地域密着型のケーブルテレビが仕掛けるスマートホーム -イッツ・コミュニケーションズ(イッツコム)インタビュー

「IoTでスマートホームを実現する」
もう聞き飽きた人も多いかもしれないが、今回のインタビューは、これまでIoTNEWSが紹介してきたスマートホームとはアプローチが違う。

一般の生活者は今の生活に特に不便を感じていなければ、家の中をインテリジェントにすることを優先する人はまだ少ないだろう。しかし、例えば、引越し時にインターネット回線工事とセットで簡単にスマートホームのオプションがついてくる、となればどうだろうか。

「月に数百円でサポートもあるなら、ついでに見守りや警備などのオプションを検討してみようか」と考えるかもしれない。生活者にとって受け入れやすいモデルになっていることが、スマートホーム普及のカギとなるのではないだろうか。

今回、イッツ・コミュニケーションズ株式会社 執行役員 事業戦略本部長 武田浩治氏、同社 事業企画部 部長、Connected Design株式会社 代表取締役社長 新貝 文将氏にスマートホームの展示を見せていただいたあと、お話を伺った。

 
-スマートホームの展示を見せてください。

新貝: こちらが、インテリジェントホームのデモルームです。去年の2月からイッツコムが東急線沿線を中心としたサービスエリアで開始したスマートホームサービス「インテリジェントホーム」の体験スペースになっています。

地域密着型のケーブルテレビが仕掛けるスマートホーム -イッツ・コミュニケーションズ(イッツコム)インタビュー

まず、スマートロック(電子錠)ですが、遠隔でスマートフォン、タッチパネル上の暗証番号、ICカードで解錠できます。

地域密着型のケーブルテレビが仕掛けるスマートホーム -イッツ・コミュニケーションズ(イッツコム)インタビュー

 
-サムターン型で後付けタイプなのですね。

新貝: もともと付いているシリンダーとサムターンの部分を外し、設置します。ドライバー1本で工事ができるので、われわれのサービススタッフでも15分程で取り付けができます。

駆動は単3電池4本で動くようになっていますが、バッテリーが低下してくると「交換してください。」と音声アナウンスをしてくれますし、専用アプリの画面で電池の残量低下の警告表示が出るようになっています。それでも、バッテリーが万が一切れたらてしまったら、コンビニなどで手に入る9ボルトの角形電池で給電しながら開けるこができます。

地域密着型のケーブルテレビが仕掛けるスマートホーム -イッツ・コミュニケーションズ(イッツコム)インタビュー

 
-面白いですね。

新貝: この他、ドア・窓センサーや、モーションセンサーもあります。カーテン状にビームが出て、横切った時だけ反応する狭域タイプのモーションセンサーと、人なのかペットなのかまで判別し、誤検知を減らす技術が搭載されている広域のモーションセンサーがあります。

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-こういうモーション(人感)センサーというのは、どういう利用シーンを想定されて付けられているのですか?

新貝: 例えば部屋や窓などの入り口に付けておけば出入りが分かりますし、高齢者の見守りなどでも使えます。

 
-これは全部Wi-Fiなのですか?

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新貝: 専用のホームゲートウェイはZigBee(ジグビー)とWi-Fiをサポートしています。「家電コントローラー」はグラモ社のアイリモコンを採用しました。アイリモコン専用のアプリを使わなくてもインテリジェントホームのアプリから操作できるようになっています。

地域密着型のケーブルテレビが仕掛けるスマートホーム -イッツ・コミュニケーションズ(イッツコム)インタビュー

今後デバイスが増えても、同じアプリ内に操作画面を組み込めることがこのプラットフォームの特徴となっています。

また、スマートロックが開いたことを検知して、照明やエアコンをつけたりするような連動設定が生活スタイルに合わせて自由にカスタマイズできます。このような連動ルールは、アプリのメニューから画面の指示に従って選択していくだけで、お客様自身で簡単に設定していただけます。

地域密着型のケーブルテレビが仕掛けるスマートホーム -イッツ・コミュニケーションズ(イッツコム)インタビュー

 
-なるほど。家の中でIFTTT(イフト)がある感じですね。

新貝: そうですね。例えばスマートロックが開いたら、IPカメラで写真や動画を撮り、それをメールに添付して送ることもできます。

 
-セキュリティーに使えるわけですね。

新貝: そうですね。15秒程度の動画が添付されますが、ドライブレコーダーのように、ドアが開く3秒前からの映像がバッファーリングされ、動画が作成されます。よって動画を見てみたら人や顔が映ってなかったという事はありません。

 
-なるほど、面白いですね。
ところで、色んなモノがインテグレートされていますね。インテリジェントホームの対応商品というのは、御社の中で選ばれていくのでしょうか?

新貝: われわれは米国のアイコントロール・ネットワークス(Icontrol Networks, Inc. 以下、Icontrol社)という会社のプラットフォームを採用しています。多くのIcontrol認定デバイスがありますが、その中から選定し、各メーカーと調達交渉をして日本に持ってきています。

 
-なるほど、技適を取る必要がありますよね。日本でローカライズというか、日本でも売れるようにして、持ってこられるわけなのですね。一般の方がこれを使いたいと思ったら、どうすればいいのですか?

