Nordic Semiconductor CEOメッセージ:2022年へ向けたNordicの市場予測と戦略

1. 2021年にNordicが遭遇した課題と可能性はどのようなものでしたか。

パンデミックが社会と世界経済にもたらした世界的な影響は、同様にNordic Semiconductor(以下、Nordic)の組織と運営にも及ぶものでした。困難を極めたこの年にNordicが注力したのは、まず何よりもスタッフの身を守ること、その次にお客様やサプライヤー、パートナーのビジネスの継続性を保証することでした。

新型コロナウイルスは世界全体に対して非常に大きな悪影響を及ぼしました。しかしポジティブな側面としては、これまではニッチなエリアとして認識されていた技術分野が、主要な分野へと劇的な進化を遂げるための推進力になったことです。たとえば、オンラインショッピングの急速な拡大や、全世界への莫大な数のワクチンの輸送ニーズなどにより、物流やアセットトラッキング、位置情報サービスの分野の技術が進歩しました。またこのパンデミックがきっかけとなり、ウェアラブルデバイスやコネクテッドデバイスに対する世間の関心が大幅に高まりました。

これらのデバイスは、最初のうちは新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するためのソーシャルディスタンスや接触追跡を支援するものでしたが、現在では他の新たな用途に利用されるようになっています。これらの分野に加え、Nordicのテクノロジーは2021年に急速に発展したその他の分野でも数多くの革新的な製品設計に採用されており、その結果、Nordicの収益は過去2年間で2倍となっています。

しかし、新型コロナウイルスはNordicにも課題をもたらしました。たとえば、半導体チップの供給に遅れが生じた結果、製造リードタイムが長くなるという問題が起きています。この影響を最も強く受けているのは医療やスマートホーム、アセットトラッキング、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)といった急拡大中の分野ですが、供給の問題はあらゆる分野に影響を及ぼしています。Nordicの社員たちは、サプライヤーに対しては在庫を増やすため、お客様には対しては部品不足の解消のため、あらゆる努力を重ねてきました。状況は改善しつつありますが、リードタイムが正常に戻るまでには数ヵ月かかると思われます。

2. 2022年の市場について、Nordicではどのように予測および期待していますか。

IoTは急激に拡大しています。たとえば、IoT Analyticsの分析によれば、2021年末までにIoTに接続されたデバイス数は約123億に上ると報告されており、2025年にはその数は270億に到達すると言われています。Nordicではこの成長は、インダストリアルIoT(IIoT)や物流、スマートホーム、医療、小売、コンシューマー、教育など、幅広い産業セクターにおけるものと考えています。

IoTの成長を促進する「メガトレンド」としてNordicが考える分野は具体的に3つあります。「インダストリアルIoT」、「サステナブル(持続可能な)ソリューション」、そして「プラットフォームエコシステム」です。

「インダストリアルIoT」は、あらゆるモノをつなぐことで産業を変革します。つながることで、製造環境における安全性や生産性、品質、イノベーションが加速します。センサーとゲートウェイが、物理的な世界からのデータをクラウドコンピューティングやAI/機械学習(ML)のデジタル世界へ供給します。そこでそのデータが分析されて、製造プロセスの最適化につながる実用的なインサイトが生み出されます。最後に、そのインサイトによりプロセスがより効率的なものに修正されます。この一連の流れが、好循環を生み出していくわけです。

「サステナブル(持続可能な)ソリューション」も同様に、無線技術に依存しています。Nordicは、グローバルサプライチェーンのCSR(企業の社会的責任)を専門に取り扱う世界最大の業界連合、Responsible Business Alliance(RBA)のメンバーです。RBAやその他のイニシアティブのメンバーとして、Nordicは国連が提唱する17の持続可能な開発目標の実現に役立つ技術の開発に取り組んでいます。また、持続可能な開発をするための課題の解決にお客様がIoTを活用できるよう、支援に取り組んでいます。Nordicのテクノロジーは、空気や水の浄化、二酸化炭素排出量の抑制、森林破壊問題への取り組み、絶滅危惧種の保護に役立っています。そのほか、障がいを持つ子どもたちへの教育や農産物収穫量の増加、手頃でクリーンなエネルギーの供給などにも役立っています。

