渋谷発コ・ワーキングスペース「TECH LAB PAAK」と入居スタートアップ紹介

新しく何かをはじめたいと思ったら、多くの場合、場所が必要になるだろう。

渋谷にあるTECH LAB PAAKは、リクルートが運営している会員制のコワーキングスペースだ。ここはテクノロジーをベースとした事業で審査に通ることができれば、無料で使うことができる。さらにメンターにアドバイスをもらったり、新しい仲間を作ったりすることができるという魅力的な場所だ。

しかしなぜ、リクルートがコワーキングスペースを作ったのか。株式会社リクルートホールディングス R&D本部 TECK LAB PAAK 岩本亜弓氏にお話を伺った。

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左前:株式会社リクルートホールディングス R&D本部 TECK LAB PAAK 岩本亜弓氏、左奥:株式会社リクルートホールディングス R&D本部 TECK LAB PAAK 宇都宮竜司氏/IoTNEWS代表 小泉耕二

-施設のご説明をお願いします。

「TECH LAB PAAK(以下、PAAK)」は、社会課題に対し「テクノロジーをベースとした新しい価値の創造を支援する会員制スペース」として昨年11月に開設しました。企業が応援するオープンイノベーションの場の多くは、将来的な投資対象とすることを念頭に置かれていることが多く、あまりにも先進的すぎるサービスや社会的な価値は高いもののマネタイズの難しいサービスなどには支持が集まりにくいという実情があります。

そのため、 PAAKは「投資対象かどうか」ではなく、世界のあり方を変えようとするサービスかどうかをベースに会員審査を行い、そのサービスが次のステージにいくことを純粋に応援するプラットフォームとして機能させたいという思いで立ち上がりました。

PAAKでは、ITものづくりに最適な環境を完備し、勉強会・イベントなど学びの機会を提供し、現状の枠組を超えた、まだここにないもの、イノベーションの創出を支援しております。審査を経てPAAK会員になると、会員同志の交流会、海外ゲストを招いた講演会や勉強会、メンタリングを受けることができ、施設利用料はもちろん、Wi-Fi、全席電源完備、ドリンク・スナックなど、すべて無料で提供されるため、志を共にする新しい仲間に出会い、自分の作りたいものにとことん没頭することができます。

 

-なぜリクルートがこのような場所を運営しているのでしょうか。

よく聞かれるのですが、裏表なく、世の中を良くするサービスを世界に対して生み出すことを強く意識しています。PAAKを主管している組織は、社内ではR&D本部であり、主に投資、事業開発、研究に取り組んでおり、組織としてい多方面から世界に対して生み出すイノベーションの最大化に向き合い、PAAKはその一端を担っています。

PAAK
株式会社リクルートホールディングス R&D本部 TECK LAB PAAK 岩本亜弓氏

 
-会員システムについて教えてください。

PAAKでは約3ヶ月に1回、最大5名までのチームで応募できる会員審査をさせて頂いています。TECH LAB PAAKとして応援したいという人だけを選ばせていただいているという中で、書類の審査と面接の審査の2段階があります。

会員さんのメリットは大きく3つ。1つ目は無料で6か月間自由に施設を使うことができます。2つ目は、その会員期間中はネット環境、設備、ドリンク、スナック、全て無料で利用頂けます。3つ目に何より大きいのは仲間と繋がる、そして成長できることだと思います。会員さん同士のコミュニケーション、そしてリクルート社内の人間はもちろんですが、この場のコンセプトに共感してくださる方も多く、様々なスタートアップやのCEO・CTOや、投資家の皆さん、さらには海外ゲストをメンターに迎えたり、イベントには各社のメディアなど、色々な方と接点を持って頂くことができます。

 
-チームでないとダメなのでしょうか?

