小売業界もプラットフォーム時代へ、「Amazon GO」の先に見えてくること ―八子知礼 x 小泉耕二【第3回】

この記事は、IoTNEWS代表の小泉耕二と、株式会社ウフル専務執行役員で、IoTNEWSの運営母体である株式会社アールジーンの社外取締役でもある八子知礼が、IoT/AIに関わる様々なテーマについて、公開ディスカッションを行う連載企画の第3回だ。

前回は「IoT/AI時代における物流」をテーマに議論を行った。話題は、Amazonや楽天の動向、物流倉庫としてのコンビニの役割、サードパーティロジスティクス(3PL)に期待する役割など多岐におよんだ。

物流網は末端に自律分散される流れへ ―八子知礼 x 小泉耕二【放談企画 第2回】[Premium]

第3回のテーマは、「IoT/AI時代の小売・流通」だ。前回の物流とも密接に関わるテーマである。

小売流通といえば、今年の1月にシアトルでオープンした「Amazon GO」に代表されるような、オフライン店舗におけるIoT/AIの導入が注目を集めている。

小売流通の世界は、消費者にとっても、また事業者にとっても大きく変わろうとしている。八子と小泉は、小売流通の専門家ではないが、業界の垣根をこえるIoT/AIにおいて、全体から俯瞰する視点で小売流通の未来について語る。

ワクワクする「Amazon GO」のテクノロジー

小泉: 小売のIoTといえば、先日(1月22日)シアトルで無人コンビニ「Amazon GO」が一般公開となりました。八子さんは、Amazon GOについてどのようにお考えですか。

八子: あくまでも伝聞による情報から受けた印象にはなりますが、やはり面白そうですね。ワクワクします。

というのも、お店に行く目的そのものもそうですが、顧客が商品を選んだ時に、どこで何が検知されているのかといった、仕組みにとても興味があります。

店舗フォーマットは、コンビニと同じくらいだとは聞いていますが、どれくらいの密度でテクノロジーがこめられているのか。またそのテクノロジーのうしろで、どのような処理がクラウドでなされているのかも、興味がありますね。

小泉: 聞くところによると、天井に相当な数のカメラがついていて、棚にはセンサーもついているみたいですね。ただ、実際に店舗に足を運んだ方の報告をネットなどで見ていると、棚にセンサーがついているようには見えませんでした。

カメラやセンサーは、どういうところを見ているのでしょう。画像だけだとすると、かなり高精細な画像処理をしないと判別できないのではないでしょうか。

たとえば、お客さんが薄いチョコレート3枚とった、4枚とったということを判別するのは難しいような気がします。そのあたりはどうでしょう。

八子: おそらく、複数台のカメラで連携して判断しているのだと思います。一つの情報によると、1平方メートルあたりに1台のカメラが設置されているようです。

あくまで実験店舗ですから、それくらいの高い密度で実装することが可能なのかもしれません。ただ、やはりそれくらいの密度で実装するとなると、複数のカメラで撮ることが前提となってきます。

その際に、どういう画像処理をしているのか、どれくらいの角度でカメラがヒトやモノを見ているのかが気になります。また、店内には人がたくさんいるわけですから、それらをどのようなアルゴリズムで処理しているのか、興味深いです。

ただ、Amazon GOの店舗はとても小さく、入口には案内をしている従業員が2人立っているという情報もあり、あくまで仮説ですが、入店制限をしているのではないかということも考えられますね。

事業者から見た「Amazon GO」のメリット

小泉: 技術的にはとても興味深いAmazon GOですが、消費者目線からするとどうでしょうか。わたしが少し不安に思っているのが、店内でわからないことや気になることがあったときに、それを聞ける相手がいなくなってしまうのではないかということです。

そういう意味では、Amazon Goのような仕組みは、わかりやすい商品を並べるような店舗にしか使えないということもあると思うのですが、どうでしょうか。

八子: Amazon GOは無人店舗という表現をされることが多いですが、実際に「Amazon GO」に行った方の体験記を読むと、無人ではありません。接客や棚だしをするようなスタッフはいます。

ただ、たくさんはいませんし、レジにもいません。これまでだと、店舗の中では、ストックヤードにいる人やフロントローディングしている人たちよりも、レジ周りの人員の方が多かったはずです。