「プラットフォームエコシステム」とは、接続される複数のソリューションを、協調し合う1つのソリューションにまとめるテクノロジープラットフォームです。たとえば、照明やサーモスタット、空気質モニター、セキュリティデバイスなど、スマートホームに設置されるすべてのデバイスからデータをクラウドに送信することで、自宅をより安全でエネルギー効率の高い、快適な場所とすることが可能です。このようなエコシステムは多くの場合、企業間の競争ではなく協力により成し遂げられます。企業同士が協力することでイノベーションが育成され、高度なテクノロジーがより短期間で主流となり、消費者に利益をもたらすのです。

そのような「プラットフォームエコシステム」の一例がMatterです。MatterはAppleやAmazon、Googleといったコンシューマー市場の大企業と、Nordicなどのテクノロジーサプライヤーとの間で策定されたイニシアティブで、無線デバイスとプラットフォームとの間の複雑さを軽減し相互運用性を確保することで、エンドユーザーの生活をより快適にすることを目的としています。Nordicは、Matter規格の策定に積極的に携わっています。またNordicは、Connectivity Standards Alliance Member Group China(CMGC)のメンバーでもあり、中国におけるMatterの推進にも取り組んでいます。「プラットフォームエコシステム」のもうひとつの例がAmazon Sidewalkで、Nordicのスマートホームの無線技術を自宅圏外の領域まで拡張し、ペットや鍵、財布などのモノの追跡に役立てるというものです。

Nordicは「スマートなモノ」への超低消費電力無線接続を実現するという専門技術を通じて、このようなメガトレンドがもたらす課題へ対応できる理想的なポジションにあります。物理的な世界とデジタル世界をつなぐためには、Nordicの高性能な接続ソリューションが必要です。その専門知識を得るため、Nordicでは人材、特にエンジニアに投資をしてきました。この数年でNordicは急速に成長し、現在の従業員は1,150名を超えます。そのうちの70%は製品の研究開発に従事しており、それにより推進されるイノベーションはNordicの未来の成長を支えると考えています。

この投資の結果、Nordicは、一般に普及している近距離無線技術であるBluetooth Low Energy(Bluetooth LE)において市場をリードする存在となるとともに、他の近距離無線技術のThreadやZigbeeなどのトップサプライヤーにもなりました。Nordicはまた、新たに台頭するセルラーIoT市場でも優位なポジションにあります(セルラーIoTは省電力広域ネットワーク(LPWAN)向けの主要な技術であり、IoTには不可欠なものです)。NordicではImagination Technologies GroupからのWi-Fi IPと専門知識の買収に続き、IoTアプリケーション向けのWi-Fi 6(最新バージョンのローカルエリアネットワーク(LAN)無線技術)チップの開発も行っています。Nordicの幅広い製品およびソリューションのラインナップに、高性能な低電力ICや多機能な組み込みソフトウェア、幅広い開発ツールが加わることで、NordicはIoT技術のグローバルリーダーとなります。

Nordicでは、当社初の電源管理IC(PMIC)もリリースしました。この製品は、Nordicの近距離無線SoCを完全に補完する設計となっており、IoTデバイスへの電力の供給だけでなく、無線製品のバッテリーチャージにも利用できます。PMICによってバッテリー寿命が延びるため、エナジーハーベスティング機能を用いるデバイスの設計が非常に容易になります。このように、Nordicは無線設計を強化するだけでなく、エンジニアがバッテリーの製造と廃棄の削減が求められる持続可能なソリューションを設計する上でも役立つ存在となっています。

Nordic Semiconductor CEOメッセージ:2022年へ向けたNordicの市場予測と戦略

3. 2022年の日本の市場について、Nordicではどのように予測および期待していますか。

日本では、民生用途から産業用途まであらゆるものにBluetooth LEが使われており、医療機器や電動工具など、すべてのものにBluetooth接続が組み込まれています。主な差別化要因となるのは、リモート監視、トラッキング、そして使いやすさです。商用LED照明の分野においても、Bluetoothと独自のメッシュソリューションが成熟しつつあります。