チームではなくて、1人でも大丈夫です。スタートアップだけという印象をもたれがちなのですが、社会活動家や、大学と一緒に研究をされていたり、大学院生で研究をビジネスに昇華させていきたいという方などもいらっしゃいます。

会員の形態は大きく3つで、プロジェクトメンバー、コミュニティメンバー、アカデミーメンバーという構成になっています。3か月に1回会員募集をして、登録期間は半年間なので、順繰りで会員さんが入り混じる形になっています。今は約80組200名の方に所属頂いています。

プロジェクトとコミュニティメンバーについては、何かご自身のプロジェクトもしくはプロダクト、研究テーマをお持ちで、そこをブラッシュアップしていきたいという方になっています。アカデミーメンバーだけは技術力をもった個人で構成されていて、会員期間中に御自身の技術を活かしてプロダクトを作るという経験をして頂いています。そこで選ばれれば、プロジェクトやコミュニティ会員へステップアップすることも可能です。

PAAKは渋谷公園通りにあるappleのビル、6階&7階にあり、2フロアを全く異なった雰囲気にして会員さんに利用して頂いています。

まず6階は「オープンでクリエイティブな空間」をテーマに作られた開放的で自由な空間です。コミュニケーションを重視しているので、卓球台が置いてあったり、毎日イベントが行われていたりします。。次に7階は「洗練された集中できる空間」をテーマに、雰囲気的にも静かで集中できる、開発にも適した空間です。会議室も完備しており、会員さんの打ち合わせ等に使用頂く他、リクルート社員や社外メンターの方からのメンタリングが行われていたりします。

PAAK
6階
PAAK
7階

 
-いい人たちがうまく育ってくれればいいな、そこに関われればいいなというイメージを感じました。

そうですね。私たちもオープンイノベーションを通じてみんなでもっといい世界を築いていこうというところに注力しています。

 
-テクノロジーによって様々な事ができるようになって、社会基盤をよくしようと思うと、できることを知ることから始めてもらわないと、本当に思いつくべき人が思いついてくれないというか、できる人とうまく関わりあうことで、自分がイメージできる素敵な社会がくるといいなと思っています。

これは個人的な意見ですが、リクルートで働いている中で、そもそもリクルートが新規事業を生み出すということをとても大事に思っていると感じていて、だからこそ、世の中の新規事業に取り組んでいる人たちを心から応援するということができるんだと思います。

 
-アイディアを持ってる人、技術を持ってる人を近くでみられるだけでもいいですよね。今までだと閉じていたことを、開くことで新しいイマジネーションを掻き立てられる、これぞオープンイノベーションなんだろうな、と感じがします。メンター制度についてですが、実際にモノを作ってみると技術的に行き詰まるケースも多いと思うのですが、そういう時はどうするのでしょうか?

現段階では、技術のメンターは課題です。これまではビジネス的なメンタリングしかできてこなかったので、今まさに取り組もうとしているのが、リクルートの中で活躍しているエンジニアやオープンイノベーションに共感してくれるようなエンジニアを集めて、その方々をを技術メンターとしてお迎えし、メンタリングや、技術に特化したミートアップ等を開催しようかなと思っている段階です。

今は「これわかりそうな人いますか?」と聞かれた時に、ご紹介することもありますが仕組みとしてはできてなかったので、どんどん新しい事はやっていきたいです。

PAAK
IoTNEWS 代表 小泉耕二

 
-これからですね。そこを乗り越えて製品できてしまえば、マーケティングや販路などは御社の得意するところですね。

そうですね。販路や組織をどう作ったらいいかなど、幅広い疑問を持ち、メンターに相談しているようです。

 
-インターネットサービスだとスケールするときに、PCと向き合ってできますが、IoTだとモノを作らないといけないので、ここの敷居が高く、プロトタイプから製品にするというのは難しいですよね。製品用の部材をどう集めるのかなどを相談できる方がいるとよいですね。

PAAKにも3Dプリンターなどを用意しているのですが、なかなか使える方がいなくて、それを使ってハッカソンをやってみるということもチャレンジしてみました。そのメンターになってくれる方がなかなかいないのが現状です。

