STマイクロエレクトロニクス、ウェアラブルのセキュア決済を実現するNFCモジュールを発表

半導体メーカーのSTマイクロエレクトロニクス(以下、ST)は、身の周りのリストバンドや時計・ジュエリーなどのアクセサリに、セキュアな非接触決済機能を実装する「ST53Gシステム・イン・パッケージ(SiP)ソリューション」を発表した。

背景

現在、消費者の間では、スマート機器を通じたセキュア決済が普及している。そのため、既存のカード・メーカーはサービス拡張を行い、ウェアラブル機器で支払いやチケット発行、アクセス制御などの非接触型決済を検討しているという。

しかし、従来の技術ではNFC無線通信とセキュリティでそれぞれセキュア決済用ICが必要であることに加えて、余分なスペースと複雑な設計が必要となるため、限られたサイズとコストで実装を行うことは困難だった。

さらに、小型のアンテナを使用する制約があるウェアラブル機器では、通信性能が制限される可能性もある。

ST53Gの概要

今回、発表された「ST53G」は、NFC無線通信と、セキュア決済用ICを1つのコンパクトなモジュール(4 x 4mm)に集積しているため、これらの課題を解決できるという。

ST独自のboostedNFC技術を活用することで、小型のアンテナを搭載したウェアラブル機器でも、標準的な通信距離でカード・リーダと通信した場合と同様のユーザ体験を可能にするということだ。

カード・メーカーは、このオールインワンのモジュールを利用することで、ファッション・アイテムからイベント用のリストバンドのような使い捨てのアクセサリまで、ウェアラブル機器を、迅速かつ簡単に導入することができる。

そのほか、無線のチューニング・ツールや事前調整済みのアンテナ設定など、開発エコシステムの利用が可能。また、ST53Gは、EMVCo、ISO/IEC-14443 NFCカード・エミュレーション、MIFAREチケット発行仕様など、カード業界に関連したあらゆる規格に準拠している。

ST53Gは、STPayスマートカード・オペレーティング・システムと、セキュア・マイコンに実装されたVISA / Mastercard / JCB認証済みバンキング・アプリケーションをすぐに動作させることができる。

ST53Gは現在サンプル出荷中で、WFBGA64パッケージ(4 x 4mm)で提供される。2018年第1四半期に量産が開始される予定だ。

ST53Gの技術情報

セキュリティ

セキュア決済用ICを内蔵したST53Gシステム・イン・パッケージ(SiP)は、ARM SC000 SecurCoreプロセッサ搭載のST31G480セキュア・マイコンを活用することで、スマートカード・アプリケーションを実現。

このSiPは、公開鍵暗号用のNESCRYPTコプロセッサと、AESやトリプルDESなどのアルゴリズムを実行するハードウェア・アクセラレータを備えたセキュリティ・アーキテクチャを採用している。

また、耐タンパ性を高める保護機能(アクティブ・シールド、環境モニタ、各チップが持つ固有のシリアル・ナンバーのほか、多数の攻撃に対する保護機能など)を持っている。これらの機能が、SC000コア上で動作するソフトウェア・ベースのセキュリティを補完し、ユーザの認証情報を保護するという。

ウェアラブル決済を可能にする技術

非接触ICであるSTS3922 RFブースタは、アクティブ負荷変調(ALM)を使用して、カード・エミュレーション・モードでの通信範囲と無指向性無線通信の性能を最大化する。

これにより、小型アンテナを使用しても、機器・リーダ間位置の許容範囲を従来の非接触スマートカード以上に大きくできるため、利便性の高いウェアラブル機器を実現する。

またST53Gは、最低限の追加コストで小型アンテナを基板上に形成しているため、最終製品のコストを最適化できる。一般的に難しいとされる金属ケースの使用も、ケース自体をRFアンテナの一部として利用することで可能となる。

さらに、消費電力とゲインの自動調整、感度調整、信号 / リーダ間電界の位相差調整などの機能により、あらゆる範囲にわたり安定した通信を実現する一方、各種交通機関のチケット発行システムなど、さまざまなリーダおよび端末との相互接続性を向上させる。

低消費電力を特徴とするセキュア・マイコンであるSTS3922と、専用のウェイクアップ出力により、ST53Gは未使用時の電源をオフにできるため、バッテリ駆動時間を最大化できる。

相互接続性

ST31G480セキュア・エレメントはEMVCoとCommon Criteriaに準拠している。また、STS3922はISO/IEC 14443とEMVCoレベル1に準拠しているため、既存の決済およびチケット発行インフラに対応し、完全な相互接続性を得ることができる。

無線チューニング・ツールに加えて、さまざまなウェアラブル機器のアーキテクチャにカード・サービスを実装するソフトウェア開発キット(SDK)プラットフォームのほか、リファレンス設計、拡張ボード、事前認証サービスも提供されるため、ユーザは開発の簡略化と製品開発期間の短縮が可能だ。

【関連リンク】
STマイクロエレクトロニクス(ST)

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