リクルートテクノロジーズ、独自開発のビーコンで実証実験、初対面を想定した活用方法だけでは社内コミュニケーション活性化には不十分

株式会社リクルートテクノロジーズは、社内コミュニケーションの活性化を目的として、独自開発したビーコン(※1)を従業員539名に配布、実証実験を行った。2016年4月から6月にかけて行われた実証実験の効果検証結果を発表した。

独自開発のビーコンを従業員539名へ配布

リクルートテクノロジーズの従業員数は、2012年10月のリクルートグループ分社化当時の150名に対し、現在は539名(2016年4月1日現在)と3年間で約3.6倍に増加した。急速に従業員数が増えた背景から、人事部ではメンバー同士のコミュニケーション活性化のために様々な施策を行ってきた。

その取り組みの一環として、今回、リクルートテクノロジーズ内の研究開発機関アドバンスドテクノロジーラボ(以下、ATL)にて、Eddystone(※2)技術を活用したビーコンおよびスマートフォン用アプリを独自に開発し、従業員539名へ配布。これは主に初対面のメンバー、もしくは接点が薄いメンバー同士のコミュニケーションを想定しており、スマートフォンアプリを通じて、会議やオフィスで近くにいるメンバーのプロフィールや連絡先を手軽に閲覧したり、他のメンバーを紹介したりできる機能を開発した。

ビーコンおよび専用スマートフォンアプリ「Party」の使用イメージ

①リクルートテクノロジーズ独自開発の専用スマートフォンアプリ「Party」をインストール
②「Party」内の誘導に従い、プロフィール情報を設定(名前、所属、電話番号、メールアドレス、一言コメント)
③アプリのIDと同じ固有のIDをふられたビーコンの電源をONにして、携帯(社員証と共に首に提げられるデザイン)
④アプリを起動した状態で周囲(約3m以内)にビーコンを携帯した人が近づくと、プロフィール情報を表示
⑤その後、アプリ上で以下の操作が可能
・情報の閲覧(氏名や所属/プロフィール文等)
・コンタクト(電話/メール)
・情報の保存(ブックマーク)
・情報の共有(メンバーの紹介)
リクルートテクノロジーズ、独自開発のビーコンで実証実験、初対面を想定した活用方法だけでは社内コミュニケーション活性化には不十分

ビーコンデバイス詳細

リクルートテクノロジーズ、独自開発のビーコンで実証実験、初対面を想定した活用方法だけでは社内コミュニケーション活性化には不十分
・サイズ:63mm/20mm/7mm
・使用電池:リチウム電池(CR1632)
・重量:約10g
・発信間隔:3秒に1回
・発信範囲:3-5m
同プロジェクトでは、Eddystone-UID/Eddystone-URL(※3)のデュアルモードの携帯型ビーコンを独自開発し、それと連動する専用のスマートフォンアプリとWebサービスを用意。

初対面を想定した活用方法だけでは、社内コミュニケーション活性化に不十分

ビーコンの活用が、今回の目的「社内コミュニケーション活性化」に実際に寄与したかを検証するため、2016年6月の実証実験終了後、実験対象者である従業員に対して、事後アンケートを実施。(全従業員539名のうち、有効回答者数118名)
リクルートテクノロジーズ、独自開発のビーコンで実証実験、初対面を想定した活用方法だけでは社内コミュニケーション活性化には不十分
初めに、「Q1. 実際に社内コミュニケーションが円滑になったと感じたか?」と質問したところ、「円滑になった」と回答したのは全体の7%にとどまり、「円滑にならなかった」と回答した54%を下回る結果となった。今回用意した機能だけでは、「社内コミュニケーションの活性化」を達成するためには不十分だったという。

その理由として、「そもそも利用用途が限定的であり、知らないメンバーと会議すること自体が少なかった」・「利用したとしても最初の1回のみとなってしまった」など、利用シーンの少なさに対する声が挙がった。また、「知らない人がいても、勝手にスマートフォンで従業員情報を見るという行為が何となく後ろめたい」・「あまり認識されたくない場面でビーコンの電源を切るなどしていると、通常時に電源を入れ忘れてしまった」など、社内といえども、個人情報を共有することに対する心理的な抵抗感をうかがわせるコメントも見られた。

リクルートテクノロジーズ、独自開発のビーコンで実証実験、初対面を想定した活用方法だけでは社内コミュニケーション活性化には不十分
なお、「Q2. 継続利用したいと思ったか?」を聞いたところ、21%が「利用したい」、32%が「利用したいとは思わない」と回答する結果となりました。継続利用したいと思わない理由としては、「利用が必要となるシーンがなかった」など、Q.1と同じく利用シーンの少なさに関して改善が必要というコメントが見られた。