PAAKでもIoT関連のセミナーなども増えてきました。一回作ってみると作れると思うようになるので、次もやってみようと思うようです、一方で、何か課題に対して解決できるソリューションのアイディアを思いついたとしても、技術を持ってない人もいます。片方、技術はあるけど、何を作ったらいいかわからないという技術者もいるので、そのマッチングができるといいなと思います。

 
-ありがとうございました。

 

続いて、PAAKの会員に話を伺った。

株式会社aba 宇井吉美さん

株式会社aba 宇井吉美さん
株式会社aba 宇井吉美さん

株式会社aba 代表取締役、千葉工業大学卒。

中学時代に祖母がうつ病を発症し、家族介護者となる。その中で「介護者側の負担を減らしたい」という思いから、介護者を支えるためのロボット開発に道を進める。在学中に介護者を支援するためのロボット開発をおこなう「学生プロジェクトaba」を発足。その後、プロジェクト内の開発を製品化するべく、法人化。株式会社abaを設立した。現在、第一製品Lifilm(リフィルム)の製品化のため、営業、マーケティング、資金調達など、開発以外の社内業務を一手に引き受ける。またその事業性、社会性、革新性が認められ、様々なビジネスコンテストで受賞、メディア掲載も多数ある。

介護では、ベッド上で高齢者障がい者が排泄してしまうことがある。宇井さんが作っているのは、その介護の際に、排泄を匂いで検知し、それを通知するということと、その際に取得したデータを積み重ねてその人はそもそもいつ排泄しているか、という排泄パターンを取るという、2つのサービスだ。ローンチはこれからだが、ほぼハードウェアはできあがっていて、現状は、ソフトウェアの作りこみをしている段階。

宇井氏は「今でいうと、人工知能にあたるような領域をやっています。排泄物から出ている匂いはアンモニアや硫化水素が多く含まれているのですが、例えばアンモニアだけを検知するセンサーにすると3~5万と、非常に高価なものになってしまいます。

しかし、空気清浄器用に入っているセンサーは年間数百万台出ているので、普通に買っても数千円で済みます。他の用途の安いセンサーを、自分たちが使いやすいようなアルゴリズムで無理やり使えるようにし、ハードはプアだけどいかにソフトウェアで頑張るかという点にチャレンジしています。」とコメントした。

ハード製品はオリジナルで作っているものがあり、シートの形をしていて穴があいていて、その穴から常に空気を吸って、排出した空気の中にある程度匂い成分があれば、検知するという仕組みのもので、来年の秋にお披露目予定だ。「少なくても受注が受けられるようにしたい」という。

Temari(旧GameChanger) Founder 歌野真理さん

Temari(旧GameChanger) Founder 歌野真理さん
Temari(旧GameChanger) Founder 歌野真理さん

新卒で楽天(株)に入社し、楽天トラベルで新規営業を行う。国際開発部ではエンジニアとして台湾・中国市場の立ち上げ、企画調査部で内外の環境分析を行う(株)インテリジェンスに入社後は、サービスのリニューアル・新規企画・推進、Webマーケ業務に携わる。自分の病気(アトピー)、祖父の死、海外の医療系ガジェットの出現により、課題を感じる医療業界での起業を志す。健康・未病領域からの起業を目指す。SWTなどのスタートアップイベントへ参加し、海外発の第1回StartupLeadershipTokyoの卒業生。事業テーマは『家族の健康と教育』で、ターゲットは主に子供・女性・高齢者。現在は第一弾として、子供向けの歯磨きIoTデバイスのプロジェクトの推進をおこなう。

歌野氏は、家族の日常の辛いことを楽しく変えるためのプロジェクトを推進し、女性視点で生活に密着したIoTデバイスを作っている。その第1弾は、健康と育児の課題を解決するシャカシャカぶらしという歯磨きガジェットを試作中だ。