ネットワーク事業者によるセルラーIoTへのサポートの展開にともない、市場でもLTE-MとNB-IoTの採用が進んでいます。セルラーIoTテクノロジーをベースとしたリモート監視や産業オートメーション、早期警報システムなどが今後増えてくると思われます。従来からある近距離用途においても、既存の無線技術がLTE-MやNB-IoTに置き換えられるものも出てくるでしょう。

4. Nordicの業界で2021年の最も重要なニューアイテム、および市場に及ぼした影響についてお聞かせください。

新型コロナウイルスによってIoTが新興から主流のテクノロジーへ加速したと、Nordicでは考えています。さらに、パンデミックがきっかけとなり、それまでニッチなソリューションと考えられていたテクノロジーが取り入れられるようになりました。これらのテクノロジーが進歩したのは、デジタル医療や在宅勤務、アセットトラッキング、ゲーム、仮想現実(VR)/拡張現実(AR)といった分野の市場の拡大によるものです。

IoTは今、我々の生活や働き方、遊び方までも完全に変えようとしています。その例は実に多くのものがあり、たとえばクラウドソーシングによる感染予測、血糖値の監視、ワクチン配送のトラッキング、温室効果ガスの削減、アフリカの絶滅危惧動物の保護など、実に多種多様な用途でIoTはすでに活用されています。またAIや機械学習(ML)の活用により、以前は不可能であった、自律「知能」のIoTへの適用にも手が届こうとしています。

Nordicのソリューションは、これらの用途の多くで活用されています。最近の例としては、中国のIoT企業、LEEDARSON社が開発した、コネクテッドデバイスや音声コマンドで制御可能なBluetooth LEやThread対応のスマート電球があります。このA1調色・調光白色電球は従来の電球の代わりとなるもので、一般家庭や商業ビルでも利用でき、無線接続用にNordicのnRF52840 SoCを内蔵しています。ネットワークに接続すると、Threadを用いてスマートLED電球を無線制御できます。Threadは、交流電源を用いたデバイス(スマート照明など)を含む低電力・低帯域幅のネットワーク用途向けに設計された無線プロトコルです。

Nordic Semiconductor CEOメッセージ:2022年へ向けたNordicの市場予測と戦略

Nordicを活用したもうひとつの例がNOLO Sonic VRです。これは2つのインタラクティブなコントローラーを備えたVRヘッドセットで、それぞれにNordicのnRF52833 SoCが内蔵されています。Nordicのテクノロジーにより、コントローラーからヘッドセットデバイスへのデータ伝達に、低レイテンシ(10ミリ秒未満)でのBluetooth LE接続が実現するとともに、コントローラーの振動モーターのデータ処理に必要な処理電力の供給も行います。

Nordic Semiconductor CEOメッセージ:2022年へ向けたNordicの市場予測と戦略

また医療分野においては、EOFlow社がインスリン注入ポンプに代わる低価格な製品として、EOPatchインスリン管理システムを発表しました。この製品はウェアラブル(3日半まで装用可能)な使い捨て型のインスリン注入システムで、NordicのnRF52832 SoCを内蔵しています。EOPatchを装着して起動すると、患者はスマートフォンを使ってパッチからインスリンを制御して注入できます。インスリンの必要量は、その時点のユーザーの血糖値と体内にあるインスリン量、炭水化物の摂取量に基づいて計算されます。

Nordic Semiconductor CEOメッセージ:2022年へ向けたNordicの市場予測と戦略

5. 2022年を見通したときにNordicがターゲットとする市場セグメントはどこですか。

Nordicは近距離無線技術のトップサプライヤーであり、セルラーIoTにおいては成長中の企業です。そしてWi-Fiの分野には新規参入したばかりですが、2022年後半にはカスタマーサンプリングを開始すべく最初の製品の開発中です。Nordicは、お客様に「すべての主要なIoT技術の中からひとつを体験」していただきたいと考えています。この目的を達成するため、Nordicではハードウェア、ソフトウェアとサポート、そしてすべての主要な業界を包含するサービスソリューションの提供に注力していきます。