新貝: 
東急線沿線を中心としたイッツコムのサービスエリアで2015年2月からスマートホームサービス「インテリジェントホーム」として提供を開始しています。また、全国のケーブルテレビ事業者での採用が始まっており、今年に入って沖縄、広島、大阪、愛知などの一部地域で同サービスの提供が始まっています。

さらに、年内に計30局ほどのケーブルテレビ事業者でも同サービスの開始を予定しており、提供エリアが全国に広がりつつあります。今後も提供事業者を拡大していきます。提供されるメニューや料金は、各事業者によって設定されます。

今後も様々なデバイスをインテリジェントホームに追加していきます。たとえば、カメラに加え、マイクやスピーカーまで内蔵されたLED電球なども予定しています。こちらが検証中のLED電球からの映像です。

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インタビュー

 
-スマートホームサービス導入するに至った背景を教えてください。

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左前:イッツ・コミュニケーションズ株式会社 事業企画部 部長 兼 Connected Design株式会社 代表取締役社長 新貝 文将氏、左奥:イッツ・コミュニケーションズ株式会社 執行役員 事業戦略本部長 武田浩治氏/右:IoTNEWS代表 小泉耕二

武田: ケーブルテレビ会社は、テレビ、インターネット、電話という3サービスを中心に事業を展開してきましが、当社を含め業界としても新しい4本目の柱を検討していました。

数年前にアメリカのIcontrol社と出会い、まさに、東急グループが目指していたスマートライフを広げていくものと確信しました。またそのプラットフォームの上でさらにデバイスが増え、サービスが発展していくものでした。地域密着のケーブルテレビ会社としては、その拡張性を丁寧にお伝えすることができ、きめ細やかなサポートをすることができるのでケーブルテレビ事業ととても親和性が高いと思いサービスの導入を決めました。

 
-なるほど。それがいつくらいでしょうか。

新貝: Icontrol社と契約を締結したのが2014年の9月でしたが、スマートホームシステムの米最大手がわれわれ東急グループと提携し日本に進出するという記事が日経新聞の1面に載ったのが2014年の10月21日、サービスインは2015年の2月になります。

 
-すごく最近ですね。

武田: そうですね。ただ、サービスを立ち上げておしまいではなく、継続的にプラットフォームを広げていく陣地取りのビジネスだと思っています。

つまり、スピーディーに事業拡大することがこのビジネスにおいて最も重要な要素です。そのために、2015年11月25日、イッツコム、東急電鉄とニフティの3社で提携して、IoTサービスの新会社Connected Design (コネクティッド・デザイン) 株式会社を設立し、エコシステムの開発速度をさらに加速させました。

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イッツ・コミュニケーションズ株式会社 執行役員 事業戦略本部長 武田浩治氏

 
-なぜニフティと提携されたのでしょうか。

武田: 新聞への掲載をきっかけとして様々な企業からアプローチがありました。その中の1社がニフティであり、同じ志と方向性を持ち、何より熱い情熱を感じ、提携を決めました。

ニフティの加入者基盤、開発力、さらにニフティクラウドを持っていることにも期待がありました。また、当初からビッグデータを活用する構想がありましたが、ビッグデータ解析なども含めると、東急グループだけではなく富士通のグループであるニフティと組むというのは得策であろうという判断しました。

 
-なるほど。Icontrol社と手は握りつつも、部分的にローカライズする上で、日本のクラウドを使ったり、日本のサービスをもっと入れていこうというお考えがあるという事でしょうか?

新貝: Icontrol社のプラットフォーム自体がそれ単体で閉じたものではなく、他のデバイスやプラットフォームと連携していける仕組みになっています。いわゆるクラウド・インテグレーションです。

例えば、アイリモコンの連携は、グラモ社のクラウドサーバーからAPIを提供してもらい、アイリモコンと接続するためのアダプターをIcontrolプラットフォーム上のクラウドインテグレーションフレームワーク上に作ることで、クラウド連携ができます。また、ワンストップでUI/UXの提供もできます。

日本では、HEMSの取り組みが盛んですが、HEMSの提供事業者が同じようにサーバーのAPIを公開してくれれば、HEMSとインテリジェントホームを有機的に繋げてサービス提供することも可能です。

 
-そういう意味では全方位にいろんな人たちと繋がっていこうという事ですね?