(無人にすることで)そこにいた人たちが、接客や棚だしに回れるわけですから、お客さんと話す機会はもっと増えるのではないかとは思います。

小売業界もプラットフォーム時代へ、「Amazon GO」の先に見えてくること ―八子知礼 x 小泉耕二【放談企画 第3回】[Premium]
株式会社アールジーン社外取締役/株式会社ウフル 専務執行役員IoTイノベーションセンター所長兼エグゼクティブコンサルタント 八子知礼

小泉: 接客に対する教育コストという観点もあります。たとえば、従業員が2人いたとして、片方がバックヤード側の担当、もう1人がレジ打ちの担当だとします。そうすると、今までだと、それぞれに2つの仕事を教え込まないといけませんでした。

でも、これから先はレジ打ちの仕事は教えなくていいわけですよね。商品知識は、バックヤードの人もあるでしょうし、その人たちが少し接客寄りの対応をできるようにさえなればいいですよね。

無人化を進めると、今までは2人必要だったのが1人ですむということになりますね。

八子: そもそも、レジ打ちという仕事そのものにそこまでの付加価値はありませんでした。あったとしても、セール時の対応など特殊な場合ですよね。基本的には、バーコードで商品情報を読み込むのが仕事です。

あまり付加価値のある仕事をしていないのであれば、そこを無人化したいというニーズは、事業者としては当然なのかという気はします。

小泉: スーパーマーケットで買い物をしてレジに行くと、速いレーンと遅いレーンがあります。チェーンストアの人からすると、レジのスループットはとても大事ですから、そのスループットがゼロ秒になるということを考えると、チェーンストアの人はやりたいと思うでしょうね。

八子: そうだと思います。レジ打ちは、あまり付加価値が高い業務ではないのにもかかわらず、チェーンストアのボトルネックになっているのであれば、そこを無人化して少なくともスループットを上げるということについては、最大化していくことにならざるを得ないのかなと思います。

消費者から見た「Amazon GO」のメリット

小泉: 店舗側のメリットはよくわかったのですが、消費者側のメリットはどのようなことがあるでしょう。

八子: なによりも、ワクワクすると思います。なぜなら、今までだと商品を選んだあと、最後はレジに並んで購入するというプロセスがあったわけですが、「Amazon GO」では、自分の鞄に商品を入れてそのまま店を出るわけですからね。

ユーザーも、勝手に商品を持ち出してもいいものかという、スリルがあるのではないでしょうか。それが、ワクワク感につながるでしょうね。

他には、陳列棚にないものについて、新たにラインナップしてほしいものなどのリクエストを出せるようになるのではないでしょうか。

今はある程度限定された店舗の中でやっていますから、棚には限られた商品しかありません。店舗側からすると、今の限定された状態から、どう商品ラインナップを拡充していくかということが課題になるでしょう。

一方、顧客からすると、商品が絞り込まれている分、選びやすいということもあると思いますが。

小泉: 駅のキオスクなどの場合だと、店の面積は小さいですし、買う側も何を買うかあらかじめ決まってるからいいですね。

そのような場合には、Amazon GOのような仕組みはとてもいいと思います。一方で、商品をじっくり見たい場合もあるとは思いますが、いずれにせよ待たなくていいというのは、メリットだと思いますね。

顔認識はあたりまえになりつつある

小泉: Amazon GOのような仕組みは、提供者、利用者の双方にとってメリットがあることが見えてきました。では、Amazon GO以外に、小売業のトレンドと言えば、どのようなものがあるでしょうか。

八子: 来店者の顔をカメラでとらえ、誰が来たのか、それはお得意様なのか、などを判断して接客の仕方を変えるというソリューションが、徐々にですが取り入れられつつあります。

ですから、店舗において、カメラによって個人を識別するというのは、もうびっくりするようなソリューションではないという状況になってきていると思います。

小泉: そうですね。ソリューションを提供する側からすると、もうびっくりするような話ではないですね。

昨年も、小売の業界に関わるさまざまな方とお話をしてきましたが、データベースマーケティングなどをやられてきた企業は、その既存のデータに画像認識の仕組みをうまくかけあわせて、顧客の購買動向をとらえるという取り組みをやられています。

その際、顔の画像は撮っていますが、そのデータはすぐに捨てて、特徴だけをマーケティングに活かしていますというような文言を、お店のどこかにきちんと掲示しないといけないみたいですね。

