西日本電信電話株式会社(以下、NTT西日本)と株式会社竹中工務店は、日本電信電話株式会社(以下、NTT)が開発した無線電波伝搬シミュレーション技術「Cradio(クレイディオ)」と、3次元の建物モデル(BIMデータ)を活用した、建物完成後の無線環境を正確かつ効率的に推定する共同トライアルを実施し、成功したと発表した。
「Cradio」によって無線環境をシミュレーションする場合、これまでは建物完成後に現地で建物の3次元形状を計測するのに膨大な時間がかかり、実際の現場では導入が困難であった。
今回、BIMデータを利用することで現地での計測作業を省略でき、室内の無線環境をより簡易に正確に推定することが可能となった。
このトライアルでは、NTTが開発した無線電波伝搬シミュレーション技術「Cradio」とBIMデータを活用し、建物完成後の無線環境を正確かつ効率的に推定することができるかを評価した。
具体的には、事前に作成されたBIMデータを、「Cradio」へ入力可能なファイル形式「Shapeファイル(SHP)」に変換し入力することで、無線環境のシミュレーションを行う。その結果を、スマートビルのための分析基盤「BSAP」に取り込み、ビューワによる可視化を行う。
また、無線LAN用アンテナなどの無線基地局設置位置の設計/確認時間、コストに関する、一般的な従来方式との比較検討や、BSAPの専用ビューワを用いた、「Cradio」のシミュレーション結果(電波強度)の可視化の確認、建設業界における電波伝搬シミュレーションの有用性評価も実施された。

トライアルの結果、BIMデータを用いて適切に無線電波伝搬シミュレーションが可能であることが確認され、無線基地局設置位置の設計/確認時間の短縮、コスト削減効果が確認された。
シミュレーションによる設計時間と従来方式での設計/確認時間の比較では、30%の削減が確認され、設置位置の設計と従来方式での設計による設備数の比較では、設備削減数が50%となった。
また、「Cradio」により、電波伝搬エリアの各地点における受信電力推定値を実際の建物設計情報上にプロットすることで、設計段階における無線環境の可視化(ヒートマップ)が可能であることがわかった。
これにより、建設プロジェクトの設計段階で、建物完成後の無線環境を高精度に検証することができるようになった。
今後は、このトライアル結果をもとに、2024年度にはより大きな建物での活用検証を行い、2025年度には実際の建物への導入のためのソリューションの確立を目指すとしている。
無料メルマガ会員に登録しませんか?

IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。