ソニー、米国Cogitaiに資本参加し、次世代の人工知能に関する研究開発を共同で推進

ソニー株式会社は、米国子会社であるソニー・コーポレーション・オブ・アメリカを通じ、人工知能(AI)に特化したスタートアップである、米国Cogitai(コジタイ)に資本参加し、同社と、ディープ・リインフォースメント・ラーニング(深層強化学習)技術に予測・検知技術を応用して、次世代の人工知能に関するアプリケーションや製品群の基礎となる、新たな人工知能技術を共同で開発すると発表した。

 

コジタイは、人工知能領域の開発を牽引する三名の研究者により2015年9月に設立された。

強化学習の先駆者であるマーク・リング氏と、テキサス大学オースティン校で強化学習を含む人工知能や複数エージェントシステム、ロボット研究を推進する教授ピーター・ストーン氏に、ミシガン大学教授で深層強化学習の先導者であるサティンダー・シン・バベイジャ氏により設立された同社は、実世界とインタラクションをしながら継続的に学習をしていく人工知能の開発を目指している。この人工知能は、日々の様々な場面において、センサーから得られたデータと、それに基づき起こしたアクションによる経験から学習し、継続的に知識と能力を向上させ、賢くなっていくものだ。

さらに、これらの卓越した創業者に加え、同社は人工知能でレベルの高い研究者で構成されるブレイン・トラストというグループを形成しており、このメンバーもソニーとコジタイの共同研究開発に積極的に携わっていくという。

 

人工知能の進化には約60年の歴史がある。初期においては、従来人間の知性が必要であった特定の仕事を予め機械にプログラムして実行するという方法がとられた。しかし、機械が知的に機能するようプログラムするには、その知識の背景にある複雑な文脈やコンセプトをもプログラムする必要があり、これが、極めて難しい問題として立ちはだかった。

そして、この課題を克服するアプローチとして、機械学習という手法がとられた。機械学習においては、特定のプログラムからではなく、サンプルとなるデータをもとに機械がルールや知識を学習する。この方法は高品位なサンプルデータが大量に存在する場合には非常に効果的であった。2010年頃に現れたディープ・ラーニング(深層学習)は、機械学習が強化された形態で、データ内の微妙な差異を認識する能力があり、人間並みの識別力がある。

しかし、この手法では人間がサンプルとなるデータに正解のラベル情報を付ける必要があった。

一方で、1980年代に出現したリインフォースメント・ラーニング(強化学習)は、行動心理学の成果を組み込み、機械の行動の結果に応じて報酬やペナルティを与えることで、より人間の知的な行動に近いシステム開発を可能とした。これは大きなブレークスルーとなったが、知識や(機械が活動する)世界は依然人間が作り出す必要があり、極めて限定した領域への適用に限られていた。

しかし、強化学習と深層学習を組み合わせたディープ・リインフォースメント・ラーニング(深層強化学習)は、これらの問題点を解決する有望な技術であると期待されている。実際に、この方式の有効性が、最近のグーグル・ディープマインド社によるアルファ碁で実証された。この方法は、明確に定義されている課題に関して、人間を上回る能力を発揮することが明らかになってきている。

 

ソニーとコジタイは、AI開発における次の領域は、自らが経験から自律的かつ継続的に学び、より広範の領域に適応可能な人工知能の開発と考えている。この新たな人工知能により、機械は実世界での経験から自律的に知識やスキルを学習し、さらにそれらの知識・技能・理解を他の機械とも分かち合い、発展させることができるようになるという。

 

ソニーは人工知能の研究開発で長い歴史を有している。

1999年に完全自律型ロボットであるエンターテインメントロボット、アイボを開発しました。アイボには顔認識や音声認識など多くの最先端の人工知能技術が搭載されていた。その後、これらの技術はデジタルカメラやテレビ番組推薦サービスなどソニーの製品・サービスに展開された。

また、2004年にはソニー・インテリジェンス・ダイナミクス研究所を設立し、自律型知的システムの開発に向けた研究を行ってきた。インテリジェンス・ダイナミクスは、予測に基づく学習と、内発的動機付けによる自己開発を技術的特長としており、機械が技能を制限なく自律的に開発していく能力を目指していた。これらの活動は2006年にソニー本社R&Dグループに移管され、深層学習や強化学習を含めた人工知能技術の研究を継続してきた。

 

これまでにソニー R&Dプラットフォーム システム研究開発本部が開発した人工知能技術に基づく製品やサービスには、スマートフォン「Xperia™」シリーズに搭載されている統合型拡張現実感技術(SmartAR)を用いたカメラアプリ「ARエフェクト」や行動認識技術を採用したLifelogアプリ、「プレイステーション® 4」の顔認識ログインなどがある。

本年2月にはソニーモバイルコミュニケーションズが、ユーザーの声に反応して、個々のユーザーにあった情報の提供やコミュニケーションを、声としぐさでアシストしたり、家電をコントロールすることができる「Xperia Agent」の試作品を公開した。

さらに、本年3月にはフューチャー・ラボ・プログラムにおいて、耳を塞ぐことなくハンズフリーで音楽や音声による情報をインタラクティブに楽しめるネックバンド型ウェアラブルデバイス、コンセプトプロトタイプNを初公開した。Nはオーディオ信号処理技術と音声認識技術を利用している。

 

これらの活動と並び北野宏明博士が社長として主導するソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)は計算幾何学やノイズあるデータ群からの因果推論、言語進化と認識などの基礎理論から、人工知能の応用としてのインタラクティブな音楽創造や製造工程改善、またその他多数の領域で広範囲にわたる人工知能の研究を行っている。

ソニーCSLは東京とパリに拠点を持ち、国際的な人工知能コミュニティにおいて重要な役割を担ってきた。北野博士は、国際的な人工知能学会である国際合同人工知能会議(IJCAI)の前プレジデントであり、ロボカップの創設会長も務め、1993年には人工知能分野での最も重要な賞の一つであるThe Computers and Thought Awardを受賞している。

 

【関連リンク】
ソニー(Sony)
コジタイ(Cogitai)
ソニーコンピュータサイエンス研究所(Sony CSL)

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