そのようなこともすでに動き出しているみたいですから、実店舗での本格的な導入というのは、もう近いのではないでしょうか。

ところで、小売店舗で使えるようなカメラというのは、どれくらいのスペックのものをいうのでしょうか。

八子: ある程度の解像度は必要だと思います。たとえば、顔の特徴量をとらえるには、少なくとも数百万画素は必要でしょう。

一方、確かに画素は大事ですが、目的にもよると思います。たとえば、ヒトの顔を撮るのか、あるいはヒトの動線の情報を取るのかで、必要とされるカメラの性能は変わってくると思います。

また、さきほどのAmazon GOのように、何平方メートルあたりに何台設置するのかといった、設置面積にも大きく関わってきますね。そのカメラで何の情報を取りたいのか、目的は何なのかによって、必要なカメラのスペックは変わってくるでしょう。

小泉: そうですね。たとえば、小さなチョコレートの画像を撮りたいということであれば、高精細なカメラが必要です。一方で、人の動きをとらえたいということだけであれば、そこまで高精細なカメラはいらず、クラウド側の処理ですむ話かもしれません。

八子: また、Wi-Fiのモジュールと密に連携させるような、カメラを複合体として使うようなデバイスもあります。目的によって、必要とされるカメラのタイプは様々です。

小売業界もプラットフォーム時代へ、「Amazon GO」の先に見えてくること ―八子知礼 x 小泉耕二【放談企画 第3回】[Premium]
株式会社アールジーン代表取締役/IoTNEWS代表 小泉耕二

店舗IoTに必要なネットワーク環境

小泉: ネットワークはどうでしょう。ネットワークが完備された小売店舗というのは、あまり聞いたことがありません。でも今後は、たくさんのセンサーでヒトやモノの動きを検知していこうと思うと、ネットワークは重要です。

八子: そうですね。POSを導入している店舗では、すでに有線ネットワークが使われていますね。一方、店内の価格表示をデジタルに入れ替えるようなソリューションを使う場合には、非接触の無線が必要です。

私は、小売流通のお店に入った場合には、Wi-Fi環境があるのかどうかを結構みるのですが、最近では、ポータブル端末がそのまま無線につながるようになっていることもあり、Wi-Fi環境が整っている店舗はちらほら見かけます。

小泉: ネットワークは、干渉することがよく問題になります。ポータブル端末程度であれば、数名が使う程度なので問題ないかもしれないですが、センサーの数が増えてくると、そうはいかなくなるかもしれませんね。

八子: そうですね。西友などで一部導入されているような、プライスタグをデジタルで書き換えるようなものでは無線を使いますが、それは店舗内のWi-Fiとは別回線にし、干渉しないようにしなければなりません。

また、BLEのビーコンは、2.4GHz帯でWi-Fiと干渉するので気をつけなければなりませんね。もし、店舗の動線管理のためにBLEビーコンを導入するということであれば、2.4GHzのWi-Fiを使用するのはやめた方がいいでしょう。

ウフルの本社でも一時期、それで問題になりました。

小泉: ウフルの本社では、BLEビーコンを使って、社員がどこにいるかわかるようになっているのですよね。

八子: はい。ビーコンの数を増やせば増やすほど、混線してWi-Fiがつながりにくくなりました。そのため、Wi-Fiは5GHz帯に変えました。

小泉: なるほど。そして、BLEはその分空いた2.4GHz帯を使っているということですね。

そうすると、デバイス側が5GHz帯に対応していないような場合は困ってしまいますし、今後はデバイスメーカー側もそのようなことを考えていかなければならないでしょうね。

まだ実際に現場でネットワーク環境をおいて、IoTで色々試してみるという実績がない状況ですから、下手するとお店をオープンした後に、ネットワークが干渉してうまく機能しないということも起きかねません。

RFタグはいま、どうなっているのか

小泉: 小売業は、サプライチェーンの先端としての位置づけもあると思います。前回もちょうど、物流の議論をここでさせていただきました。

物流面における小売といえば、RFタグを使った商品管理が一つのトピックです。RFタグを使うことで、商品がどこにあるかが管理し、商品の欠品情報をきちんと管理しながら、補充していくようなことが可能になります。

このような方法は、昔から言われてきたことだとは思いますが、今はどのような状況でしょうか。

八子: RFタグの値段が下がってきているとはいえ、まだまだ1個あたりの価格が1円を切るレベルにはなっていません。ですから、やはり今の段階で店舗内のすべての商品にタグをつけるというのは、あまり聞いたことがありません。

むしろ、たとえば3年後に向けて、タグの数を増やし、単価を強制的に下げていこうというような取り組みを始めている企業はあります。たとえば、ユニクロなどですね。しかし、まだ本格化しているとは言えない状況だと思います。

