ソニー株式会社はこれまで、主にメディア業界における効率的なコンテンツ制作のニーズに対応するため、法人顧客向けにクラウド上での効率的なコンテンツ制作・共有・配信を実現するクラウド制作プラットフォーム「Creators’ Cloud」を提供していた。一方、企業に属さず、フリーランスとして活動するクリエイターが増え、企業からコンテンツ制作を受注したり、制作コンテンツをSNSで発信したりすることで評価を獲得したいというニーズも増加している。
このほどソニーは、Creators’ Cloudを個人向けに提供を開始した。
今回、これまで法人顧客向けに提供してきたCreators’ Cloudをベースに、カメラで撮影した動画・静止画を簡単にクラウドサービスへアップロードするスマートフォン向けアプリ「Creators’ App」、カメラメタデータとクラウドAIを活用した動画編集クラウドサービス「Master Cut(Beta)」、共同作業ができるクラウドメディアストレージ「Ci Media Cloud」、クリエイター同士が繋がり作品を発信するコミュニティ機能「Discover」といった、個人向けのコンテンツ制作ワークフローを支援する各種サービスを提供する。
撮影した動画・静止画を簡単にクラウドへアップロードするスマートフォン向けアプリ「Creators’ App」とクラウドストレージ
Creators’ Cloudで提供するクラウドストレージには、PCやスマートフォンなどの様々なデバイスや、Master Cut(Beta)などのクラウドサービスからアクセスができ、手軽にファイルの閲覧や管理を行うことができる。
スマートフォンからは同アプリ経由で、カメラで撮影した動画や静止画を簡単にクラウドストレージへアップロードでき、PCからはウェブブラウザからCreators’ Cloudにログインし、クラウドストレージへ同様にコンテンツをアップロード可能だ。また、カメラからクラウドストレージへ直接撮影データをアップロードする機能も今後提供を予定している。
ソニーのカメラの対象機種を所有するユーザーには、通常5GBの無償クラウドストレージを、25GBに拡大して提供する。なお、個人向けのCreators’ Appの提供開始に合わせ、現在法人向けに提供中のクラウドゲートウェイアプリである「C3 Portal App」は「Creators’ App for enterprise」に名称が変更になる。
カメラメタデータとクラウドAIによる動画編集クラウドサービス「Master Cut(Beta)」
ノンリニア編集(NLE)ソフトでの最終制作を行う前に、同サービスで撮影時のカメラメタデータとクラウドAIを活用し、簡単に撮影データの下地作りが可能となる。同サービスは、まずベータ版として無償での提供を開始する。
カメラのメタデータを活用した高速な画像解析を行い、撮影した動画の品質を向上する。撮影時のメタデータを活用しカメラの揺れを検出し、短時間で手ブレ補正を行う。加えて、クラウドAIの画像解析が類似するシーンごとに自動でグルーピングするため、クリップを仕分ける手間が省け、より効率的に動画を選びやすくなった。さらに、カメラで付与したメタデータはクラウドとシームレスに同期する。
また、撮影する際、重要なシーンにカメラでマークを付けてMaster Cut(Beta)にデータを取り込むと、メタデータがシームレスに同期され、Master Cut(Beta)上でもマークしたシーンを確認することができる。サービス内でクリップを切り出すときの目印として活用するなど、使い勝手が向上する。
さらに、音源分離による音ノイズ除去と音声レベルの最適化を実現する。動画に含まれる音源をクラウドAIで分離し、マイクの風切り音や環境音のノイズなどを個別に取り除くことができる。複数クリップの不揃いな動画音源からノイズと音声を分離し、クラウドAIにより一括で音声レベルをクリップ間で合わせることができ、作業を効率化する。音声の補正後に、各ノイズの強度を任意に手動で調整も可能だ。
加えて、Master Cut(Beta)にアップロードした動画や編集内容はクラウドストレージに保存・同期されるので、場所や時間を問わず異なるPCからアクセスできる他、クリップの明るさや色合いの補正、ダイナミックレンジの広いガンマカーブS-Log3で撮影した動画コンテンツへの対応や、データサイズが軽いプロキシーファイルを活用した迅速な映像制作ワークフローへの対応など、利用者の声を反映しながら、今後さまざまなアップデートを予定しているとのこと。
画面イメージ
クラウドメディアストレージ「Ci Media Cloud」
Ci Media Cloudは、収録された素材や編集されたファイル映像を共有したり、映像制作の共同作業を可能にするクラウドメディアストレージサービスである。今回、新たにソニーアカウントでの登録・ログインに対応し、個人ユーザーのMy Sony IDを使用してログインが可能になるなど、利便性が向上した。また、Ci Media CloudはスマートフォンやApple TV用のアプリも提供しており、マルチデバイスでの制作ワークフローを支援する。Adobe Premiere Proのパネル機能にも対応し、本格的な編集にも使用することができる。
クリエイター同士が繋がり作品を発信するコミュニティ機能「Discover」
撮影・制作した作品を、世界中のクリエイターへ発信したり、他のクリエイターの作品を閲覧したりすることができる。自身のポートフォリオページを持ち、作品の他に撮影機材や自身の活動拠点の登録も可能なので、自分と同じ機材を使用しているクリエイターや、近隣で活躍しているクリエイターとの出会いに繋がる。Discoverには、Creators’ AppまたはウェブブラウザのCreators’ Cloudからアクセスできる。
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