ルネサス、国際標準規格(DLMS)に対応したスマートメータ用マイコン「RL78/I1C」を発売

ルネサス エレクトロニクス株式会社(以下、ルネサス)は、スマートメータを中心とした電力メータ市場に向けて、国際標準規格DLMS(注1)対応に必要なセキュリティ機能や演算性能を強化したマイコンを製品化した。ルネサスは新製品を「RL78/I1C」の名称で、本日8月25日より順次発売開始した。

新製品はすでに累計出荷数量3年間で3千万個以上出荷している従来品「RL78/I1B」の上位製品として計測精度および低消費電力を継承しつつ、(1)セキュリティ機能のハードウェア化と、演算性能を約30%向上、最大256KBまで拡張されたROMにコードを格納することにより、電力量計測処理とDLMS処理を1チップで実現できるため、2チップ構成と比べ消費電力を約30%低減、(2)新たに三相4線式メータに対応し、ユーザは単相から三相まで新製品での対応が可能、(3)メータアナログ評価キットとメータリファレンスキットの提供により、ユーザの開発期間の約25%短縮、開発コスト削減に貢献、といった特長を有している。

新製品は地域や用途に応じ、内蔵するフラッシュメモリはDLMSや三相メータ対応に256KB(キロバイト)、単相メータやローエンド三相メータ対応に128KB、ローエンド単相メータ対応に64KBを展開、パッケージは三相メータや先進国の単相メータ向けに100ピン、新興国の単相メータ向けに80ピン、省スペースニーズに向けて64ピン、計7品種。

サンプル価格は内蔵するメモリ容量やパッケージにより異なるが、一例としてピン数が100ピン、メモリ容量が256KBの「R5F10NPJ」で370円/個(税別)となっている。ルネサスは新製品の量産を本年8月より開始し、2017年9月には月産20万個を計画しているという。

近年、世界的に電力需要が増加しており、省エネ促進、電力の自由化対応および盗電防止のため、スマートメータの普及が急ピッチで進んでいる。同社は世界市場におけるDLMS対応等により、セキュリティを強化したスマートメータの年間設置台数が2016年の0.3億台から2020年には1.1億台まで増加すると見込んでいる。

この様なスマートメータの台数急増の中、電力検針データのセキュリティ確保や、メータの低価格化が課題となってきている。そのため電力メータメーカからは、DLMSに対応するためのセキュリティ強化、同一製品を使用したプラットフォーム共通化による低価格化、開発コスト削減等のニーズが寄せられているという。このような状況のもと、ルネサスは、RL78/I1Bの世界最小クラスの低消費電力、周辺部品の取込みによる低コスト化といった特長を継承しながら、DLMSに対応したスマートメータ向けの新製品を開発、市場投入することにした。

新製品の特長の詳細は以下のとおり。

電力量計測処理とDLMS処理を1チップで実現できるため、2チップ構成と比べ消費電力を約30%低減

スマートメータでは、電力計測用のマイコンで計測した電力検針データを通信部に転送する際、DLMS規格による認証および暗号・復号機能が要求されるため、新製品はAES(注2)ハードウエア・エンジンを搭載。特にDLMS規格が要求するAESのGCM(注3)モードをハードウェア化することにより、同社従来品のソフトウェア処理に比べ、暗号・復号演算において20倍以上(注4)のスピードアップを実現。

さらに、PLLの搭載により動作周波数を最大24MHzから32MHzに向上、32ビット乗算・積和演算器搭載により24ビットΔΣ型A/Dコンバータで変換した24ビットデータにおけるソフトウェア電力演算の負荷を大幅に低減、電力演算で必要となる演算性能を約30%向上。これにより、電力量計測処理をしながらDLMS通信に対応する処理を行い、最大256KBまで拡張されたROMに電力量計測処理とDLMS処理のコードを格納することにより、電力量計測処理とDLMS処理を1チップで実現。

従来の電力計測用マイコンとDLMS処理専用マイコンによる2チップ構成と比べ、消費電力を約30%低減し、システムコスト低減が可能だという。

三相4線式メータへの対応により単相から三相まで新製品での対応が可能

イベント・リンク・コントローラ(注5)機能搭載および位相調整機能強化により、24ビットΔΣ型A/Dコンバータ4チャネルと10ビット逐次変換型A/Dコンバータ3チャネルを連携。これにより、三相4線で必要となる7チャネルの電流、電圧の測量を実現。従来の単相2線から三相3線までに加えて、三相4線メータの対応が可能となるためユーザは、新製品の使用により、コスト競争力のあるプラットフォーム共通化の展開が可能。

また、動作時の消費電流0.7μA(Typ.)を実現した独立電源リアル・タイム・クロックを搭載、バッテリ・バックアップ機能による電源監視機能を強化する事により、停電中のCPUや周辺機能の動作などの特長もRL78/I1Bから継承・強化。

メータアナログ評価キットとメータリファレンスキット提供により、ユーザの開発期間を約25%短縮、開発コスト削減に貢献

新興国を中心に世界市場では電力メータの需要は急増しており、メータ開発期間の短縮、ノウハウ活用が求められている。新製品は、初期検討段階においてメータアナログ評価キットを使用することにより、プログラムを作成せずに特性の評価を開始可能。また、メータ開発段階においてメータリファレンスキットの使用により、メータのハードウェア及び計測機能や信頼性の高いDLMSライブラリなど各種ドライバを揃えているため、ユーザ独自の開発に比べて開発期間を約25%短縮、コスト削減に貢献。

(注1)DLMSはDevice Language Message Specificationの略で、電力会社の検針データを交換するためのIEC規格。
(注2)AESはAdvanced Encryption Standardの略で、米国商務省標準技術局(NIST)によって制定された、米国標準暗号化方式。
(注3)GCMはGalois/Counter Modeの略で、データの暗号化と認証を同時に行う認証暗号化方式。
(注4)ルネサス製ライブラリによる実測値。
(注5)イベント・リンク・コントローラ機能は周辺ハードウェア間のダイレクトリンクすることにより割込みコントローラを介さず、モジュールの高速起動を実現。

【関連リンク】
ルネサス(Renesas)

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