ものづくりを支えるサービス開発に重要な発想力 ―ミスミ インタビュー

株式会社ミスミは、創業1963年以来、製造設備や生産装置向け部品の製造と販売を手掛け、ものづくりにおける部品調達をサポートしてきた。

ミスミにおける部品調達のメディアは、図面作成を必要としない紙カタログでの注文からはじまり、eカタログでのWeb注文、3D CADソフトと連携することで設計から発注までを容易にする「RAPiD Design(ラピッドデザイン)」や「meviy(メビー)」、CAD不要のインストール型設計ソフトウェア「MISUMI FRAMES(ミスミフレームズ)」など、設計者に寄り添うサービス展開を進めてきた。

本稿では、アルミフレーム筐体設計ソフトウェア「MISUMI FRAMES」のサービス概要を基に、ミスミにおけるソフトウェアサービスの価値についてお話を伺った。(聞き手:IoTNEWS 小泉耕二)

製造現場で重宝されるアルミフレームのQCTを徹底する

まず、アルミフレームが製造業においてどのような用途で活用されているかについて説明する。

アルミフレームは、製造装置のカバーや、作業台、ロボット周辺に人が進入しないための安全柵などに活用されている。

ものづくりを支えるサービス開発に重要な発想力 ―ミスミ インタビュー
製造業で活用されるアルミフレーム用途の例

これまでは、鉄や板金などを活用して組まれていたが、徐々にアルミフレームへと置き換わっているのだという。

その理由は大きく3つある。

1つ目は、組み立てが容易で短時間で行える点だ。ブラケットやボルトといった締結部材と六角レンチがあれば、簡単に組み立てることができる。また、アルミフレームや梁を足すなどの設計変更も容易なため、後々のカスタマイズも可能だ。

2つ目が、鉄に比べて軽いため、装置全体の軽量化を図ることができる点だ。また、表面処理にはアルマイト処理と呼ばれるアルミ特有の表面処理を施していることで、錆びにくくメッキや塗装が不要な素材であることもメリットのひとつだ。

3つ目が、アルミはリサイクル製に優れる素材であり、環境に優しいという利点もある。

こうした背景から、工場におけるあらゆるシーンにおいて、従来の鉄や板金といった素材から、アルミへの活用に変化しているのだという。

そうした中、ミスミは1993年よりアルミフレームの販売を開始しており、2004年から自社製造・販売を行っている。

ミスミのアルミフレームは、安定した品質をグローバルに調達することが可能で、標準価格で提供されているのが特徴だ。また、午前中に注文すれば当日出荷され、午後の注文においても翌日出荷されるという短納期を実現している。

こうしたQ(高品質)C(低コスト)T(確実短納期)を徹底しているため、トップクラスの国内シェアを獲得しているのだ。

設計から組立までをサポートする「MISUMI FRAMES」

「MISUMI FRAMES」は、アルミフレーム筐体の設計から発注、組立までをサポートするインストール型のソフトウェアサービスだ。

使い方は簡単で、PCに「MISUMI FRAMES」をインストールすれば、直感的な操作で筐体の設計を行うことができる。なお、CADソフトとの連携もできるため、最終設計をCADで行うことも可能だ。

「MISUMI FRAMES」を立ち上げ、マウスを動かすことで、アルミフレームを伸ばして描画することができる。また、長さが決まっていれば数値入力することも可能だ。

ものづくりを支えるサービス開発に重要な発想力 ―ミスミ インタビュー
「MISUMI FRAMES」のデモ画面

四角い枠を作った後に、同じ大きさの枠をコピーしたり、全体を伸縮したりするなどの編集も容易に行うことができる。

ものづくりを支えるサービス開発に重要な発想力 ―ミスミ インタビュー
編集操作も容易に行える。

「MISUMI FRAMES」の部品はミスミのオリジナル品で、2500点以上が搭載されており、アルミフレームを設計すると、ブラケットなどの締結部材は自動的に配置される。

ものづくりを支えるサービス開発に重要な発想力 ―ミスミ インタビュー
四角い筐体を設計すると、自動的に必要な締結部材が配置されている。

パネルを貼り付ける場合にも、パネルボタンを押して、配置したい面を選択するだけで自動的に寸法を合わせてパネルを貼りつけられる。

ものづくりを支えるサービス開発に重要な発想力 ―ミスミ インタビュー
緑色の部分が、パネルが貼り付けられている箇所。

簡単な立方体であれば、30秒程度で設計することが可能だ。

設計が終わると、ミスミの型番に沿った必要な部品表が作成され、見積もりも自動で行われる。

ものづくりを支えるサービス開発に重要な発想力 ―ミスミ インタビュー
設計した筐体に使われている部品の部品表が自動で作成される。見積もりボタンを押すと、現状の最新価格と納品日、各部品の金額と合計金額が算出される。

