および需要家のデータを相互に開示することなく、電力系統全体の安定供給に向けたデータ処理を実現するという。

  • セキュリティ技術の開発
  • ハードウェア暗号化技術を用いて、複数の提供者が所有するデータならびにそれを分析するプログラムを秘匿したままデータを処理可能なプロトコルを確立した。また、暗号化された隔離コンテナ環境で任意のプログラムを実行できることも特長だ。

    これらを、データ主権を保ったまま高速かつ安全に分析を実現できるデータサンドボックス技術として開発した。同技術により、データ流通プラットフォームの利用者は、機微な情報の漏えいを心配することなく重要なデータやプログラムを企業や業種の壁を超えて相互に持ち寄り、価値の創出・連鎖が可能になるとのこと。

    NTTグループ、データ主権を保護できるデータ流通プラットフォームの実現に向けた取り組みを開始
    データサンドボックス技術
  • 空力特性に関するデータ流通試験
  • NTT Comの「Smart Data Platform」上に「withTrust」(秘匿性の高いデータを安全に流通させる仕組み)などを用いて構築したデータ流通プラットフォームのプロトタイプを介して、宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)の協力のもと航空機の空力特性に関するデータを、JAXAの日本拠点からNTT Comの欧州拠点にセキュアにデータを流通することに成功した。

NTTグループ、データ主権を保護できるデータ流通プラットフォームの実現に向けた取り組みを開始
データ主権を保護できるデータ流通プラットフォームの全体像
※1 ハードウェア暗号化技術(TEE):CPUに備えられた暗号化機能で計算処理中のメモリの内容も含めて暗号化することによって、データ処理中の機密情報が他者から参照されることを防止する技術。
※2 SCSN(Smart Connected Supplier Network):オランダで提供される製造業におけるサプライチェーン情報を交換するためのネットワーク。

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