株式会社⼤林組は、国土交通省発注の新丸山ダム建設工事において、施工計画から、施工、品質管理までを自動化する「統合施工管理システム」を適用し、システムの機能向上と適用範囲の拡大を進めている。
そして2023年12月に、同工事の土工事で、複数建機の自動・自律運転による盛土施工と計測ロボットを使った品質管理を行う実証施工に成功し、生産性向上を確認したと発表した。
「統合施工管理システム」は、施工計画を自動作成する建設マネジメントシステム(以下、CMS)と、盛土の品質管理を自動化する「AtlasX(アトラスエックス)」、建機フリートマネジメントシステム(以下、建機FMS)、品質管理のデータ共有を行う現場ダッシュボードから構成されている。
今回の実証では、システム間の連携性の検証と、連携による各システム機能の生産性向上効果を確認した。
システム間の連携性の検証では、CMSで自動作成した施工計画と座標情報を、建機FMSに連携させて建機への作業指示に活用し、自動・自律運転を行った。

施工後は、建機FMSで取得した施工完了した箇所の出来形、品質管理の情報をCMSに連携させることが可能で、施工結果の可視化や翌日の施工計画への反映が容易になった。
また、「AtlasX」で自動計測した盛土の品質管理データとともに、CMSで帳票作成した施工結果を、クラウド上の現場ダッシュボードで共有することで、関係者が遠隔でもリアルタイムに確認できた。

一方、連携による生産性向上効果の検証では、盛土する土砂を積み込むバックホウ2台、その土砂を運搬するダンプトラック6台、運ばれた土砂を敷きならすブルドーザ1台、土砂を締め固める振動ローラ1台の計10台による作業を行った。
一連の作業は現場内にある統合監視室において施工管理者1人が管理し、バックホウ、ダンプトラック、ブルドーザ、振動ローラ各1台の計4台の運転を無人化した。また、その他の有人運転の建機も、建機FMSにより自動で作業指示や完了報告を行うことで、施工の自動化を実現した。

この実証施工での盛土の施工量は1日当たり285㎥を達成し、土木工事積算基準における同種の建機を使用した場合の日当り標準施工量260㎥を上回り、生産性向上が確認できた。
施工計画や品質管理においては、施工管理者1名が20分程度の作業時間で、施工計画の自動作成ができ、帳票作成の自動化により、施工管理者の労働時間を1日当たり約13%削減した。
また、「AtlasX」による自動計測により、品質管理データの作成にかかる人員を1人削減し、計測や施工結果を現場ダッシュボードで共有することで、工事関係者の現場・事務所間の移動回数を削減した。
今回の実証施工の結果から、盛土量50万㎥の施工で施工管理者の施工計画業務を試算したところ、約88%削減できることが確認された。
また、無人運転の建機・車両台数分のオペレータの省人化が可能となるため、統合施工管理システムが汎用化すれば、大規模土工に適用することにより、生産性向上効果がより大きくなることが確認できた。
今後、大林組と国土交通省は、骨材製造からコンクリート打設までの一連の工程を自動・自律化する「自律型コンクリート打設システム」を共同開発し、導入する計画だ。
なお、同システムは、「統合施工管理システム」の機能向上と現場環境に適合させた改良を行い、コンクリート打設を自動化することで、ダム堤体工事の自動化施工を実現することを目指しているとのことだ。
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