一方、継続利用希望者の理由としては、「ぱっと名前が出てこない、組織が分からない時のお役立ちツールとして有効と感じた」・「ひとつの会社に閉じたサービスよりは、オープンなプラットフォームとして利用したい」などがあり、機能拡張を含め、サービスの活用や応用に期待する声が一定数あることが分かった。

実サービス化を目指す場合に求められる、改善点とは

スマートフォンアプリの機能拡充

①プロフィール内容の拡充
今回のアプリでは、「氏名」「所属」「連絡先」といった最低限の情報を登録する仕様となっていた。しかし、「さらに詳細な自己紹介が載っていると話のネタになりそう」などの意見があり、「仕事内容・技術領域」や「趣味」などに関する情報を多くの従業員が公開する状況をつくることができれば、その後連絡を取り合う等、コミュニケーション活性化のきっかけにつながる可能性がある。

②通知機能の追加
ビーコンからの情報を受信/閲覧するためには、その度にスマートフォンアプリを開く必要があることが、利用機会が増えにくい要因の一つと考えられるという。例えば、「アプリをバックグラウンドで動作させる機能が必要」などの意見もあり、プッシュ通知機能と組み合わせることによって改善できる可能性がある。今まで話したことのない人が近くに来た際、アプリを開かなくても情報が得られる仕組みを作ることで、利用頻度の拡大が見込まれる。

③コミュニケーションツールとしての守備領域を拡張
今回の実証実験では、複数のメンバーが一時的に一同に会する、「ロビー型」とも言うべきコミュニケーションを想定し、ビーコンの技術を活用した。しかし、「Facebook連動やLINEでインスタントメッセンジャー機能を使えばより良い」「Outlookと連携してほしい」といった意見もあり、継続利用を促し、中長期的な社内コミュニケーション活性化を目指すのであれば、公開されたタイムラインによって構成される「グラフ型」のコミュニケーションツール(Facebook等)や、特定メンバーがチャットを楽しむ「ルーム型」のコミュニケーションツール(LINE等)といった要素を加えることが有効だという。

利用シーンの工夫

④特別な利用シーンの設定
従業員が一同に会するキックオフイベントや、セミナーなど、初対面のメンバーと接触する可能性が高い場面での使用を推進することによって、「名刺代わりとして使用できる」といったメリットを感じやすくなる可能性がある。
※また、従業員からは、コミュニケーション活性化とは異なる観点から、以下のようなビーコン活用アイディアも寄せられた。
・「トイレ」「エレベーター」「従業員食堂」などの混雑状況の把握。
・会議室予約システムと連携して予約済・未使用の会議室の把握。

アンケート概要

・アンケート回答者:リクルートテクノロジーズ従業員(539名のうち、有効回答者数118名)
・アンケート期間:2016年7月7日~15日
・アンケート方法:社内アンケート
・アンケート設問:
Q1.実際に社内コミュニケーションが円滑になったと感じましたか?(円滑になった/どちらともいえない/ならなかった)
Q1’.上記の理由を教えてください(自由回答)
Q2.継続利用したいと思いましたか?(利用したい/どちらともいえない/利用したいとは思わない)
Q2’.上記の理由を教えてください(自由回答)

ビーコン/スマートフォンアプリ利用状況

・ビーコン利用日数:(平均:2.9日)
11日以上23人 / 06-10日88人 / 01-05日226人 / 00日202人
・被参照回数:(1日以上使用したことがある従業員のうち、ビーコンがアプリを通じてスキャンされた回数)(平均:16.4回)
31回以上38人 / 21-30回53人 / 11-20回92人 / 01-10回131人 / 00回3人
・ブックマークを一度でもしたことがあるユーザー数:129人(1日以上使用したことがあるユーザーのうち、38%)
・ブックマークを一度でもされたことがあるユーザー:220人(1日以上使用したことがあるユーザーのうち、65%)
・誰かに誰かを紹介したことがあるユーザー数:30人(1日以上使用したことがあるユーザーのうち、9%)

※1 ビーコン(Beacon)…今回の仕様では、3秒に一回、3-5m程度に届く目安。Bluetooth Low Energy(BLE)という極力電力を使わない規格を使用。
※2 Eddystone…2015年7月にGoogleが発表したビーコンの規格(ビーコンデバイスの振る舞いや発信するパケットのフォーマット)であり、オープンスタンダードを提唱している。Bluetooth Low Energy(BLE)のアドバタイジングパケットを利用(iBeaconなどと同じ)。
※3 Eddystone-UID / Eddystone-URL…Eddystoneの仕様には2種類あり、今回はセキュリティ面を強化する目的から、暗号データを送るEddystone-UIDをメインで活用。この場合、iBeaconと同様、暗号データの受け取りには専用アプリが必要となる。もう一つの仕様であるEddystone-URLを活用した場合、データはURLとして発信されるため、ブラウザでの受信が可能となる。

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【関連リンク】
リクルートテクノロジーズ(Recruit Technologies)

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