新貝: そうですね。利用者目線で見ると、プラットフォーム毎にデバイスが分断されていて繋がらない、ということでは混乱が生まれますし、そうなるとスマートで便利な世界とは言えません。デバイスやプラットフォームを提供している他の企業様ともそういった話をさせてもらっており、賛同頂けることも比較的多いので、既に連携に向けて協議を進めさせて頂いているという状況です。

 
-今度どういうふうにしていこうとお考えですか。

武田: まずはわれわれのエリアのお客さまの数を増やすというフェーズ。それから横連携するケーブルテレビ局を増やし、その局のお客さまを増やしていくというフェーズ。さらにサービスの魅力を高めていくために継続的にデバイスの数を増やし、プラットフォームの機能強化もしていきます。

2016年4月からは法人向けに「Connected API」というシステム連携の仕組みの提供を開始しました。たとえば、スマートキーの鍵を時限式に発行できる仕組みをフックに、スマート内覧の実現に加え、民泊や、貸会議室など運営している会社などのBtoBチャネルを広げていくことを狙っています。展示会でこの仕組みを紹介してみたら、連携したいと言ってくださる法人のお客さまからのお問い合わせを多数頂いております。

こうすることでインテリジェントホームのプラットフォームをデファクトスタンダードにしていこうというのが、大きな戦略ですね。

新貝: これがConnected APIで提供する管理者画面の例です。

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例えばこれが「貸会議室のシステム」だとします。ここから使いたい会議室を1時から3時までの時間指定で予約します。そうすると指定した1~3時の間、スマートロックを解錠できるソフトウェアの鍵が予約者の携帯にメール送信されます。

メールの本文にあるURLをクリックすると、このような画面が表示されますので、表示されている解除コードを入力することで解錠ができます。

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-結構この手のことをやろうとする人たちが多いですが、ここまで実現できているのを見るとちょっと安心しますね。

武田: マネタイズという意味での勝ち組はまだ出てきていませんが、たとえばGoogleやAppleなどの海外の黒船が来る前に、ジャパンクオリティーのスマートホームを確立すれば、十分勝機はあると思っています。たとえば、かゆいところに手が届くサポートのきめ細やかさみたいな。そこがイッツコム、東急電鉄、ニフティが連携している強みだと思っています。

 
-発展しそうな感じがしてきましたね(笑)。私は早くIPv6の世の中になって、ゲートウェイもなく、そもそもクラウドで全部コントロールするってなるといいなと思っていますけど。

新貝: そうですね、そういった時代はもうすぐきますね。

 
-そうじゃないと結局個々で全部設定できなくなっちゃいますからね。何かどっかにボトルネックがあると、そいつが死んじゃうと終わりみたいなモノって起きるし、集合住宅なんかだと輻輳(ふくそう)の問題も出るじゃないですか。

新貝: 皆さんそうおっしゃられるのですけど、我々の経験上ほぼないです。例えばIoT/2M展に出展し、デモ展示をしましたが、かなりのWi-Fi飛んでいる中でも、ZigBeeデバイスの遅延やトラブルはありませんでした。Wi-Fiデバイスのカメラなどはもちろん遅延するのですけど、ZigBeeデバイスは、大丈夫ですね。

 
-本当ですか。

新貝: われわれも検討当初、ZigBeeについては悪い噂を聞きました。そこで疑心暗鬼になりましたが、実際にZigBeeを策定した人々に会って確認をしました。わかったのは、そもそも両技術ともIEEEの規格であり、ZigBeeは先行していたWi-Fiの後に作っていますから、同じ2.4GHz帯でもWi-Fiからの影響を受けにくいように設計されていることを学びました。

 
-そうですか。ZigBeeだらけでも大丈夫ですか?ZigBee同士でも干渉しないのですか?

新貝: 例えばラスベガスには、ZigBeeを使って4000室スマート化しているホテルがありますが、そこでも問題はおきていないそうです。Wi-Fiの電波は台形状に立つのに対して、ZigBeeはスパイクで立ちます。送信エラーが起こった場合には、別のところでリトライし、データを再送するようですね。そうすることで干渉しにくくしています。

 
-なるほど、人の感覚値からすると、ハンドシェイクしやすいという事ですね。実際はもしかしたら干渉しているのかもしれないけど、そこは見えないような感じになるという事ですね。

新貝: 再送することがあるので若干遅延はしているのですが、人間が気づかない短時間で再送が起こっている、ということですね。

 
-なるほど。分かりました。

新貝: 私の代表を務めるConnected Design株式会社は、Icontrol社から提供される柔軟なプラットフォームを最大限活用し、継続的にプラットフォームの付加価値を高めていきます。

日本もようやく色々なソリューションが出てきていますが、他のプレイヤーと競合しようとは思っていません。プラットフォームの拡張性・連動性を活かし、他のプレイヤーと協調し、プラットフォームで横つながりしていく事で日本におけるスマートホームの普及拡大を狙っていきたいと考えています。

我々とつながるメリットをさらに言うと、つなぐ仕組みを一旦作れば、北米やオーストラリアでIcontrolのプラットフォームを使っている他の事業者でもその仕組みを適用することができるため、日本市場のみならず他国での事業展開ができる可能性があります。

地域密着型のケーブルテレビが仕掛けるスマートホーム -イッツ・コミュニケーションズ(イッツコム)インタビュー
イッツ・コミュニケーションズ株式会社 事業企画部 部長 兼 Connected Design株式会社 代表取締役社長 新貝 文将氏

 
-ユーザーインターフェースがすごくリッチにできているなと思うのと、インターネットの世界で言うところの、勝ち組の機能を上手い事取り入れていますよね、多分もうじきGPSなども入れそうですね。

新貝: 鋭いですね。

 
-今後、家だけじゃなくもっと広がることになるでしょうね。本日はありがとうございました。

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