現場目線でIoTを実現するファナックの「FIELD system」 スマート工場EXPOレポート

工場でのIoTを行うときに問題となるのがIT(Information Technology)と工場側であるOT(Operational Technology)の文化の違いだ。製造設備には様々な規格があり1つの工場内でもデータの相互利用が難しい。そうした状態を実際に工場で製造を行うことで肌で実感しているファナックが主導するオープンプラットフォーム「FIELD system」についてスマート工場EXPOのレポート第4回では紹介していく。

FIELD SYSTEM概要

工場設備の稼働率などのデータを可視化するサービスは多くあるが、実際にそのデータをどうやって取得するのかという問題がある。

工場内は多くの規格が入り乱れている状態で世界の工場を繋ぐどころか一つの工場内の設備を繋ぐだけでも配線の規格やプロトコルの違いなどからハードルが高い。そういった状況の中でITという上流からでなく、設備を使って実際にモノを作っている現場目線で工場のIoTを進めるためのプラットフォームがFIELD systemである。

ファナックは2017年中のFIELD systemパートナー企業によるIoT工場の実証実験を予定しているという。

即応性とセキュリティのための「エッジヘビー」

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FIELD systemは「エッジヘビー」というテーマを掲げ、データの処理をすべてクラウドで行わずにエッジコンピューティングで処理することで工場にとって必要な反応速度とセキュリティを確保する狙いがある。エッジでのデータ分析に必要なハードウェア関してファナックはシスコシステムズとパートナー関係を構築している。

FIELD systemの諸機能

既に参加している企業は数百社、システムインテグレーター、アプリ制作、実際に製造を行うメーカーなど幅広い企業が集まっている。FIELD systemのアプリストアも予定されており、それぞれの工場に必要なアプリを自由に導入できるような仕組みを目指している。

今回のブース展示ではFIELD systemで実装予定の設備の加工時間のシミュレーション、故障予知、分散深層学習の3つの機能が紹介されていた。

加工時間予測機能

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小さな製品などであれば製造にかかる時間も数秒、長くても数分単位のため加工にかかる時間の予測の必要性は低いが、航空機の翼など巨大な物の製造の場合は1個あたり数日単位でかかることもあるため、生産設備の割り当てなどを考える上で加工時間の予測を行う必要がある。

もちろん今までのNC機器でも加工時間の予測をある程度行うことができたがNC機器に予測機能が組み込まれているものがほとんどで予測の精度などの更新を行うことができなかった。FIELD systemで実現予定の加工時間予測ではNC機器からそれぞれの工程にかかる時間のデータを取得し、実際の製造プログラムと掛け合わせることで加工時間を予測する。ソフトウェアでの予測を行うため、アルゴリズムのバージョンアップによってより精度の高い予測を提供し続けることができる。

故障予知

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故障予知・予防保全についてFIELD systemで対応を予定しており、設備からデータを集めディープラーニングで分析を行うことで故障を事前に予測しチョコ停、ドカ停を無くすZDT(ゼロダウンタイム)実現を目指している。

分散深層学習

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製造設備に画像認識で物を掴んだりの作業をさせたいときに強化学習によってより良い作業アルゴリズムにブラッシュアップしていくことが行われているが、これを複数の同型設備で行うことによって強化学習にかかる時間を短縮するというものである。

データの可視化やビッグデータ分析などのソフトウェア部は充実してきたが、工場のIoTを進める上では様々な規格で作られている既存の製造設備からどうやって活用できるデータを取得するのかという問題が依然として残っている。産業用ロボットや製造設備を作ってきた、工場を知っているファナックのFIELD systemの動きに今後も注目する必要があるだろう。

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