従来であれば設計した後にカタログから型番を探し、個数をエクセルに入力する必要があったが、「MISUMI FRAMES」によりその工程はなくなる。

また、ミスミのWebオーダーシステムと連携しているため、そのまま注文できる仕様だ。

一度見積もりを行った履歴は残るため、リピート購入も可能。加えて、一度設計した筐体の部品にチェックを入れてまとめておくことで、オリジナル型番が発行され、部材が一式で届くというサービスも提供している。

ものづくりを支えるサービス開発に重要な発想力 ―ミスミ インタビュー
「チェックした項目をまとめる」ボタンを押すと、筐体のオリジナル型番が発行される。(赤枠)

さらに、組立費や送料を支払うことで、設計した筐体を組立てて納品してくれるサービスも展開している。

ミスミでは、組立出荷サービスを「MISUMI FRAMES」提供以前より行っていたが、従来であればCADデータや手書きの図面から、ミスミが詳細設計をして見積もりを出し、組立てて納品していた。

そのため、見積もりするために2週間から1ヶ月程度かかっていたが、「MISUMI FRAMES」を利用することで、1日で見積もり回答することが可能となったのだ。

こうした設計・発注・組立といった一連の工程を、「MISUMI FRAMES」上で行うことができる。

利用のハードルを下げ、圧倒的なメリットを打ち出す

サービス開始から約2年半の間で、ユーザ数が5万人を超えた「MISUMI FRAMES」だが、利用が急速に伸びた理由は大きく3つあるのだという。

1つ目は設計工数の削減だ。アルミフレーム筐体は、生産現場全体の流れの中においてコア素材ではないため、製造過程の終盤で注文されるのが一般的だ。

つまり、製品完成へ向けて期限が差し迫る中、スピーディーな設計が求められる素材なのである。そうした中、「MISUMI FRAMES」のように設計工数が少ないサービスは重宝される。

2つ目が、ハイスペックなPCが必要ないという点だ。通常CADを操作する際にはハイスペックなPCが必要だが、「MISUMI FRAMES」はビジネス用の一般的なノートPCでも操作することが可能だ。

利用のハードルが低いため、これまでアルミフレーム以外の素材で作られていた筐体にも汎用させ、アルミフレーム自体の利用シーンが増えているのだという。

3つ目が高い口コミ率だ。ミスミの調べではユーザの半数以上が職場やSNSで「MISUMI FRAMES」を推奨しており、設計者の中で話題になっているのだ。「MISUMI FRAMES」自体は無料で利用できる点も、普及が広がっている要因となっているのだろう。

実際に「MISUMI FRAMES」を活用した企業からは、部品表作成から見積もりまでのプロセスが従来の3分の1になり、誤発注がなくなったという声が挙がっている。

また、図面機能を利用することで、現場とのイメージ共有に活用されている事例もある。現場にPCを持っていけば、組立てた後の筐体を3D上で確認することができる。これにより、現場からの問合せ件数が減ったのだという。

培ったSCを基に、設計者に寄り添うサービスを展開する

現在は日本市場のみでの展開だが、今後は海外展開も準備を進めており、欧米や東南アジアを中心に順次展開を図っていく予定だ。

何故日本展開からはじめたのかについて伺うと、アルミフレーム自体のシェアが日本は非常に高かったという点と、組立てや配送といったサプライチェーンがしっかりと構築されている日本からまずは展開を始めたのだという。

「MISUMI FRAMES」の設計サービス部分はソフトウェアサービスのため、1度システムを構築すれば海外であっても展開するのは容易だと感じる。

しかし「MISUMI FRAMES」のサービスは、注文を受けた部品を高クオリティかつ短納期で配達し、組立サービスも日本同様に提供する必要がある。そのため、サプライチェーンがしっかりと整ってからの展開を考えているのだとした。

日本での展開に関しても、ミスミはこれまでQ(高品質)C(低コスト)T(確実短納期)を徹底したサービス展開を行ってきたからこそ、「MISUMI FRAMES」が実現しているのだ。

このように、ミスミではこれまで培ってきた商品販売の土台を基に、設計者の利便性をさらに向上させるためのソフトウェア開発を行っている。