Nordicは今後も、インダストリアルIoT(IIoT)や物流、スマートホーム、医療、小売、コンシューマー、教育その他の主要な業界をターゲットとしていきます。具体的な例として、近距離無線技術とセルラーIoT技術が連携して貴重な貨物の場所と状況を追跡する、アセットトラッキングという急成長中の分野があります。ハードウェアとソフトウェアに加え、Nordicでは位置情報サービスnRF Cloud Location Servicesもリリースしています。このソリューションはNordicの多機能なセルラーIoT接続サービスであるnRF Cloudをベースとしており、NordicのセルラーIoT製品の商用利用が実現すれば、詳細な位置情報サービスモデルがお客様側で利用可能となります。またnRF Cloudにより、現場のデバイスで無線通信によるファームウェア更新(FOTA)も可能になります。

もうひとつの主要な市場セグメントが、新興の次世代無線音声技術のBluetooth LE Audioです。Bluetooth LE AudioはBluetooth Classic音声技術を強化したもので、これにより、より高品質な音声ストリーミングが実現し、スピーカーやヘッドホンのバッテリー寿命も延びます。この技術にはBluetooth Audio Sharingという機能が入っており、1つのオーディオストリームに複数のヘッドホンを接続するなどの用途が可能になります。

Bluetooth Audio Sharingにより、聴覚に何らかの障がいがある世界中15億人の人々が、より容易に公共の音声を聞けるようになるかもしれません。この技術では、耳に装着したBluetooth補聴器に音声ストリームを直接伝送することで、低価格な補聴システムを実現します。デュアルArm Cortex-M33プロセッサを搭載した、世界初の無線SoCであるnRF5340は、Bluetooth 5.2との完全な互換性を持つため、LE Audio製品に活用するには最適なデバイスと言えます。

医療セクターもNordicにとっては主要な分野です。その一例が、1型糖尿病の治療です。たとえば、Nordicのお客様であるDiabnex社が提供しているインスリン注入監視・記録デバイスClipsulinには、NordicのnRF52832 SoCを活用した無線接続機能があります。別のお客様であるSiBionics社は、中国の深圳に拠点を置く持続グルコースモニタリング(CGM)機器の専門企業ですが、同社のGS1 CGM Systemでは、機器の交換までの最長14日間、糖尿病患者が継続的に自分の血糖値を監視・記録できます。これらの例以外にも、Bluetooth LEを搭載したCGMからRF信号を受信できるよう、インスリンポンプには無線技術が日常的に用いられています。CGMのデータを利用してポンプが注入アルゴリズムを調整、カスタマイズするため、ユーザーが過剰なインスリンを注入することがなくなります。

Nordic Semiconductor CEOメッセージ:2022年へ向けたNordicの市場予測と戦略

6. 2022年にNordicが日本においてターゲットとする市場セグメントはどこですか。

2022年には、消費者がこれまでよりもずっと簡単にスマートホームを構築・設定できるようになると当社では予測しています。そして、新規格のMatterをベースとする最初のスマートホーム製品が発売されるでしょう。メーカーは、Nordicの無線デバイスを内蔵することで、複数のブランド間やプラットフォーム間でも、インテリジェントホームデバイスやモバイルアプリ、クラウドサービスの確実な通信を実現できます。Wi-FiとBluetooth LEのように、テクノロジーのさらなる融合も進んでいくと考えています。

また、Bluetooth LE Audioという新しい規格によって、補聴器や商用のオーディオ用途における音質の改善とバッテリー寿命の向上も可能になります。

今後、家庭用、商用、および産業用セグメントの近距離および遠距離用途にNordicの低消費電力無線技術が使われていくと思われます。

7. 2021年に大幅な成長を見せたニューアイテムやテクノロジーについてお聞かせください。また2022年で最も発展する可能性が高いものは何だとお考えですか?(NordicはどのようにしてセルラーIoT分野の有力なプレイヤーとなったのでしょうか?)

