電子機器に半導体を提供する半導体メーカーのSTマイクロエレクトロニクス(以下ST)と、ワイヤレス給電技術を開発しているWiTricity(ワイトリシティ)は磁気共鳴方式のワイヤレス給電用ICの設計・開発において協力することを発表した。今回の協力は、充電用コードを無くし、コンシューマ / IoT / 医療 / 産業 / 車載機器アプリケーションの給電・充電に関する利便性を向上させることを目標にしている。
WiTricityとSTは、WiTricityの基礎的なIP(知的財産)ならびにワイヤレス給電用ミックスド・シグナルICの設計に関する専門性と、STのパワー半導体の設計 / 製造 / パッケージングを組み合わせ、半導体を開発する。この半導体は、コンスーマ機器およびIoT機器向けのワイヤレス給電システムの空間的な自由度を実現すると共に、複数機器の高速充電を目標としている。また、「Wireless Charging 2.0」では、磁気共鳴技術を採用した半導体ソリューションを構築することにより、金属筐体のスマートフォン、タブレット、およびスマートウォッチへの効率的な充電が可能にするという。
開発を予定しているワイヤレス給電用ICには、AirFuel磁気共鳴仕様に準拠した設計、および磁気共鳴型充電と電磁誘導型充電に対応するマルチモード・ソリューションが含まれている。コンスーマ機器に最適なワイヤレス給電の実現に取り組む機関のAirFuel Allianceは、Power Transfer Units(PTU、送電側)とPower Receive Units(PRU、受電側)の相互運用可能なエコシステムを推進しており、このシステムにより、住宅・オフィスなどの屋内、公共エリア、さらには車内まで、あらゆる場所で製品のワイヤレス給電が可能になる。
WiTricityはマサチューセッツ工科大学(MIT)からスピンオフのような形で設立された企業であり、ワイヤレス(Wireless)と電力(electricity)を組み合わせた社名からもわかる通り同社は磁界共振方式の非接触電力伝送技術の基本特許を保有しており、今までに、トヨタ、IHI、三菱自動車工業などと提携をしている。
ワイヤレス給電方式には主要なもので、電磁誘導方式と磁界共振方式のものがある。電磁誘導方式の物は、携帯電話の充電などで使用されており規格としてQiなどがある、ただこの方式の問題点として充電を行える距離が短い(約3cm)こともあり用途が限定されていた。
今回STが協力するWitricityは前述のとおり磁界共振方式の技術を保有しており、2007年に発表されたMITの論文では60Wを伝送する場合の効率が距離75cmの場合約95%と、ある程度の距離でも充電が行える。
今回の協力で、今まで電池の交換の必要があった体に埋め込むタイプの医療機器や、コードによる給電の必要があったIoTデバイスにコードレスで給電が行えるようになれば、電池交換やコードという製品上の制約がなくなることで、デバイス開発の幅が広がっていくかもしれない。
【関連リンク】
・エス・ティー(ST)
・ワイトリシティ(WiTricity)
無料メルマガ会員に登録しませんか?
コンサルタント兼IoT/AIライター 人工知能エンジン事業の業務支援に従事するかたわら
一見わかりにくいAIの仕組みをわかりやすく説明するため研究中