IDC Japan株式会社は、2020年の国内IT市場において鍵となる技術や市場トレンドなど主要10項目を発表した。
国内も含め、世界の企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた取り組みは継続しており、今後4年の間に世界のGDPの半分以上がDXを実践している企業による製品、サービスから生み出される、いわば「デジタル優位(Digital Supremacy)」の状態を迎えるものとIDCではみている。
DXを実践する企業は、文化、顧客との関り、情報やデータの利用、日々のビジネスオペレーション、働き方など、企業のあらゆる活動を「未来」に向けて変革しようとしている。IDCが「Future Enterprise」と呼ぶこれらの企業は、これからの世界経済を支える主役になっていくと予測している。
国内においても、2020年には東京オリンピック/パラリンピックが開催されると同時に、5Gの商用サービスが開始されるなど、DXを一気に拡大する準備が、社会的、経済的、技術的に整う。こういった環境の中、IDCでは主にITのサプライサイドで2020年に起こるイベントを、以下の10項目にまとめた。
- DXの進展
- Future of Work
- クラウドの変化
- 安心なデータ共有
- インテリジェントビジネスプロセス
- サイバーセキュリティの進化
- エッジにおける競争
- サービスビジネスモデル変革
- IT人材獲得競争
- 立ち上がる5G
2020年の国内ICT市場は、前年比1.3%減となるが、DXに向けた支出は着実に増加する。2020年の国内ICT市場は、2019年のPC市場拡大の反動もありマイナス成長となる。しかし企業のDXへの投資は継続し、「自社に本当に必要なDX」や、従来の情報システムとの連携も含めた全体最適の動きが強まる。
DXで全社最適の実現を目指す企業が増加すると共に、Future of Workの重要性が増大する。「働き方改革」を超えたFuture of Workの動きが強まり、ワークカルチャー、ワークスペース、ワークフォースといった各要素における変革がDXを支える。
2020年の国内クラウド市場は高い成長を継続するが、カオス期を迎える。クラウドファーストの考えがもたらした「結果としてのマルチクラウド」の状態の中、どのクラウドを選ぶのかはますます複雑になっている。その中で企業内のクラウドCoE(Center of Excellence)の重要性が増し、それを通じたクラウドの統合管理を行う企業が増加する。
社外とのデータ共有を行うためのテクノロジーの技術進化が安心感の醸成に寄与し、サプライチェーンなどの分野で適用事例が広がり始める。より広いデータのアクセス/活用が企業競争力の源泉になる一方、それをセキュアに実現することには課題がある。2020年には、その技術的な解決の一方法としてブロックチェーンの活用が始まる。
約半数の企業がビジネスプロセスにインテリジェントな自動化を組み込み、AIベースのソフトウェアを使用して、運用および顧客/従業員エクスペリエンスを実現する。AIやRPA(RPARobotic Process Automation)を活用した業務オペレーションの自動化が進み、そういったインテリジェントな自動化は企業の外部プロセスにも拡大する。2020年はこのようなプロセスの自動化ユースケース(用途)が多様化していく。
東京オリンピック/パラリンピックでデジタル化が進み、サイバー攻撃による被害は甚大化し、リスクベースアプローチによるサイバーセキュリティ対策の重要性が認識される。東京オリンピック/パラリンピックはサイバーセキュリティにとっても一大イベントであり、想定外のセキュリティ侵害がある可能性も考えられる。その中で企業/組織はセキュリティに対する考え方を大きく見直すことを迫られるようになる。
エンタープライズインフラに対する「データ基盤」としての要求が高まる中で、エッジでの競合が本格化する。ITインフラは、DXを支える「データ基盤」になっていき、データを保有する場所の多様化も進む(オンプレミス/オフプレミス、クラウド/非クラウド など)。エッジでのデータ処理や保存も加速し、エッジインフラ市場の成長と競争の激化を招く。
これまでプロダクトベンダーで先行してきた「as a Service」ビジネスへの取り組みが、サービスベンダーにおいても本格化する。ITサプライヤーにおける「as a Service」を目指したビジネスモデル変革が進み、その波はこれまで比較的遅れていたサービスベンダーにも訪れる。2020年は多くのサービスベンダーが産業特化型/特定領域における「as a Service」のビジネスに取り組むことが本格化する1年となる。
アジャイル開発とクラウドネイティブアプローチによるレガシーシステムのモダナイゼーションが加速し、DX向けハイスキル人材の獲得競争が激化する。2020年は、既存システムのレガシーモダナイゼーションが進む年になる。その際、アーキテクチャ変革に加え、アジャイルの採用など開発手法の変革も必須になるが、その際にデジタルサービスに必要なスキルやクラウドネイティブアプリケーション関連の技術を持つ人材の不足が、阻害要因となる。
5Gサービスが開始される。2020年時点では5Gの利用は限定的だが、アプリケーション分野で、5Gの利用拡大に向けた布石が打たれる。東京オリンピック/パラリンピックは5Gインフラ整備を促進するために一定の役割を果たす一方、関心は主にローカル5Gに集まる。製造業を中心にユースケース開発が進むが、技術的に未成熟な面もあり、2020年にはこれらの分野におけるノウハウ蓄積や新たなツール開発も進むであろう。同時に、デバイス分野の5G適用も進む。
IDC Japan リサーチバイスプレジデントの寄藤幸治氏は「ITサプライヤーは、数年のうちに「デジタル優位」の時代が来ることを念頭に置き、その準備をしておかなくてはならない。そのためにも、自らがデジタルファーストの組織になることを目指すべきである」と述べている。
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