小泉: アパレルなどでは、商品1点当たり安くても1,000円程度の単価はあります。RFタグ1つあたり1円のインパクトは大きいとは思いますが、まだ払えるレベルです。

でも、スーパーの野菜やお菓子など、商品単価が数十円などの場合には、かなり響いてきます。1円の重みはかなり大きいと思います。

八子: その場合は、バーコードで代替することを考えなければならないでしょう。普通のフィルムや包装紙に印刷するという方法です。野菜などの領域などでは、普通にやられていることです。

RFタグで、どこまでのボリュームを管理するのか、あるいは(店舗に並べておく)サイクルがどれくらいの長さのものを管理するのか、今後一つの論点にはなってくるでしょうね。

小泉: そうですね。トレーサビリティという言葉一つとっても、概念的にはよくわかりますが、本気でトレーサビリティをやろうとすると、どうしてもコストが大きくなってしまいます。

どんなに高くてもいいから、どこでつくったニンジンなのか知りたいという顧客もいるかもしれません。でも、すべての消費者がそれを望むのかというと、必ずしもそうではありません。なかなか、一概には広げていくことは難しいですね。

八子: ロジスティクスという点から少し切り離して、コンビニのストックヤードを見た場合に、たとえばそのなかにある在庫は、小売りの責任なのか、メーカー側の責任なのかということが大事になってきます。

もし、小売りの責任になった場合は、それをどのように需要にあわせてスムースに吐き出していくのか。もしくは、需要を刺激することはできないのか。たとえば、キャンペーンやクーポンというものを、近くを通りかかった人たちのスマートフォンに配布し、店舗に来てもらう。そのようなサービスが重要になってくるでしょう。

もしくは、お店に入ってもらうのにどういう工夫をするのか。呼び込みをするのか、スマートフォンに呼びかけるのか、オンラインとオフラインの手段を両方使って、できるだけ店舗に入ってもらう。

そして、入ってもらったら、接客や動線をどうするかといった取り組みが走り始めます。ですから、需要を刺激する、在庫をミニマムにしておくというのは、共通の課題であると思います。

必要なのは、仕組みではなく儲ける方法

小売業界もプラットフォーム時代へ、「Amazon GO」の先に見えてくること ―八子知礼 x 小泉耕二【放談企画 第3回】[Premium]

小泉: マーケティングの観点で見た場合ですが、まずはお店を知ってもらうことが第一歩です。次は、店舗の近くに来た人たちをどうやって店内に引き込むか。

そして、引き込んだ人たちに商品を手に持ってもらい、買いたい気持ちになってもらえるかどうか。この一連の流れを小売事業の方々は回していくことになります。

それに対して、IoTで何ができるかということが問題です。これまでも、IoTで色々なソリューションが出てきています。たとえば、マーケティングオートメーションのような、プロモーションをうまくやっていく仕組みが出てきています。

あるいは、店舗の前を通っている人に対しては、スマートフォンと無線通信を使うことによって、お店の前を通ったかどうかをカウントし、その人が実際にお店に入ったかどうかをトレースするなどの取り組みもあります。

お店に入ったあとも、先ほど話題にも上がったカメラを使って、顧客の動向を追いかけることはできます。ですから、ヒトの行動を見ていく仕組みはできてきていると思います。

一方で、いわゆるマーケティングですね。自分たちをどうやってアピールするのか、あるいは、どうやって知ってもらうかの方が大切だったりします。また、どんなに仕組みが整ってきても、儲けないと意味がありません。

八子: 儲けるための方法はたくさん出てきているとは思いますが、大事なことは目的です。そもそも、客数を増やしたいのか、複数のモノを買ってもらって単価を上げたいのか、いくつかの方向性があると思います。

その際には、店内にどのような商品を置くかによって変わってきますし、小売とひとことで言っても、日販品なのか、洋服なのか、あるいは嗜好品なのかで変わってきます。

嗜好品の場合は、単価が高いので、お客さんにどんどん来てもらわないと売上が上がりません。一方、日販品については、客数が多かったとしても客単価は低いですから、ついで買いを誘発して、客単価を上げるというような仕組みが重要でしょう。

このように、客数と客単価の2通りのディメンションで考えていかなければなりません。

そのためには、スマホでクーポンを発行しておく、もしくは店のあちこちで気づきを与えるようなこと(それはたとえば、物理的なコップなどかもしれません)。あるいは、店の中でもっと顧客の誘引をうながすような巡回アプリなどです。