Nordicでは、近距離無線通信のセクターは2021年も引き続き大きな成長を続け、2022年にはさらに加速すると見ています。そしてセルラーIoTと省電力広域ネットワーク(LPWAN)テクノロジーは2021年にしっかり勢いをため、2022年に飛躍することになるでしょう。強力な専用アプリケーションプロセッサのArm Cortex-M33、LTE-M/NB-IoTモデムおよびGNSSを内蔵したnRF9160 SiPを有するNordicは、この成長を活かせる有利な立場にあります。

nRF9160はグローバルな運用に適しているため、引き続き世界中の通信事業者の認証を取得できます。このSiPはクラス最上位レベルのバッテリー寿命とソフトウェアサポートを誇るコンパクトなセルラーIoTソリューションであり、幅広い産業、商業、消費者セクターでの需要に完璧に応えます。

Nordicはセルラー技術の市場においては比較的新顔ですが、フィンランドのエンジニアリンググループを通じて、このセクターに関する深い専門知識を有しています。この専門知識をNordicが誇る低電力無線技術の経験と組み合わせることで、数々の賞に輝くnRF9160が誕生しました。その結果、セルラーIoTに関するNordicの収益は2020年第3四半期から2021年第3四半期までに3倍を超える1,400万ドルへと大きく成長しました。この収益は、複数のお客様と共に時間をかけて積み上げてきたプロジェクトによって生み出されてきました。お客様のお力により、物流やアセットトラッキングのセクターや工業・環境セグメントに、Nordicの技術を活用したセルラーIoT製品が供給されているのです。

セルラーIoTは社会のデジタル化を推進する技術となり、Nordicが投資したテクノロジーはM2MとM2People両方の用途に新たな市場を開いていくと思われます。

8.価格設定とサプライチェーンが過去9か月の中心的な話題であったと思われますが、その上で、以下のa、bについてお尋ねします。

a. Nordicは顧客に対して値上げを行ったのでしょうか。またさらなる値上げは予定していますか。

2021年第1四半期にはすでに競合各社が値上げに踏み切っていましたが、Nordicでは、パンデミックによる経済的な問題やNordic製品への高い需要に便乗して価格を上げることはしませんでした。しかし、ウエハーの原価や輸送、テスト、組み立てにかかるコストの高騰により、2021年12月より製品価格を若干値上げする形で対応しました。2022年に市況がこれ以上悪化しない限り、さらなる価格改定は行わない予定です。

b. 部品不足は2022年も続くと思いますか。またそれはなぜですか。

Nordicでは、需要が引き続き供給を上回るため2022年も部品不足は続くと考えています。Nordicのウエハーのサプライヤーもこの状況の解決に向けて努力していますが、生産能力の増強は遅々として進んでいません。Nordicはウエハーのサプライヤーとともに早期から果断なアクションを起こし、2022年のお客様への納品を確保しました。さらなる生産能力を確保すべく、日々努めてまいります。

また、Nordicはお客様ごとの配分という難しい課題に引き続き取り組んでいます。この配分はお客様各社との合意だけでなく、お客様をサポートするというNordicの道義的責任にも基づき行われているものです。取引量の大きいお客様を長期的なコミットで守りつつ、将来の高い成長が見込まれる新たな用途での種も蒔きたいと考えているNordicでは、最大手のお客様と小規模なお客様の両方に対するバランスの取れた配分に努めてきました。この方針により、付き合いの長いお客様や新しいスタートアップ企業との関係が強化され、急速な成長が強く見込まれています。

9. 中国がパンデミックの最悪な状態から驚くべき復活を遂げたことは多くが認めるところかと思いますが、2021年の中国におけるNordicのビジネスや経験はどのようなものでしたか、また2022年にはどうなると予想していますか。

中国におけるNordicの設計活動は全体的に大変活動的であり、強固な顧客ベースを形成してきました。この顧客ベースは今後も増加していき、2022年には中国において販売リソースと技術サポートの両方で大きく事業を拡大する計画となっています。パンデミックによって中国企業の間でもイノベーションに対して更なる拍車がかかったことから、Nordicではこの新たなイノベーションの波を支援するポジションに立つことで、エンジニアの皆様にさまざまな新用途でNordicのテクノロジーを活用していただきたいと考えます。