「習慣づけで大変なのは歯磨き」というデータがあり、実際子どもを押さえつけたり、追いかけたりしている。シャカシャカぶらしは、子供にとって嫌なイメージがつくことを避け、歯磨きを楽しく習慣付けさせることを目的とする。それにより、親の育児の負担も減る商品だ。歯磨きの動きをセンシングし、アプリ側でその動きをゲームにし、歯科医監修のもとに正しい歯磨きになるような機能もある。名カーズフェアやヒアリング調査などで子共達に試して貰ったところ好評だった。

現在は量産に向けてプロジェクトを進めており、昨年のシリコンバレーと日本をつなぐピッチイベント『第7回JapanNight』ではセミファイナリストに、本年は経済産業省主催の『始動NextInnovator2015』プログラムにも選出された。

株式会社 空 共同創業者兼副社長 松村大貴さん

株式会社 空 共同創業者兼副社長 松村大貴さん
株式会社 空 共同創業者兼副社長 松村大貴さん

PAAK3期生で、飛行機を作っていたメンバーなど、飛行機好きが集まっているチーム。もともと軍事利用だったインターネットがここまで広がったように、飛行機も自由にしたいと思い、島々をめぐるような電気飛行機を作りたいという。「現状はまだ全体のプロジェクトの最初の5%程度なので、5~10年かかるプロジェクトのまだ半年目です」とコメントした。

日本は2600機、アメリカは20万機、小型の飛行機が飛んでおり、東南アジアなど島国では少しずつ伸びていて、飛行機に乗れる人が増えてきているそうだ。http://sora.flights/

有限会社カイカイ 霜山昭彦さん 佐藤剛士さん

有限会社カイカイ 霜山昭彦さん 佐藤剛士さん
有限会社カイカイ 霜山昭彦さん 佐藤剛士さん
ウェブ、モバイル、ポータルサイトへのコンテンツ提供、マーケティング、ディズニーグッズなどの製作販売を行なう。2015年よりスマホアプリ開発とともに、量産販売用のIoTデバイスを開発中。itunes app storeで Yumehoshi 配布中。

 

釣り好きなメンバーが揃っているカイカイ。フィッシングログが取れるという、温度センサーとLEDが入っているIoT釣りウキを作っている。アプリを立ち上げると繋がり、水温をはかることができ、釣れた魚のサイズなどを入力するとFacebookやTwitterに水温と一緒に写真が飛ぶ。

水温がわかると、魚がどれくらいお腹がすいているか、魚がどの辺にいるのかということがわかるというが、一概に言えないという。魚は自分で体温調整ができず、周りの水によるので、自分の好きな温度帯に移動する。一説によると0.03℃の温度もかぎわけて、4分後にはそれにともなった動きをするそうだ。このIoTデバイスが海の中に全て入ってしまうとBluetoothがシャットアウトされてしまうため、釣りウキになっている。http://afrel.pw/

東京大学 大学院 情報理工学系研究科 修士課程 土屋祐一郎さん

東京大学 大学院 情報理工学系研究科 修士課程 土屋祐一郎さん
東京大学 大学院 情報理工学系研究科 修士課程 土屋祐一郎さん
東京大学大学院修士課程在学中.現在休学中。機械学習と画像処理を専門としている。

普通のパソコンの計算能力ではディープラーニングに向かず、専用のハードウェアが必要になり、電気消費量も多い。それではIoTには向かないため、土屋さんは、「より小さくて消費電力をおさえ、それでいて高性能な、ポータブルで使えるハードウェア」を作っている。そのハードウェアにカメラをつけて、見たものの名前がわかるデバイスというのをひとつのゴールとして設定しているという。このマシン自体は学習せず、ラーニング済のできあいのモデルを使っている。

「これから、世界中にばらまかれるセンサーが膨大な量になるので、そのデータを処理するサーバーが間に合わなくなるのではないかと思っています。計算能力をある程度ネットワークのエッジに分散し、できる限りそこで処理をして、必要があれば中央に吸い上げていくのがよいと思っています。さらに、ドローンやロボットなどリアルタイム性が必要なものには、ネットワークの遅延を無視できるようになるのでクリティカルに必要になるのかなと考えています。」とコメントした。

 

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