NTT Com、量子コンピュータでも解読出来ない暗号通信の実証に成功

実用的な量子コンピュータは2030年頃に登場すると予想されており、それに伴い既存の暗号技術による通信が解読される可能性が懸念されている。

そこで、アメリカの国立標準技術研究所(以下、NIST)を中心に、世界各地で量子コンピューターでも解読不可能な次世代暗号への移行が課題となっており、日本では2024年7月から金融庁でも次世代暗号への移行に関する検討会が開始された。

こうした中、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は、プライバシーを保護したままデータを処理するIOWN PETsの技術要素である耐量子セキュアトランスポートとNTT Comの特許技術を活用し、鍵供給まで含めたシステム全体において、量子コンピュータでも解読出来ない暗号通信に関する実証実験に成功したと発表した。

この実証では、量子コンピュータでも解読不可能な複数の次世代暗号技術を、NTT Comのサービスを活用して構築し、スマホやタブレットなどの端末で安全なWeb会議が実現できることを確認した。

具体的には、暗号通信技術である耐量子セキュアトランスポートの鍵交(※)機能を、NTT Comのクラウドシステム上に設置し、クラウドシステム上からアプリケーションに対して暗号化用の鍵データを供給した。

※鍵交換:複数の暗号アルゴリズムを用いて複数の鍵を装置間で共有する技術

鍵交換機能には、量子コンピューターが苦手とすると考えられている問題を基に設計された暗号アルゴリズムである「耐量子計算機暗号(以下、PQC)」を複数利用した。

複数のPQCを利用することで、将来的にいずれかのPQCの解読方法が発見された場合も、暗号方式を入れ替えることでセキュリティの安全性を担保することができる。

さらに、複数のPQCで生成された共通鍵を合成することも可能であり、将来的には、量子力学の原理を利用して信頼された2者に対して暗号鍵を供給する方式の1つである「量子鍵配送(以下、QKD)」の利用も想定しているとのことだ。

また、NTT Com特許技術を活用し、鍵供給の際にも解読されない供給を実現した。

具体的には、鍵交換機能で生成した共通鍵のデータを、暗号化通信を行う際に、事前に送信者・受信者間で鍵を共有する方式である「Pre-Shared Key(以下、PSK)」によってセキュアな状態にすることで、安全にアプリケーションに共通鍵を供給する。

この共通鍵をPSKによって暗号化する部分に、NTT Comの特許技術を活用しているとのことだ。なおPSKは、NICTが2010年から東京圏に構築・運用しているQKDネットワークのテストベッドである「東京QKDネットワーク」から取得しているとのことだ。

そして、これらの暗号技術を組み込んだWeb会議システムを構築することで、量子コンピュータにも解読出来ない通信を実証した。

実証に活用したアプリケーションは、NTT Comが提供するビデオ・音声通話などの開発ツール「SkyWay」を用い、1対1のWeb会議間の通信を、特許技術を活用したセキュアな共通鍵の供給で受け取った共通鍵を用いてPQCで暗号化した。

これにより、スマートフォンを使ったWeb会議においても、ユーザ側での追加設定など不要で動作させることが可能だ。

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実証の概要図

今後は、今回の実証成果をもとに、PQCやQKDといった量子コンピュータにも解読出来ない暗号技術、IOWN技術、析秘などのNTT Comのサービスを組み合わせた、次世代暗号通信技術の商用化を目指すとしている。

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