10. 世界には数多くの課題があり、中でも気候変動が人々の最大の懸念材料となっています。この分野においてNordicからのメッセージや企業方針はありますか。

2021年にビジネスを進める上で、Nordicが重視したメガトレンドのひとつが持続可能性です。社内的には、自社のビジネスの持続可能性を確実にするためさらに努力してまいります。Nordicは、グローバルサプライチェーンのCSR(企業の社会的責任)を専門に取り扱う世界最大の業界連合、Responsible Business Alliance(RBA)のメンバーです。RBAやその他のイニシアティブのメンバーとして、Nordicは国連が提唱する17の持続可能な開発目標の実現に役立つ技術の開発に取り組んでいます。

Nordic製品の設計には、持続可能な取り組みが大きく生かされています。Nordicが作るすべてのデバイスはバッテリー寿命を最大にする設計になっているため、莫大な数のバッテリーが環境に及ぼす影響が低減します。パンデミックの霧が晴れる頃には、地球環境への配慮がビジネスにおける喫緊の課題のひとつになり、Nordicの未来の方向性もそれに導かれていくと思われます。

対外的には、Nordicはお客様が持続可能性の課題の解決にIoTを活用するための支援にも取り組んでいます。Nordicのテクノロジーは、空気や水の浄化、二酸化炭素排出量の抑制、森林破壊問題への取り組み、絶滅危惧種の保護に役立っています。そのほか、障がいを持つ子どもたちへの教育や農産物収穫量の増加、手頃でクリーンなエネルギーの供給などにも役立っています。

どこを見ても、持続可能な製品にNordicのテクノロジーが活用されていることがお分かりいただけると思います。Nordic本社では、ビジネスに役立てていただけるNordicの無線技術やエナジーハーベスティング、エッジコンピューティングおよび機械学習機能を用意しています。

そのほかにも、BrandBrandNew社では電力の無駄が多く電気代が高くなりがちな従来のケトルに代わる製品であるHeatleを動かすために、Nordicの近距離無線技術を活用しています。Heatleは、誘導技術と浸漬技術の組み合わせにより、どの液体でも好みの容器で指定した温度まで直接沸かすことが可能なスマート液体加熱装置です。使うときは、ユーザーがHeatleのスマホアプリで好みの温度を設定します。NordicのnRF52832 SoCにより、Bluetooth LE接続を介して温度の情報がベースユニットに送信され、NordicのnRF52805 WLCSPを搭載した伝熱ロッドへさらに中継されます。

Metasphere社のART Sewerは、世界中の下水施設をターゲットとしています。Nordic のnRF9160 SiPを搭載したこのデバイスは、下水道網のマンホールの蓋に取り付けて使います。各センサーがレーダーを用いて15分おきに下水の水位をサンプル測定し、そのデータがNB-IoTまたはLTE-MのセルラーIoT無線技術によって1日1回Metasphere社のデータアナリティクスサーバーへ送信されます。

SODAQ社のTrack SolarはPVパネルからの電力で動くアセットトラッキング用デバイスで、エナジーハーベストによって得た電力のみで永続的に動作が可能とされています。このトラッキングデバイスはNordicのnRF9160 SiPをベースとするセルラーIoTソリューションで、光センサーと加速度計、温度センサー、ステータスLEDを内蔵しています。

最後に、Nordicのテクノロジーはスマートメーターや関連技術に幅広く採用されています。たとえば、公益事業においては複数のスマートメーターをまとめてIoTにつなぎ、強力なクラウドサーバーでそのデータを分析してエネルギー効率を最適化することが求められます。しかしそのためには何百個ものスマートメーターからwMBusを介して伝送されたデータを集計し、そのデータをキロメートル単位の通信距離を持つLPWANを介してクラウドに転送する必要があります。Nordic のお客様であるLobaro社では、同社のWireless MBus Gatewayでその要求に応えました。Lobaro社はGatewayについて、NB-IoTを使用して最大250個のwMBus対応スマートメーターからメーターの消費量データを受信、キャッシュしてクラウドへ転送できる、費用効率とエネルギー効率の優れたデバイスであると述べています。

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