また、小売は小売でも、大規模なショッピングセンターだと、どこに店があるのかがわかる全体のマップがまず必要です。さらに、その中で1階から3階まであるモールのなかを、どのように歩いていくべきなのかといった回遊支援のアプリなども考えられるでしょう。

このように、お店の規模、業態、扱っている商材によって、アプローチの方法が大きく変わってきます。

小売流通もプラットフォーム時代へ

小泉: これまでは、地元のスーパーマーケットの店長やオーナーは、そこにやってくる主婦の顔色や客層などをなんとなく感じ取って、品ぞろえを考えたり、「これを特売にするといい」など、チラシの出し方を考えたりしていたと思います。

つまり、IoT的に言うと、人がセンサーになって、お客さんをセンシングして、頭という名のAIで考えて、その結果ヒトがプロモーションなどをしていたことになります。

これからの時代は、できればヒトではないものがセンシングし、ヒトじゃないものが考え、ヒトじゃないモノがアクションしてほしいと思います。

現状では、ツールはあるものの、結果としてやりたいことはヒトが決めています。そうではなく、動線解析をして、ヒトの嗜好なども全部わかったら、「品ぞろえはこれがいいよ」というように、答えだを出してくれるようなものは、すでにあるものなんでしょうか。

八子: そこは、AIの登場になってくると思います。現時点でも、AIとまではなくても、リコメンデーションする機能はあります。ただし、それはオンラインに限ります。それを次は、オフラインに持っていくという話になると思います。

小泉: なるほど。実店舗ではこれまで、経験と勘というものが現場に根付いていて、それによって儲けることができていた部分も過分にしてあったと思います。

そういったことが、デジタル的な解釈によって、「こうした方がいい」とサジェスションされ、その通りに人が動くというのは、なかなか厳しいのかなとは思います。

「Amazon GO」のような仕組みでは、ヒトの経験や勘はもはや入れられないですよね。商品の陳列からして、なんなら機械にやらせてしまおうと考えているのではないかと思います。

でもそうすると、Amazon GOのダイナミズムというのは、実は動線解析することだけじゃなく、実際にどのような商品を並べるべきか、どのように陳列すべきかというノウハウみたいなものじゃないかと私は思います。

それを、彼らがつくってしまったときが面白いですし、競合にとっては危惧すべきことのように思います。

これまでも、アルゴリズムやAIは答えを出してきてたわけですが、それが人間にとって理解できないものだから、人間がそれを採用するかしないかを決めずらい局面はよくあったと思います。

たとえば、理由はよくわからないけど、AとBを横に並べたら売れるというようなことですね。昔で言うと、ビールとオムツです。でも、誰もやりませんでしたよね。

それをどこまで信じて、どこまでやってみるかですが、実際はやってみないとわからないと思います。

ただ、小売店舗においてはさきほども言いましたが、1個当たりの単価が安いから、経験と勘じゃないことは信じて実行しにくいのではないかと思いますね。

そもそも、1個100円の単価の商品などにおいて、デジタルを取り入れていくことはどこまで可能なのかと考えてしまいます。

八子: もちろん、今は移行期ですから、経験と勘を中心にしないと難しい場合もあると思います。一方で、小売流通をやったことのない人たちが、この業界に入ってくるということが起こってくるでしょうね。

特に、IT企業です。アマゾンがそうですし、楽天もそうですね。このように、これまで実店舗を持っていなかった企業が、実店舗を持った場合にどうなるのか。

あるいは、アマゾンは、今は自社の店舗として「Amazon GO」を運営していますが、これからあの店舗を世界中に展開していくとは私は考えていません。おそらく、プラットフォームとして開放するだろうと思います。

そうすると、あのようにオペレーションを極小化して実店舗を運営できるノウハウだけが提供されるのであれば、これまでお店を持ったことのなかった人たちが参入するでしょう。

また、参入するのであれば、ほとんどそのお店の中では全自動のような仕組みを、まったく小売をやったことのない人たちがやり始めることになります。

小泉: なるほど。面白いですね。今は、そういう時代なのかもしれません。テスラは、自動車メーカーではありませんでしたし、Uberもタクシー会社ではありませんでした。

それまでその業界とは関係のなかった企業が、デジタルの仕組みを駆使して、既存のマーケットを完全に駆逐するまではいきませんが、かなりの存在感を持てるチャンスがあるのが今の時代です。小売業界においても、そのような動きが出てくるだろうということですね。

本日はありがとうございました。

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